アイシンが初の4強入り、ENEOSは連続ベスト4が途絶える[皇后杯ファイナルラウンド]
ベテラン勢のけん引で
アイシンが初の準決勝進出
第91回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド2日目、準々決勝の2試合が、12月12日 に国立代々木競技場第二体育館において行われた。
12日の第1試合はシャンソン化粧品とアイシンが対戦。シャンソンはWリーグ前半戦で7勝9敗の4位、アイシンは5勝11敗の7位と、リーグ成績ではシャンソンが上をいくが、シーズン中の直接対決は1勝1敗の五分となっている。アイシンは今シーズン、実力、実績のあるベテラン#1渡嘉敷来夢、#2岡本彩也花の2人がENEOSから移籍加入するなど大きな補強を行い、シーズンを戦いながらチームプレーの完成度を高めている段階。リーグ前半戦の終盤からは昨シーズン復帰したレジェンド司令塔の#12吉田亜沙美がスターターに名を連ねるラインナップも試しており、この準々決勝でも、ベテラン勢3人をゲームの出だしから起用した。
37歳の吉田は今夏日本代表として、パリ・オリンピックに出場。チームへの合流が遅れたこともあり、コンディションを整えながら、プレータイムを制限しながらの出場が続いている。それだも「状況が良くなれば、選手である以上スターターで出たいという思いはあるでしょうし、何より、渡嘉敷にいいところでパスが入らないチーム状況でしたから、それを打開したいとスターターでの起用を決めました」と梅嵜英毅HCはその背景を語る。
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シャンソンの大黒柱#4イゾチェ・ウチェ
その起用法がこの試合で功を奏し、思惑どおりに序盤に試合の主導権握ることに成功し、1Qを20-13とすると、2Qもアイシンペースで試合は進む。シャンソンの大黒柱#4イゾチェ・ウチェが早々に2ファウルしベンチにいる時間が長くなったことも影響し、渡嘉敷が前半だけで19得点とコートを支配。アイシンが2ケタの点差をキープしながら試合は進んだ。反撃のチャンスをつかみたいシャンソンは前半終了間際に#6白崎みなみ、#14吉田麻衣が3Pシュートを決めるなどし、30-39と盛り返して後半に望みをつなげた。
シャンソンはいい流れを継続し、吉田の連続得点、さらには3Pシュートのファウルをもらうと、それをきっちりと3本沈めて一気にワンゴール差まで迫る。その勢いにウチェも続き、インサイドで加点しついに同点にとらえる。しかし、ここで踏ん張ったのがアイシンのベテラン勢。吉田、岡本がルーズボールの奪い合いを制すると、渡嘉敷がバスケットボールカウントを奪う。さらに岡本もドライブで続き、再びリードを奪い返した。
53-45とアイシンがリードして迎えた4Qだったが、アイシンは5分近く得点がなく、シャンソンがジリジリと詰め寄りワンゴール差とする。ここでつないだのがやはり渡嘉敷。ゴール下を攻め立てフリースローを得て主導権を渡さない。その後もお互い意地のディフェンスでロースコアのまま試合は流れ、リードを守り抜いたアイシンが60-56で逃げ切りを果たした。
4Qは7得点にとどまったが「ベテラン勢は疲れてきていましたし、自分が3人を酷使してしまいましたから。それでもディフェンスでボールを追おう、ボールを取ろうとチームに声を掛け続けてくれたので」と梅嵜HCは苦笑いで振り返る。アイシンは初の皇后杯ベスト4。「彼女たちも新しいチームにきて、新たなベスト4という歴史を作り上げてくれました」と吉田、渡嘉敷、岡本といった一時代を築いてきた選手たちの新たな挑戦をたたえた。
アイシン#2岡本彩也花
この試合両チーム最長の37分53秒コートに立ち、やはり最多の30得点を記録した渡嘉敷は「自分にディフェンスが寄ってくるので、パス、パスとアシストが増えていたのですが、それではダメだなと。やはり点を取る、取る…。そうすることで寄ってくるからパスを出すようにしないとチームは勢いづかないですから。外からも狙い、それを決めることでドライブもできるようになります。梅嵜さんは『空いたら3Pシュートも打て、ジャンプシュートも打っていい』と言ってくれているので」と、ENEOS時代よりも役割が増えたと言いながら、それが楽しいと話す。
チーム初のベスト4入りを果たしたが、それで終わりではない。「次もしっかりと勝ってファイナルに行きたいですね。そうすることで、チームも若い選手たちも自信につながる部分があると思います」とチームを更なる高みに導こうとしている。
30得点と大活躍だった#1渡嘉敷来夢
半世紀近く続いたENEOSの
ベスト4進出記録が途絶える
この日のもう1試合、ENEOSとトヨタ自動車の準々決勝もレギュラーシーズンの結果を覆す展開となった。今シーズンの対戦は4勝0敗とENEOSが圧倒しており、皇后杯ファイナルラウンド直前の対戦でもENEOSが連勝を遂げていた。
「悔しかったですし、自分たちのディフェンスが崩れてしまし、ENEOSさんに好き勝手にやられてしまっていました。それだけに(Wリーグの)試合を終え、期間は短かったですが、全員が修正できと思います」と司令塔としてチームをけん引した#15安間志織が語るように、出だしからエナジーあふれるディフェンスで流れをつかんだのはトヨタ自動車だった。
トヨタ自動車はチームが大きく若返り、スターターにルーキー2人を起用する布陣。飛び抜けたサイズはないが、その分スピードとオールコートで激しいディフェンスで勝機を探る。Wリーグ序盤は敗戦が続き苦しんだが、その後6連勝も記録するなど、徐々にチームが形になってきた。1Qを19-12とリードすると、その後も勢いをとどめず、終始アップテンポでアグレッシブなプレーを続け、リードを保ち続けた。ENEOSも#3長岡萌映子の3Pシュート、速攻などで追い付こうとするたびに、トヨタ自動車はディフェンスから仕掛けて相手のミスを誘い、3Pシュート攻勢で再び点差を開き、終始ペースを握っていった。
ENEOS#3長岡萌映子
後半に入ってもENEOSは追い付けそうで追い付けない。トヨタ自動車はENEOSに傾きかけた流れを押し戻す要所でのシュートをしっかりと決め、一方のENEOSは決め切れなかった。結局、最後まで走り切ったトヨタ自動車が73-62で、今シーズンENEOSからの初勝利を一発勝負の皇后杯で挙げてベスト4に進出した。
敗れたENEOSのキャプテン#32宮崎早織は「レギュラーシーズンで4回勝っているにもかかわらず、この大事な試合で、気持ちで負けてしまうというのは、経験値とかは関係ないです。ただ、リーグのシーズンはまだまだ続くので、この悔しい経験を糧に、もっともっといいチームにしていきたい」とリベンジを誓う。ENEOSは第43回大会(1977年1月開催)から47大会続いていた皇后杯ベスト4進出が途切れた。
11日のファイナルラウンド1日目に富士通 レッドウェーブがトヨタ紡織 サンシャインラビッツに、デンソー アイリスが東京羽田ヴィッキーズを破り準決勝進出を決めており、12日の結果をもってベスト4が出そろった。皇后杯準決勝は12月14日(土)に同会場にて開催される。
●皇后杯ファイナルラウンド 準決勝
13:00〜/富士通 レッドウェーブ vs. デンソー アイリス15:00〜/アイシン ウィングスvs.トヨタ自動車 アンテロープス
第91回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会 ファイナルラウンド
大会方式:トーナメント戦によるノックアウト方式
競技規則:大会各ラウンドとも開催時における最新のバスケットボール競技規則で実施する。但し、2次ラウンド以降は「2025 バスケットボール競技規則 主な変更点」を適用する。※現状においては「2024バスケットボール競技規則 (Official Basketball Rules 2022)」 を最新とし、プレーヤーが競技中に身につけるものは、原則として日本バスケットボール協会の「競技規則 第4条4-4その他の身につけるもの」に準ずる。但し、コンプレッションウエアの着用については、1次ラウンドから認める。
使用球:モルテンB6G5000
出場チーム:女子総数:61チーム
大会日程:2024年12月11日(水)~15日(日) ※12月13日(金)はレストデーのため試合予定なし
会場:国立代々木競技場 第二体育館 (東京都渋谷区)
大会オフィシャルサイト:https://zennihon2024-25.japanbasketball.jp/
写真:石塚康隆(月刊バスケットボール)、文:飯田康二(月刊バスケットボール)