インカレ男子展望「日体大の3冠なるか!? 白鷗大や東海大らが雪辱狙う」
高いオフェンス力を武器に2冠目を奪取した日体大
大学界の頂点を競う全日本大学選手権大会(インカレ)。いよいよ本日からトーナメントがスタートした。男子は過去3年連続、東海大と白鷗大が決勝に上り詰めたが、今年は“3冠”を狙う日体大や、米須玲音が本格復帰した日本大なども王座奪還を狙う。果たして今年のチャンピオンはどのチームになるか?※開幕前の情報で書いたものです
男子のインカレを占う上で、毎年最も注目されるのは関東ブロック。というのも、過去75回のインカレの歴史を振り返っても、関東勢以外が優勝したことは一度もないからだ。関東リーグはインカレよりも歴史が長く、今年で記念すべき100回目の開催。そんな節目を迎えたこの秋も、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。
2か月に及ぶリーグ戦を19勝3敗で戦い抜き、インカレの第1シードを手にしたのが日体大だ。今年は2年前の関東新人を21年ぶりに制した代が、4年生になった勝負の年。1巡目で東海大に4点差で敗れ、2巡目には東海大、白鷗大にそれぞれ2点差で競り負ける悔しい週もあったが、それ以外の試合では着実に白星を重ねた。日体大のOBでもある藤田将弘監督は「長い時間がかかりました…」と感無量の様子。前回の優勝は大野篤史氏(三遠ヘッドコーチ)が最優秀選手だった1999年大会で、実に25年ぶりの偉業達成となった。
チームを支えた㉓ジャンピエールは最優秀選手賞を受賞
今年のチーム最大の武器は、高いオフェンス力だ。藤田監督は常々、「80点以上取って試合を作るのがコンセプト」と語るが、実際、リーグ戦では1部トップの平均86.4得点。2位の日本大ですら平均76.3得点なので、驚くべき数字だ。ガード陣が速い展開を作り、中からは#23ムトンボ・ジャンピエールや#1コネ・ボウゴウジィ・ディット・ハメードが、外からは#4小澤飛悠や#7西部秀馬らが得点する。日本人選手は全員3Pシュートを打てるため、相手にとって止めどころがなく厄介だろう。
また、今年は大きなケガ人を出さなかったことも勝因の一つ。それには過去の学びがあり、藤田監督は「去年は春のトーナメントで優勝しても、リーグ戦でケガ人を出してインカレでも結果が出なかった。今年はそうならないよう、タイムシェアを意識しました。個人スタッツの出場時間ランキングで、今まではうちの選手が上位を占める年が多かったですが、今年はなるべく選手が入らないよう気を付けました」と明かす。特に貢献度が大きかったのは、藤田監督が「感謝の3人」と評する#3土家拓大、#9大森尊之、#10早田流星で、「彼らがいるからスタートの5人に思い切りプレーさせられたし、安心して交代できました」。
春のトーナメント、秋のリーグ戦を制し、残すは冬のインカレ。藤田監督は「もちろん3冠を目指す」としつつも、「自分たちは王者ではない。弱さを認め、仲間と助け合ったからリーグ戦は優勝できました。インカレでも同じように挑戦者として戦います」と気を引き締めていた。
冬の戦い方を熟知した東海大や白鷗大も必見
3冠が懸かる日体大に次いで、見逃せないのが白鷗大と東海大だ。両チームは過去3年連続、インカレの決勝で戦っており、東海大に関しては過去13年間で決勝進出を逃したのはたった2回。白鷗大も過去5年連続で4強以上をキープしており、冬の戦い方を熟知する2チームといえる。18勝4敗でリーグ準優勝だった白鷗大は、昨年のリーグ戦&インカレ覇者。しかし脇真大(琉球)ら、チームを引っ張った去年の4年生が卒業し、春のトーナメントは神奈川大に敗れてベスト16止まりだった。網野友雄監督もリーグ戦前は「正直、入れ替え戦争いも覚悟していました」と強い危機感を抱いていたという。
的を絞らせない高い総合力を武器に連覇に挑む白鷗大。#20根本(写真上)や#8陳岡流羽が土台となり、下級生の㉒内藤らものびのびプレーする
だが終わってみれば、チームは指揮官が驚くほどの結果を残した。際立ったエースはいないものの、ディフェンスを武器に堅実に白星を重ねるスタイルを確立。その中で大きく成長したのが、敢闘賞に選ばれた4年生の#20根本大や、2年生の#22内藤晴樹。試合を重ねながら自信を付け、勝負どころでも活躍が光った。チームとしても徐々に調子を上げ、1巡目は日体大、専修大、拓殖大に敗れたが、2巡目では日本大に敗れたのみで破竹の8連勝。日体大や東海大にも勝利したことは、インカレに向けて好材料だ。
そうした今年の流れを、「2021年に初優勝したときと似ている」と網野監督。確かにあの年も、トーナメント7位から始まり、リーグ戦3位、インカレ優勝と、シーズンを通して徐々にチームが仕上がった。今年の4年生は、そのときの上昇気流を1年時に経験した代。勢いに乗って再び栄冠を手にできるか、注目したい。
一方、東海大はケガ人も出てリーグ戦の最後に3連敗したものの、それまでは接戦を次々に制して首位争いをし、結局17勝5敗で3位に着けた。
今年も持ち味は伝統の堅いディフェンス。オフェンスでは#3ハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア、#16轟琉維といった速さのあるガード陣が仲間を引っ張る。中でも#16轟は、関東新人優勝で自信を付け、「スタメンのガードとして、学年関係なく責任感を持ってチームを引っ張りたい」と覚悟を決めた様子。また、1年生の#16赤間賢人、#25ムスタファ・ンバアイ、#60佐藤友も、チームを勢い付けるスパイスになっているようだ。
そして4年生の#3ローレンス・ジュニア、#7前野幹太、#18西田陽成の3人は、昨年のインカレ決勝の舞台にスタメンで立ち、3点差で敗れる苦い経験をした。あれから1年、最後の冬に懸ける思いは並々ならぬものがある。さらには、陸川章監督が来年度からはアソシエイトコーチになることを公言しており、今年が監督としてラストイヤー。「最後に陸さんを勝たせたい」(#16轟)という強い願いは、全部員の総意のようだ。
陸川監督はリーグ戦を終え、「接戦で勝てた試合は、“粘り強さ”を出せた試合でした。悔しい試合もありましたが、下級生は我々がやろうとしているバスケットがこのリーグ戦で理解できたでしょうし、インカレに向けてそれを変えることはない。精度を高めることや、今できる課題の克服を、残りの期間でやっていくだけです」と話していた。
ディフェンスを徹底して粘り強く戦い、オフェンスでは東海大#3ローレンス・ジュニア(写真)と#16轟琉維が強気な姿勢で引っ張る
虎視眈々と金星を狙う地方勢も侮れない存在
関東4位の日本大は、アシスト王に輝いた#3米須玲音、#12コンゴロー・デイビッドの“4年生ホットライン”がチームの要。1巡目は東海大に、2巡目は白鷗大に勝利するなど大会に爪痕を残した。インカレでは第4シードで左下の山に入ったが、神奈川大や筑波大、西日本王者の日本経済大などが入る激戦ブロック。下位回戦から気の抜けない戦いとなるものの、勝ち上がればそのまま勢いに乗って準決勝以降に臨めそうだ。#3米須玲音がいる日本大、勢いに乗ることができるか?
春のトーナメントで3位だった大東文化大は、#25山内ジャヘル琉人が「もったいないミスが多くて、勝たなければいけない試合を勝ち切れなかった」と肩を落としたように、関東5位に甘んじた。ただ、個々の能力がかみ合えば大きな力を発揮するポテンシャルを秘めている。インカレでは初戦を突破すれば、準々決勝で東海大とぶつかる可能性大。リーグ戦で2敗した相手にリベンジなるか、大一番となる。
トーナメント準優勝の専修大は、ケガ人が続出して関東6位となった。前回のインカレは4位で、キャプテン#12市場脩斗は「今年は壁を乗り越えて決勝へ、そして優勝できるように頑張りたい」と意気込みを語る。
神奈川大は、抜群のシュート力を誇る#3山本愛哉、オールコートを豪快に駆け抜ける#5保坂晃毅らに加え、1年生#34長谷川比源の加入が大きく、昨年の関東11位から同7位へとジャンプアップ。リーグ戦で得た自信をぶつけ、全力でインカレに臨みたい。
筑波大は関東8位と苦しい結果だったが、2巡目は日体大に2点差の肉薄、東海大から金星を挙げるなど徐々に実力を発揮。今季限りで退任する吉田健司監督とともに、ダークホースとして冬の一発勝負に挑む。
ここからは、関東以外の地域に目を向ける。まず西日本選手権大会&九州リーグを制したのが日本経済大。昨年のインカレで初のベスト16進出を果たし、今年は歴史を塗り替えて、さらなる高みを目指す(詳しくはP62〜の特集参照)。
昨年のインカレで8強入りし、今年も注目なのが東海2位の中京大。インカレは初戦を突破すれば、大東文化大と顔を合わせる。#13中野友都や#12高村駿佑といった経験豊富な4年生を軸に、金星を挙げられるか。その中京大に下して東海1位となった名古屋学院大は、特別指定選手として新潟でプレーした#14永野威旺が攻撃の起点。2年前のインカレでベスト8に入ったが、今年はさらなる上位進出なるか注目が集まる。
関西リーグは、春の関西学生選手権に続き、京都産大が3年ぶりに王座を奪還した。下級生の頃から正司令塔を務める#9宇都宮陸が4年生となり、インカレは集大成を披露する場となる。また、福岡第一高出身の田川博久監督率いる神戸医療未来大が、西日本準優勝の天理大を下して関西リーグ準優勝となり、3年連続3回目のインカレに向けて弾みを付けた。関西得点王#39中村瑞稀がチームを引っ張るだろう。
4年生にとっては学生バスケットを締めくくる最後の大会で、どのチームも負けられない思いを抱えているインカレ。今年もきっと、笑顔あり涙ありの、熱いドラマが繰り広げられるに違いない。
第76回全日本大学バスケットボール選手権大会
期日/2024年11月29日(金)~12月8日(日)、12月14日(土)・15日(日)
会場/国立代々木競技場 第二体育館・エスフォルタアリーナ八王子・横浜武道館・太田市総合体育館
参加チーム/男子42大学 女子40大学
試合球/株式会社モルテン社製 BG5000(男子は12面体7号球・女子は12面体6号球)
インカレ2024特設ページ:https://www.basketball-zine.com/article/detail/115603
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文・写真/中村麻衣子(編集部)