スポルディング×go parkeyのコラボレーションによる江戸川リノベーション・アートコートが新装1周年!
「“PASS FOR THE FUTURE” 江戸川リノベーション・アートコート1周年イベント」レポート
2026年に創立150周年を迎えるスポルディングと、バスケットボールコートのリノベーション活動を通じてスポーツカルチャーの普及やコミュニティーの活性化を目指す団体go parkey(ゴー パーキー)の協業で生まれ変わった江戸川・リノベーション・アートコート(東京都江戸川区松本)で、11月16日(土)に新装1周年を記念して「“PASS FOR THE FUTURE” 江戸川・リノベーション・アートコート1周年イベント」が開催された。当日は早朝から、スポルディングとgo parkeyのスタッフがコートの清掃や傷んだラインの修復を済ませて来場者を歓迎。3x3のプロリーグに所属するプレーヤーたちも参加したイベントでは、子どもたちへのクリニックやスポルディングアカデミーのコーチ陣とのピックアップゲームなどで、コートに歓声がこだました。スポルディングとgo parkeyのコラボレーションによるアートコートは2作目。スポルディングがSDGsの理念として掲げている製品づくりと環境づくりのうち、後者の取り組みが、アートコートへのリノベーションで地域と子どもたちの未来を明るくすることを目指すgo parkeyのミッションに共鳴するという。スポルディングのブランドマネージャーを務める山岡昭吾(敬称略 ※以下同)は、その背景を次のように話す。
スポルディング・ジャパン(株) ブランドマネージャー 山岡昭吾
「1876年にアメリカのシカゴで創業して2026年に150周年を迎えるスポルディングにとって、サスティナビリティは非常に大事なキーワード。go parkeyが既存のバスケットボールコートをアートコートとしてリノベーションすることで、文化的な広がりを生み出そうとしているところは、我々の環境づくりの考えに合致しています」
スポルディングの理念がさす「環境づくり」とは、コート自体というハードの提供に寄与するばかりではない。そこで何が起こり、どんな広がりが生まれるかが重要だ。山岡はさらに語る。
「今日のように子どもたちが大人やコーチと交わる機会があったり、アートに触れて興味を持ってくれたり、プレーする環境を整えることの大事さに気づいてくれたり。プレーするだけではなくて、自分たちの場所として綺麗に保とうという意識や気持ちを持ってくれる子もいるかもしれません。当たり前にプレー環境があることは、どれだけ恵まれていることなのかというのを、幼少期から親しむことでいつか気づける人になっていってほしいなとも思います」
この日早朝から実施した清掃や修繕も、そうした思いからの取り組み。「作ったばかりのコートは当然すごく綺麗ですよね。でも、1年経つとやっぱり汚れてきたりラインが傷んできます。それをちゃんと整備をしていくことに大きな意義を感じます」と語る山岡は、今回だけではなく今後も定期的に、リノベーションを手掛けたアートコートのメンテナンスを継続していく意向も明かしている。
一方のgo parkeyは、前述のミッションに沿って公園や街中にあるバスケットボールコートのリノベーションを手掛けている。これまでに6つのコートを手掛けたとのことで、いずれも公共の施設だという。既存の古いコートにペイントを施して修復し、その場でクリニックを開催したり、ボールの無料ギフティング(プレゼント)を行うなどの取り組みにより、それまで生かし切れていなかったバスケットボールコートをよみがえらせている。
代表を務める海老原 奨はストリートボールの世界で活躍した人物で、バスケットボールに対する情熱も人一倍。また、競技を始めたきっかけがミニバスや部活ではなく公園のゴールで遊んだことだったために、誰もがバスケを楽しめる環境への愛着や活用に向けた意欲も非常に強い。さらには本場アメリカでストリートボールをプレーした経験も豊富。海老原は日本の公園バスケの現状と課題を見据えて動いた。
(一社) go parkey 代表 海老原 奨
「公共の運動施設や公園でリノベーションを行うには自治体の許認可やご協力が必要です。そのために自分たちで直接市役所とか区役所に出向いて、プロジェクトの概要や、なぜこういうことをしたいのか、ニューヨークで朝から晩までバスケをしていた僕の視点から、アートコートと公園のバスケの有意義性を自治体の方に訴えました」
実は、自治体としても地域住民により良い過ごし方を提示するミッションがある。そこで、バスケットボールコートの場合にそれをどうしたら実現できるのかを語っていくうちに、海老原の話に興味を持つ自治体が現れてきたのだという。
アートコートが、子どもたちにとってバスケットボールを安全に楽しくプレーできる場所であるようにという考えは、スポルディングとgo parkeyだけではなく、実際には自治体の意向とも合致しているのだ。海老原は、自らが手掛けたアートコートが「いろんな人々が『自分の居場所』を見つける憩いの場になればいいですね」と優しい視線を子どもたちに向けた。
江戸川・リノベーション・アートコートプロジェクトは、町中のミューラル(壁画)を手掛けるアーティストとして知られるImaone(イマワン)のアイディアで、高架の色に近いブルーを基調とした背景にイエローのラインでモノグラムな顔のデザインを描いている。「青いコート」か「顔のコート」か、あるいはまったく別の呼び方か。いずれにしても、人々に親しまれる場所になるだろう。Imaoneは「ここでいろんなことが起こると思います。バスケだけである必要はありません。甘酸っぱい出来事も経験しながら子どもたちが育っていく場所になればいいですね」と話す。
Imaone(アーティスト)
海老原とImaoneがそれぞれの言葉で語るアートコートの未来像には、その未来を創る存在としての子どもたちへの贈り物というニュアンスが重なる。それは、スポルディングがこの日のイベントで掲げた“PASS FOR THE FUTURE(未来に手渡す)”という言葉にも通じるコンセプトだ。山岡はその言葉が意味する取り組みを続けていく意向を、力を込めて語った。
「例えば使用済みペットボトルを再生して作った繊維から生まれるアパレルも、プレーできる環境づくりもまさしく“PASS FOR THE FUTURE”です。150年間生きてきた我々がこれからの150年を展望し、バスケットボールとともに生きていく。そのために良い物を作っていくのは当然ですが、環境的なサスティナビリティに取り組んでいくことも、我々にとっては必然なんですよね」
この日の子どもたちも、いつか大人になっていく。ある日誰かと思い出のコートでのドラマを語り合い、それが活力の源になるときがあるだろう。
「私の育った町には『顔のコート』があって、父さんと一緒によく遊んだもんだよ」
「初めてダンクしたのはあの高架下さ。黄色い顔1個分くらい飛んだんだぜ」
「環七沿いの『青いコート』は私にとって特別な場所。だって、あそこで好きだった彼に告白されたんだから」
バスケットボールを介してそんなフラッシュバックを未来に届けられることの意義や価値は計り知れない。スポルディングとgo parkeyの江戸川リノベーション・アートコートで、今、この瞬間そんな瞬間が描かれているのだ。
取材・文/柴田健(月刊バスケットボール)、写真/山田勉
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