月刊バスケットボール1月号

実は「○○対決」だったインターハイ決勝戦、東山と美濃加茂の選手たちを支えた“着用率No.1シューズ”とは…?

東山と美濃加茂によるインターハイ男子決勝戦から、早くも3か月が経過した。両者は11月上旬に行われたウインターカップ予選をいずれも府県1位で勝ち抜き、本戦への出場権を獲得。11月末から12月にかけて、本戦に向けた最終調整に入る。


ただ、その前に両者の直接対決が、“バスケの聖地”国立競技場代々木第二体育館で開催されることをご存知だろうか? 1114日(金)、現在開催中の「U18日清食品トップリーグ2024」で注目の一戦が実現するのだ。

1110日終了時点で、東山は2勝3敗の7位、美濃加茂は3勝2敗の4位に着けている。インターハイ、ウインターカップに並ぶ高校バスケの国内3大タイトルに数えられる同大会で、夏の決勝の再戦が見られるのだから、その注目度は高い。しかも、開催当日は18時開始で1試合のみが組まれた特別な日だ。

インターハイを振り返ると、夏冬合わせて5度目の決勝進出となった東山と、創部初の決勝進出となった美濃加茂。両者の立場は対極ながらも、互いに初の日本一を目指すという部分では共通していた。



試合は序盤から常に東山が先行する展開で進み、3Qを終えて21点の大差(63-42)が付いていた。東山としてはこのままコントロールゲームに入って、盤石の勝利を目指す展開だったが、しかし──ここから美濃加茂が粘りを見せる。激しいボールマンプレッシャーで東山のミスを引き出すと #4 藤田大輝、#5 後藤宙、#6 エブナ・フェイバーらが中心となって猛追。一時11点差まで詰め寄ってみせた。最後は試合巧者の東山が突き放して78-62で勝利したものの、最終スコア以上に両者の実力は拮抗しているように感じられた。


 

試合後、悲願の日本一に感極まる大澤徹也コーチに歩み寄り、笑顔で握手を求めたのが美濃加茂の林龍幸コーチ。共に高校バスケの頂点を争ったライバルも、試合が終われば戦友であることを象徴する瞬間だった。

“戦友”という意味では、東山と美濃加茂にはある共通点がある。共にサプライヤーがミズノである点だ。競技とは違う側面から見れば、今年のインターハイ男子決勝の対戦カードは“ミズノ対決”だったわけだ。

「ミズノとの出会いは2012年でした。なかなか洛南に勝てず、全国に出られない中で何かを変えたいと思っていました。そんなときにミズノが一番に声をかけてくれたんです。そこから徐々に風向きが変わって、2015年には2年生だった岡田侑大(京都ハンナリーズ)を中心に、僕が東山の指導者になって初めて洛南を倒したんです」

東山・大澤コーチはそう回想する。

一方、美濃加茂の林コーチもミズノとの縁は深い。岐阜農林高時代の同級生がミズノの社員だったこともあり、10年以上前から毎年「MIZUNO BASKETBALL CAMP」を岐阜県で開催してきたのだ。同キャンプの狙いは、全国の強豪校が集結して全国大会さながらの試合を繰り広げ、それぞれに多くの収穫を得ること。仙台大明成高を指揮していた佐藤久夫コーチも生前は毎年出場しており、林コーチは「久夫先生をはじめ、ほかの学校の先輩方から鍛えてもらって今があります」と語る。

そして、東山と美濃加茂、両者にとって“勝負の一戦”となったインターハイ決勝戦は、ミズノにとっても社運を懸けた勝負だった。ひのき舞台に立った多くの選手たちの足元を支えたのが、同社から実に7年ぶりの登場となった新作バスケットボールシューズ「WAVE TRANSISTA(ウエーブトランジスタ)」だったからだ。



このシューズを見て、まず特徴的なのはデザイン。従来のミズノのシューズのイメージを覆すようなシンプルさで、ブランドロゴをかかとのワンポイントにとどめ、洗練されたスタイリッシュなテイストに。カラーも学生に人気のホワイトをベースにした2色を展開した。機能面でも、東山と美濃加茂の選手に象徴されるような、個の打開力に優れたプレーヤーの1 on 1スキルを最大化すべく開発されている。

特に優れているかかとのホールディングは、ガードからビッグマンまで、機動力のある選手が多い現代バスケにあって大いに役立つものだろう。具体的には横の動きやストップといった、バスケットボールに必要な動作に強く、よりスムーズでダイナミックな1 on 1を実現。美濃加茂のガード陣が織りなす息の合った速攻や、東山のウィング陣が見せたキレのあるバックドア──これらのプレーはウェーブトランジスタとの相性も抜群だったように見受けられた。

それを裏付けるように、東山は大会ロスター12人中5人、美濃加茂は同8人がウエーブトランジスタを着用しており、全体で24人中13人と着用者は過半数超え。つまり【決勝戦での着用率No.1シューズ】となったわけだ。シューズについては両校ともに選手個人が履きやすいブランド、モデルを選んでいる。その中で着用率No.1になったのだから、選手たちからの高い評価は言うまでもないだろう。



東山のある主力選手は、10月末の取材でウエーブトランジスタの着用感について、こうコメントしている。

「今まで履いたミズノのシューズの中で一番です。最初に足をとおしたときから思っていたのですが、かかとにすごくフィット感があります。ほかのバッシュはそこがズレてしまう感覚があったのですが、このシューズは足にピタッとはまっている安心感があります。僕は足首の捻挫などが多かったので、そういう面でも助かります」

高校入学以降はミズノユーザー、中学までは他ブランドのシューズを着用していたという彼の言葉には、説得力がある。

もっとも、全てが完璧ではない。美濃加茂の選手たちからは、実際に数か月履いてみての感触や、さらなる機能改善のリクエストなども林コーチを通じてフィードバックされている。トップ選手の声を元に今後、さらなるブラッシュアップが期待される。

現時点では、各種スポーツ用品店での売れ行きも上々。そこにはインターハイの影響もあるだろうし、シューズそのものが持つ機能性やデザイン性もあるだろう。また、物価高が進み、シューズを含むバスケットボール製品全体が値上がりするなか、税込15400円という価格設定も、学生たちにとって比較的手の届きやすいものになっているに違いない。

話は冒頭、「U18日清食品トップリーグ2024」での再戦に戻るが、この対戦は両チームが夏から3か月の間にどれだけ成長したかを測る貴重な機会となる。対戦を心待ちにしている選手も多いようで、東山の #11 佐藤凪は「個人的にインターハイの美濃加茂戦ではスタッツ自体は伸びたのですが、要所であまり活躍できなかったと感じています。トップリーグでまた戦えるチャンスがあるので、自分がチームを引っ張る立場としてチャレンジしたいと思っています」と話し、美濃加茂の#5 後藤宙も「インターハイはケガで万全な状態ではなく、瀬川琉久君や佐藤凪君など、オフェンシブな選手を守り切れなかったことが悔しかったです。次はしっかり止められるようにしたい」と意気込んでいる。

戦いの結末はどうなるのか──選手たちの足元にも注目しながら、その行方を追っていきたい。



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