月刊バスケットボール1月号

大学

2024.10.26

大石隼(拓殖大4年)が“能代工高最後のエースガード”の誇りを見せる時

©月刊バスケットボール

全国制覇58回を誇る能代工高が、能代西高との統合により能代科学技術高として生まれ変わってから早4年。能代工高の名の下に卒業した最後の代で大学バスケットボール界に進んだ若者たちは、今、最上級生となっている。4年前、能代工高のエースガードの役割を担い、卒業後拓殖大に進んだ大石隼もその一人だ。


名門復活を目指した当時の能代工高では、同校出身の名ガード、小野秀二監督(現バンビシャス奈良)に学んだ。拓殖大では、現役時代に万能タイプのフォワードとして鳴らした池内泰明監督の下、キャプテンを務めている。今年度の拓殖大はスプリングトーナメントで2年ぶりにベスト8入りを果たしたものの、オータムリーグでは1020日までの日程を終えて414敗(勝率.222)で12チーム中10位。日本大相手に前半7点リードしながら、第3Q半ばにペースを失い60-79の逆転負けを喫した同日、試合後の大石に話を聞いた。



「一発勝負のインカレでは優勝を目指します」

——今日は悔しい試合でしたね。

チームとして前半はアグレッシブに自分たちのディフェンスができて、3Pショットも確率よく決まってすごくいい試合展開だったんですけど、後半の入りで相手の留学生に活躍を許したり、相手の3Pシュートが当たってきて流れを持っていかれてしまいました。

——池内監督は終盤に足が止まってしまう、スタミナが足りないということをおっしゃっていました。

そうですね。リーグ戦を積み重ねてくる中で疲労も出てきていると思うし、強いチームと自分たちの差はフィジカル的な部分にもあるので、そこはやっぱり足りていません。上位チームと自分たちに差があるなと思います。

——ご自分のパフォーマンスについてどんなふうに見ていますか?

試合の入りで自分がシュートを打つチャンスがあったんですけど、そこで決めきれず流れをつかめなかったのがまず一つの反省です。試合途中でも自分のターンオーバーからチームとしてのミスが続いてしまって、そこから崩れてしまいました。今日はガードとしての責任が果たせなかったなと思います。

——ハーフコート・オフェンスで、大石選手がスペーサーとしてどちらかのコーナーに立っている状態で、逆サイドで2メン・プレーという形が何度かありましたが、池内監督はその状況でもう一度作り直してもいいんじゃないかといったこともおっしゃっていましたよ。

そうですね、ウチはいいシューターがそろっているので、やっぱり自分がコントロールする人間としてもっとボールをもらいに行って、打たせる仕事をするべきだったかなと思います。

——今日は逆に、彼らにまかせるような考えだったのでしょうか?

石橋永遠(4年)をはじめ得点力のある選手がいるので、そこにちょっと頼り切ってしまった部分があったかなと思います。



——ここしばらくの流れでは、連敗がある一方で上位の白鷗大を倒した試合もありました。勝ちきれなかったり、得点を伸ばしきれない状況をどう思われていましたか?

白鷗大に勝ったときは、自分たちの連敗をあまり気にせず、ただ目の前の1試合に集中して戦えた結果でした。あの1勝は大きな勝利だったかなと思います。ただ、“2巡目(オータムリーグは12チームの2回戦総当たり)”が始まってから順位が近いチームに負けてしまったことはもったいなかったです。今も連敗中ですけど、上位チームにいい戦いはできているので、後半の粘りや体力、気持ちが出せれば結果もついてくるんだろうなと思っています。

——リーグ戦はあと4試合。チームとしてどんな目標を持ってやっていこうと思っていますか?

思うような結果が出ていないので、まず入れ替え戦を回避できるように残り4試合本当に必死でやるということ。その後のインカレは一発勝負の世界なので、そこではリーグ戦で負けたチームにリベンジできるように、優勝を目指して臨みます! リーグ戦の残り4試合はそこにつながる4試合にしたいです。

「周りを生かしながら自分でも決められるように…」

大石は、敗戦後の悔しさを胸にしまって柔和な笑顔で対応してくれていたが、やはりどこかに結果を出せないもどかしさを宿していた。落ち着いた丁寧な返答の端々から、逆に「勝ちたい」「勝たせたい」という思いが伝わってくる。


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——能代工高時代には、大石選手と同じポイントガードだった小野秀二監督(現バンビシャス奈良HC)に鍛えられましたね。とても厳しい指導だったと聞いていますが、当時学んだことはどんなところに生きていますか?

高校時代は本当にいっぱい怒られました。メンタルが強くなったと思いますし、ポイントガードとしてのあり方、周りを生かすことや1つのプレーの大切さ...。些細な1つのミスですぐ交代させられたこともあったほど、本当にミス1つ許されないようなプレースタイルを求められていました。チームを作るのも壊すのもガードの責任。ガードはチームの要なんだというのを本当に学びました。

よく言われていたことの一つは、「おいしいところを持っていけるように」ということでした。周りを生かしつつ、最後は自分でも決められるようにという考え方で、とても心に残っています。そこは本当に今でも自分の中に生きているなと思います。

——今日はいいところで3Pショットを決めていた(第2Q終盤に37-30とする3Pシュート、第3Q45-38と再びリードを最大に広げた3Pシュートなど)だけに、そんな意味では惜しかったですね。第3Qにターンオーバーをして交代というところから逆転されてしまいましたから。

はい…、本当にそこは自分の責任だと感じています。

——拓殖大はスピードがあってディフェンスが土台なので、大石選手は力を生かしやすいのではないですか?

ディフェンスは特に評価されてるポイントの一つじゃないかと思っています。そこは能代工高で培ったもの。(オフェンスでは)高校時代も周りを生かすプレーが多かったですけど、拓殖大もシュートが得意なチームですし、自分自身も中学校時代からシュートには少し自信があったので、その意味でもフィットしているなと感じています。




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フィジカル面の差を打ち消すプレーメイク上の工夫をできるか

オータムリーグの序盤、池内監督は大石のディフェンスを高く評価し、オフェンスに関しても「ガードとしてうまくボールをさばいてくれるとうれしい。その中にシュートがあればいい」と期待を語っていた。大石の個人成績(1020日時点)は、得点が158(平均8.8=リーグ全体29位)、3P成功率35.1%77本中27本成功、成功数は同15位タイ、アテンプト数は18位)、アシスト43本(平均2.4=11位)、スティール14本(平均0.8=27位タイ)と主要項目で上位30位以内に名を連ねている。ターンオーバーが31個(平均1.7)とやや多いのは気になるが、ハイレベルなリーグ全体の中で、相対的にアグレッシブさと堅実さを発揮できていると評価してよいのではないだろうか。ただしそれがチームとしての結果に結びついていない。

4つのクォーターで得点を20以上、失点を10点台にして全体で80得点以上の展開で勝とうというゲームプランの拓殖大だが、ここまでの平均得点は68.6で、80得点以上に届いたのは3試合のみ。「3Pシュートが入らないときにペイントでの得点が伸ばせない」と池内監督。そこにはフィジカル面の差もあるに違いないが、プレーメイクにも工夫の余地がありそうだ。取材当日の日本大との一戦に関しては、池内監督の大石評も「チームコントロールができていなかった」と厳しかった。「いったんボールを手離して(ウイークサイドのコーナーに)切れるのはいい。でももう一度ボールを受けに行って、誰にシュートさせるかを作る動きがあっていい」

特に、平均失点が78.4にとどめられていて、オフェンスで80得点以上を奪えれば勝利に届くレベルだけに、プレーメイクの工夫は残る日程で成功のカギを握るファクターかもしれない。

今年のオータムリーグで残された4試合は大東文化大(10/26)、明治大(10/27)、筑波大(11/2)、白鷗大(11/3)が相手。大東文化大とは“1巡目”で71-73の惜敗だった。明治大、筑波大との初戦はどちらも2桁点差で敗れたが、勝敗成績も順位も近い相手だ。最後の白鷗大には、大石との会話にも出てきた通り初戦で勝利している。全てに勝って814敗にできれば、勝率と順位で直近4年間最高の成績の可能性もある。勢いをつけてインカレに臨むためにも、まずそうした結果を出せるかどうか。

周りを生かし、自分でも決められる決定力を持て――キャプテンとしてのリーダーシップに加え、能代工高時代の学びをいかんなく発揮する大石の姿にも期待しながら、拓殖大の戦いぶりを見守りたい。




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取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB)

タグ: 拓殖大学 能代科学技術高校能代工業高校

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