2024-25熊本ヴォルターズが連敗スタートから「ぶちのヴォる」ためのカギ
開幕節の2試合で平均12.5得点、フィールドゴール成功率71.4%、3.5リバウンドと活躍した野口侑真(写真/©B.LEAGUE)
2024-25シーズンにB1昇格への決意を込めて「ぶちのヴォれ!」のスローガンを掲げた熊本ヴォルターズ。10月5日、6日にアルティーリ千葉をホームの熊本県立総合体育館に迎えて開催した開幕節は、残念ながら連敗スタートとなった。GAME1が78-96、GAME2では85-107と、2試合ともA千葉の怒涛のオフェンスに圧倒されるような結果だった。
熊本はこの2試合で、身長203cmのセンターフォワードで副キャプテンを務めるジャメール・マクリーンが欠場。悪いことに、マクリーンとともにフロントラインの一翼を担う新戦力ビッグマンのミッチェル・ライトフットが2試合連続で右足首を痛めるアクシデントに見舞われてしまった。最初はGAME1の第1Q半ば、ブロックショットに飛び上がった後の着地で右足首をねんざ。ライトフットはそれでもプレーを継続し、翌日も出場したが、GAME2の後半にも同じ部位を痛め、以後コートに戻ることはなかった。
昨シーズンを全休したガードフォワードの磯野寛晃がGAME1で復帰するうれしいニュースもあった熊本だが、ロスターの最長身であるマクリーンとライトフットがコンディションに問題を抱える状況は痛い。10月12日(土)、13日(日)にライジングゼファー福岡とアウェイで戦う“九州ダービー”に両者が出場するかどうかは11日現在でも明らかではない。もしできない場合、チーム最長身は196cmでガードフォワードを務めるタイラー・ラム。サイズ不足は明らかで、それを克服するにはチームを挙げての特大の奮起が必要だろう。
克服すべき明確な課題
ただ、熊本にとってこのピンチはポジティブに捉えることもできる。この先の結果がどうあれ、A千葉との2試合から今後の課題が明確だからだ。それらをいくつか拾ってみよう。
☆リバウンドとセカンドチャンスの攻防
リバウンドに関して、熊本は開幕節のGAME1で30-56、GAME2で30-47と大幅に上回られ、セカンドチャンスでの得点でもGAME1が13-28、GAME2が6-18と圧倒された。A千葉のリバウンドにおけるアドバンテージの大きさは、GAME1でA千葉がオフェンス・リバウンド30本に対し熊本のディフェンス・リバウンドが17だったことからも感じられる。A千葉はミスショットのうち約64%(47回中30回という計算)でセカンドチャンスのポゼッションを獲得したことになる。
これは、ビッグマン2人を欠く状態を前提とすると、ある程度覚悟しなければならない項目だろう。しかしGAME2ではA千葉のリバウンド総数を抑え、A千葉のオフェンス・リバウンド17に対し熊本のディフェンス・リバウンドが18。A千葉がミスショットをセカンドチャンスのポゼッションにつなげた比率も49%まで下がっていた。リバウンドで勝てないまでも、相手に前日よりも頑張らせたと捉えることもできるのではないだろうか。
デレク・パードン(左)、ミッチェル・ライトフット(中央)と澤邉圭太(右)のリバウンド・ポジション争い(写真/©B.LEAGUE)
☆3Pシューティング
熊本の3P成功率はGAME1で43.5%(23本中10本成功)、GAME2が32.0%(25本中8本成功)と、比較的大きく変動した。A千葉もGAME1が29.6%(27本中8本成功)、GAME2が44.4%(27本中12本成功)と、熊本と入れ替わりに数字が上下したが、熊本に関して言えば、初戦の高確率を維持していくことが勝利への重要なカギに違いない。特に、山本翔太らペリメーターのプレーヤーたちのカッティング・レイアップやドライブが機能して、ペイントでの得点ではGAME1で42-56、GAME2で48-46と一定以上の威力を見せられていたので、長距離砲の安定感が伴えば相乗効果でオフェンスの脅威を段違いに高めることもできそうだ。
熊本は昨シーズンのロスターから半数近くが入れ替わっているにもかかわらず、連係面での完成度は決して低くはない印象だ。開幕節の得点シーンではドライブ&キックや、ピック&ロールなどの連係からエキストラパスを経てワイドオープンの3Pアテンプトを作るプレーも何度もあった。前項のとおりリバウンドで苦戦しながら、自信を持ってそうしたフィニッシュを狙えていたことを思えば、精度をあと数%上げることも可能ではないだろうか。
☆フリースローのアテンプト数と精度
A千葉との2試合で熊本のフリースローはGAME1が36.4%(11本中4本成功)、GAME2が31.3%(16本中5本成功)と非常に低調。ヒロナカHCは「Disappointing(残念)」という言葉で現状を表した。昨シーズンの72.6%(21.2本中15.4本成功)に比べると、確率だけでなくアテンプト数も大幅減のこの項目は、1本でも多くアテンプトを勝ち取り、本来の能力を発揮して決めるということに尽きる。それだけでチーム得点が10点前後増やせるはずだし、もちろんそれは十分可能なことだ。
日替わりヒーロー、日本人エースの出現にも期待
開幕節GAME1で28得点を挙げた山本翔太。今シーズンは日本人エースとしての飛躍を期している(写真/©B.LEAGUE)
A千葉との2試合では、GAME1で山本が3Pショット7本中5本を成功させるなど、キャリアハイ(同時にゲームハイ)となる28得点を記録して気を吐いた。またGAME2では、キャプテンの本村亮輔がフィールドゴール5本すべてとフリースロー2本すべてを決めるパーフェクト・シューティングでの13得点、そしてルーキーの野口侑真が特別指定選手だった昨シーズン記録したキャリアハイにならぶ17得点を挙げ意地を見せた。会場にはGAME1で4016人、GAME2では4133人の大観衆が集まったが、ホームチームの黒星の中でも日替わりヒーローの出現がブースターに希望を感じさせたのは間違いないところだろう。
このような日替わりヒーローの活躍の中から、毎試合数字をたたき出し続けるエースへとステップアップするプレーヤーの出現を期待したくなる。山本はGAME1後の会見で、「今シーズンは日本人エースになりたいと思って取り組んでいる」とまさしくその意欲を語っていた。「日本人エース山本」の真価が問われるような序盤戦で、どのような爪痕を残すことができるか注目だ。また、鹿児島県出身の野口はGAME2後の会見で、「野口さんだけで4000人呼べるような活躍を期待してよいか?」との声に「それはちょっと難しいかも…」とおどけていたが、「そうですね鹿児島(レブナイズ)さんも上がってきていますし」と話す笑顔からは、フランチャイズ・プレーヤーを目指す意欲も感じられた(野口は鹿児島出身で、地元から応援にくるブースターも大勢いるとのことだ)。
そんな流れになるためには選手たちがのびのびプレーすることが欠かせないが、その意味では開幕節は良い兆候を見せたと言えるのではないだろうか。ピンチに立たされている熊本だが、GAME2後半は47-41と上回っていた。次を見てみよう。
文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB)
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