月刊バスケットボール1月号

大学

2024.08.29

オータムリーグ開幕、轟琉維と東海大を包む上昇機運

8月24日の山梨学院大戦で果敢なドライブを試みる轟琉維(写真/©月刊バスケットボール)

824日に幕を開けた第100回関東大学バスケットボールリーグ戦で、開幕から2連勝を飾った東海大。大会初日は、スプリングトーナメントのベスト8決めで苦杯を喫した相手である山梨学院大に91-46で快勝を収め、翌25日は専修大を78-64で退けた。東海大は28日にも中央大を73-71で破って連勝を3に伸ばし、同日時点で日体大、白鷗大と同率ながら得失点差で首位に立っている。


その中で存在感を増しているのが、今年2年生でスターティングガードを務める轟琉維だ。轟は最初の3試合で13.0得点、FG成功率56.7%、1.7リバウンド、2.0アシスト、1.7スティールというアベレージ。特に驚くべき数字ではないかもしれないが、実際にコート間近でプレーを見ると、身長169cmの小柄な轟が繰り出す鋭いムーブやトランジションのスピード感がチーム全体を走らせる原動力となり、ディフェンスにおけるプレッシャーの高さが一気に流れを東海大に持ってくるような印象だ。



山梨学院大戦の序盤は、まさしくそのような流れで始まった。山梨学院大が野溝利一と茂木健太朗の3Pショットで先手を取る展開だったが、東海大は轟のドライビング・レイアップで開幕初得点を挙げると一気に加速。第1Q終了時点で28-14とすっかり形勢を逆転していた。陸川章監督は、「春は山梨学院大に3Pを決められて負けて、ディフェンスが甘かったねと話して強化してきました。今日それが体現できて良かったと思います」と会心の勝利に笑顔を見せた。

轟はこの試合で1229秒しかプレーしなかったが、その短い時間にフィールドゴール6本中4本を決めて8得点を奪い、2アシスト、3スティールと攻守に躍動。45点差の勝利の中で十分責務を果たした。また、28日の中央大戦ではフィールドゴール12本中8本成功(うち3Pは5本中2本成功)でゲームハイの19得点を記録して、接戦の勝利に大きく貢献した。

昨年キャプテンを務めた黒川虎徹(現アルティーリ千葉)からスターティングガードの役割を引き継いだ今年度、轟は5月に行われた第64回関東大学新人戦で東海大が5年ぶり7回目の王座を獲得する原動力となり、最優秀選手賞と3P王に輝いた(3P王は山梨学院大1年の菅野陸とタイ)。7月には新人インカレでもチームのベスト4進出に貢献し、この大会では優秀選手賞に選ばれている。

その後、8月のWUBS2024(世界大学バスケットボール選手権)に日本学生選抜の一員として出場した轟は、やはり積極的にゴールに向かう姿勢とプレッシャー・ディフェンスが光っていた。大会期間中に話を聞くと、「点を獲らないガードは怖くないと思います。コーチ陣からも強気で点を獲りにいくように言われて、3Pもドライブも強気に攻めました」とのこと。「点も取れて、3Pの確率を上げて、仲間を生かしたアシストとか偏らないプレーができる、パスもシュートもできる選手になりたいです」と意欲的だった。

このチームを指揮した西尾吉弘HC(大東文化大)は、「君たちは次の李相佰盃(日韓学生競技大会)やワールドユニバーシティゲームズ、さらにはA代表につながる存在」とメンバーたちを鼓舞していたという。そんな言葉とともに、高校・大学の先輩である河村勇輝が日本代表としてオリンピックで活躍する姿も、轟にとってよい刺激になったようだ。「河村勇輝さんたちが世界で通用することを証明してくれているし、自分にもできないことはないと思っているので、強気に攻めていきます」とコメントも力強い。




轟のスピードと力強さは東海大に勢いをもたらす要素だ(写真/©月刊バスケットボール)

さて、その轟だけでなく、東海大は全体としてチーム力が上昇傾向にあるように見える。この3試合の戦いぶりで何より目を引くのは、ディフェンス重視の東海大がリーグ最少となる平均60.3失点で自分たちらしさを表現している点だ。平均5.0ブロックはリーグ1位、平均8.7スティールもリーグ3位とハイレベル。連係の良い平面的なディフェンスに、身長210cmの1年生ムスタファ ンバアイを中心としたリムプロテクションが備わっているのは、他チームからすると脅威ではないだろうか。ムスタファはブロックが1位タイの平均2.7本。平面的な動きもよく、今後のさらなる躍進が楽しみになるプレーぶりだ。

また、ハーパーら最上級生からムスタファら1年生まで戦力がそろっており、オフェンスで誰か1人に頼らなければならないようなチーム構成になっていない。この3試合のすべてで2桁得点を記録したプレーヤーは一人もおらず、リーグ全体のトップ10にも一人もランクインしていないが、チームとしての平均80.7得点はリーグ2位。山梨学院大戦はいきなり登録メンバー全員得点を達成した。


開幕初戦でムスタファと並ぶゲームハイ・タイの15得点を挙げた中川知定真。しかし東海大のオフェンスは誰もが脅威という状態だ(写真/©月刊バスケットボール)

ちなみにWUBS2024には、轟と同級生の横山蒼太と、1年生の佐藤友も日本学生選抜として出場した。5位の座を賭け春のチャンピオン日体大と対戦した最終日は、敗れたものの轟が12得点に5アシスト、横山は3P5本中3本決めて11得点、佐藤は18得点に10リバウンドのダブルダブルと東海大勢はそろって大いに気を吐いている。これも戦力の厚みを物語る出来事だろう。陸川監督は、「本当なら東海大として出たかったですね」とも話していたが、WUBSでの体験が日本学生選抜として出場した3人にとってプラスになっていることを高く評価していた。




WUBS2024の5位決定戦でフローターを放つ佐藤友(写真/©WUBS2024)

オータムリーグは轟にとっても東海大のチーム全体にとっても、ここまでの成長を確認する場であり、来年につながる一歩を印す舞台だろう。どんな結果を残すか非常に興味深い。



取材・文/柴田 健 (月刊バスケットボール)

タグ: 東海大 轟琉維

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