月刊バスケットボール10月号

Bリーグ

2024.09.02

トレイ・ポーター(アルティーリ千葉)インタビュー――既存戦力が多いことは相当な優位性になる

このオフに神戸ストークスからアルティーリ千葉に移籍したトレイ・ポーターが、新チームとして初めての公開練習が行われた8月23日にインタビューに応じてくれた。これまではライバルとしてかなり強く意識した相手だっただろうA千葉に加わり、チームをどのように見ているか、2024-25シーズンにどんな展望を持っているかを聞いた。


「ガード陣がディフェンスで思い切りプレッシャーをかけられるようにしたい」

――昨シーズンのアルティーリ千葉戦では、ゴール周辺で非常に効果的な活躍をしていました。対戦相手としてはこのチームにどんな印象を持って、どんなところを注意してプレーしていましたか?

僕はこのチームに対してはだいたいうまくプレーできていたと思います。ゴール下では高校や大学時代から強かったですが、その持ち味を出せました。でもこのチームは、僕が2年間やってきた中でディフェンスが強い相手の一つでしたね。1番から5番まで引き締まったディフェンスができるチームです。僕はほんの少しだけオープンになれる機会が多めに作れたのと、僕に有利な方にボールが飛んだりということもあったと思います。

——今シーズンはどんなところにフォーカスしていますか?

僕が今シーズンフォーカスしているのは、みんなで話したことでもあるんですけど、このオフに加入した僕がディフェンスでの存在感を強烈に発揮していくということです。デレク(パードン)とブランドン(アシュリー)の方が出場時間が長くなるかもしれないけど、僕が出るときには彼らのディフェンス面の負荷を少しでも取り除けるようにしたいですね。ゴールの近くをしっかり守って、ボールに対して強いプレッシャーをかけまくるガードの助けになるように。僕が彼らの後ろにいて(ガードが突破されたときの)保険になるようなことです。彼らがインサイドを心配することなく思い切って勝負をかけられるような存在感を発揮したいですね。それができれば、たぶん成功できると思います。


フルコート・スクリメージでポストプレーから得点を狙うトレイ・ポーター(写真/©月刊バスケットボール)





——今シーズンのB2は昨シーズンと全く異なる概況を呈していると思います。あなたがこのチームにやってきたこともそうだし、他チームも、例えば信州ブレイブウォリアーズは206cmの日本人選手が2人(渡邉飛勇と狩野富成)いて「ミスター・トリプルダブル」と呼ばれるペリン・ビュフォードとMVPも狙えるテレンス・ウッドベリーも加わりました。かなりのインパクトがあるでしょう。富山は新しいコーチを迎えてB1からやってきます。どんなふうに見ていますか?

僕が来日してから、このリーグは毎年大きな動きがあります。日本に来て3年目ですけど、すっかり変わっている感じですよ。どのチームも毎年少しずつ身体能力を高めていて、3番の有能なプレーヤーを獲得しようとしていると思います。(そうした変化によって)すごいプレーヤーがこのリーグにやって来て、プレーの質が高まるので、すごくいい方向性じゃないでしょうか。

今年も大きな動きがありましたけど、その中でこのチームは、全体的な構図としてはあまり大きく動かなかったチームです。それは皆が長期間一緒だということで、相当な優位性になると思います。とはいえ結局のところは、いずれにしても40分間しっかりプレーした方が勝つわけですし、多くの場合は努力を重ねたチームが勝つでしょうけれどね。

——あなたはこれまで2年間対戦相手としてこのチームを見てきたことになりますが、外から見ているのと中に入ってみるのとで異なる印象だったところなどはありますか?

正直な話、ほとんど予想していたとおりのチームでした。2年間対戦して感じていた通りです。西宮時代(2022-23シーズン)も神戸時代(2023-24シーズン)も対戦して思ったのは、このチームが高いペースのプレーを好むチームでボール保持者にプレッシャーをどんどんかけてくるんですよ。このオフにチームに加わって、しっかりした練習を始めて1週間程度の中では、緊迫感やプレーのタイプは当時の印象のままです。オフェンスもディフェンスもものすごく緊迫感が高いですよ。

——このチームは昨シーズン、セミファイナルでとても大きな敗北を味わっています。そのことについて何かチームメイトと話したりしましたか? どんなふうに気持ちを通じさせているんでしょうか?

僕の方からいろいろ詮索したりはしていません。立ち入ったことというわけでもないでしょうけど、56勝もしたすごいレギュラーシーズンだったのに、2年連続で不運にもプレーオフ・セミファイナルで負けてしまったのはものすごく悔しかったはずです。あえて質問したりはしていませんけど、とても残念な思いをしたことはいろんな人から聞かされています。

でもそれより大切なのは、シーズンを通じて内面的にフォーカスが定まっていて、来るべき大事な局面に対応するために集中力を研ぎ澄ませておくこと。今シーズンはそれが一番大事じゃないかなと思います。内面的にブレないようにすることですね。

——何か特別に目標を設定していますか?

僕はこれまで、個人的な目標を設定したことがないんです。結局、10得点したとか15得点だ、30得点だと言っても、負けたら意味がありませんから。僕は個人成績や出場時間を気にせず勝つためにプレーするだけですね。やっぱり勝ってなんぼじゃないでしょうか。

だから目標と言ったら、今シーズン優勝するために僕に望まれることをやってこのチームを助けることです。僕は高校時代にも大学時代にも優勝経験があるけれど、プロになって初めての優勝を体験できるようにしたいです。個人成績は気にしません。できるだけチームの力になって、可能な限り勝ちたいです。


——オンコートはそうだとして、オフコートではどうですか? 例えば日本語を学んだり千葉の文化を知るとか。

それはあります。年末までに(日本語を)流暢に話せるようになんて言っていたんですよ。ちょっとそれは難しそうですけどね(笑) 来年は大丈夫かな? どうだろう…(笑)だけど今年は何とかして、もう少しコミュニケーションをとれるようにできたらなと思っています。基本的なフレーズだけでもいくつか覚えたいですね。

千葉に関しては、今はまだちょっと暑すぎて出かける気になっていないんですよ。もう少し涼しくなるまで待ってから、自転車でいろんなところを巡ってみようかなと思っています。

——自転車ですか?

そうです。日本に来てから自転車で動き回るのが気に入っているんです。トレーニングにもなりますからね。

——お気に入りの場所とか行きつけの店とかは見つけましたか?

まだです。でも1ヵ月くらいの間にはたぶんどこかしら見つけられるんじゃないかと思っています。公園とか食べ物屋とかですね!

——A-xxに向けて、今シーズンこのチームをB1昇格とB2優勝に導く決意表明をお願いします。

決意と言ったらものすごく強いですよ! 相当負けん気が強い方ですから。誰にも負けないように競い合って一生懸命プレーすること、勝つために必要なことをすること、来場してくれるファンの皆さんに見応えのある試合をお見せできるように頑張ることをしっかりやっていきます。それが僕にとって最も大事なことです。

ディスラプティブなディフェンスをさらに強力に

アンドレ・レマニスHCはポーターについて、「長身で運動能力も高いトレイの加入で、我々はディスラプティブ(disruptive=[破壊的な]、[混乱をきたす]などの意味)なディフェンスを行うチームであり続けることができると期待しています」と話した。レギュラーシーズンに56勝4敗(勝率.933)というBリーグ史上に残る好成績を残した昨シーズン、A千葉はディフェンシブ・レーティング(相手の攻撃機会100回での平均失点)がリーグ最少の102.3だった。2024-25シーズンの成功を目指す上で、この傾向を継続あるいはさらに改善していくことが大きな課題なのだ。そこでポーターの貢献がカギとなる。「昨シーズンのB2で最強だったディフェンスを再構築できるか? ディフェンスでのリバウンドもそうですが、トレイがどんな活躍を見せてくれるか楽しみです」

A千葉は昨シーズンの快進撃を支えたブランドン・アシュリー(206cm)、デレク・パードン(203cm)、鶴田美優士(201cm)という万能タイプのビッグマン3人が今シーズンも在籍しているが、今シーズンのチーム最長身となる210cmのポーターは確かに重要なカギとなりそうだ。


アシュリー(左)とポーター(右)のリバウンド争い(写真/©月刊バスケットボール)

ちなみに210cmという身長は、過去にA千葉に所属したプレーヤーの中でも2番目の長身。昨シーズン平均16.2得点、フィールドゴール成功率62.9%、7.8リバウンドにリーグ7位の1.1ブロックというアベレージを残し、2022-23シーズンには1.9ブロックでB2ブロック王に輝いているポーターのサイズを生かしたディフェンスは、かなり期待を持てるだろう。

また、ポーターの3PショットをA千葉がどれだけ活用するかも興味深い見どころかもしれない。過去2シーズンのポーターのスタッツで、大きな変動があったのがこの項目なのだ。一昨シーズン、ポーターの3Pアテンプトは2本しかなくそのうち1本成功で成功率50.0%というデータだったが、昨シーズンは65本中25本成功で成功率40.0%。個人的な変化というよりは役割の変化とみるべきだろうが、いずれにしても積極性が強まったことが感じられ、かつ高確率だった。

A千葉に加入してこの部分がどんな意味を持ってくるだろうか。公開練習中の動きを見る限りでは、いわゆるストレッチ・ビッグというような役割を担うことは多くはなさそうだが、アウトサイドで放っておかれればビッグショットを決めきる力は持っている。

昨シーズン、平均5005人という入場者数記録を含む歴史的な成功と失意の敗北の両方を体験したA千葉。ポーターはそのチームにあって、非常に面白い見どころを提供する新戦力だ。





取材・文/柴田 健 (月刊バスケットボール)

タグ: アルティーリ千葉

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