長谷川智也(アルティーリ千葉)インタビュー ──「今シーズンでB1に上がって、このチームで最後を戦いたい」
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「アルティーリ千葉の長谷川です」——2024-25シーズンのA千葉がメディア向けに初めて公開練習を行った8月23日、長谷川智也は笑顔でインタビューの席に着きながら、こう自己紹介した。
これまでに何度も取材させてもらったことのある長谷川が初対面のような挨拶をしたのはもちろん、昨シーズンのプレーオフ・セミファイナルでA千葉を破ってB1昇格を決めた越谷アルファーズのキャプテンだった自らが、今ではA千葉のB1昇格を助けるキーマンとなろうとしている不思議な運命を認識しているからに違いない。入団発表時のコメントで、「僕がこのチームに太陽の光を浴びせ続ける事をお約束します!」と宣言した長谷川が、ブラックネイビーのチームウェアに身を包んで取材に応じる初めての機会。移籍を決めるまでと現在の思いを率直に話してもらった。
「壁にぶつかったときにチームを明るく照らす光になれると思う」
——越谷アルファーズからアルティーリ千葉への移籍を知って、何と言えばいいのかわからないような思いにもなりましたよ。
本当ですよね(笑)
——越谷に残ってB1でやってみたいという思いもあったのではないですか?
もちろん! 全然それもありましたし、そのチャンスもありました。でもシーズン中から、例えばもし仮にもう1年B2に残留してしまったら(自身がチームに残るのは)よくないのかなと思ったりもしていて、正直なところそうなったらもう出ると決めていたんです。竜三さん(安齋竜三HC)と出会ってすごくいい刺激も受けたし、本当にイチからバスケットを教えてもらって、コートでの振る舞い、コート外での振る舞いだとか、若手のメンバーをどうやってまとめていくかをすごく緻密に教えてもらいました。ただ、結果的にB1に上がれたんですけど、僕の中では「上がっちゃった」という感じのイメージだったんです。
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LJ(LJピーク)が乗った、マツ(松山駿)が乗った。(A千葉とのセミファイナルの)GAME2で僕と宗一郎(井上宗一郎)の3Pが入った。まあ、それがプレーオフなんですけどね…。そこでの達成感はもちろんありましたし、本当に今までに味わったことのない、大きなものを手に入れたっていう、自分の中ではかけがえのないものにはなっているんです。B1に上がって戦って、チームをまとめて、アルファーズをB1の舞台で何か輝かせるというステージも、すごく僕の中ではやりたいことでした。それをやって引退する、ユニフォームを脱ぐという流れも、年齢的に頭には浮かびました。周囲もそれを自然に受け取るかもしれません。
でも、僕はまだ引退したくはなかったんです。もう1年越谷で頑張って、そこまでやったら引退でいいんじゃないか…? そういう流れになってしまいそうな雰囲気がありました。そんな中で、結果的に残らないで新しい道を選ぶことになったんです。
その判断をした後、複数のチームからオファーをいただきました。それも全てB2からB1に昇格したいという意欲を持ったチームばかりで、すごくうれしかったですね。昇格した経験というのが生かせるなと感じました。
振り返ると、一昨シーズンは45勝15敗で、最終節にA千葉との対戦に連勝していればB2全体1位になる可能性もあったというチームでしたが、昨シーズンは35勝25敗。レギュラーシーズンはすごく負けてしまいました。竜三さんをはじめスペシャルな人たちが集まってきて、ケガ人もいたとはいえメンバーがそろっている中であまり勝てなかった。そういう経験もしてきました。
A千葉は昨シーズン9割以上の成績を残しているチームですけど、昨シーズンから残っている10人のメンバーは、レギュラーシーズンでほとんど負けずにプレーオフで負けて、しかも昇格がかかったセミファイナルで2シーズン連続負けている。これはすごく重い結果だと思うんですよ。
僕がその結果について何かを言うということは難しいと思いますけど、レギュラーシーズンでいろんな壁にぶつかるかもしれません。今シーズンも95%ぐらいの勝率でいけるのかと言ったら、それはまだやってみないとわからないし、難しいことだと思うんですよね。僕はたぶんチームにいるだけでも違うキャラクターではあるので、何かの壁にぶつかったときに、光というかチームを明るく照らす存在になれるんじゃないかと思うんです。そんな気持ちでA千葉を選ばせてもらったし、本当にB2で完全優勝したいなと思っています。
僕の中では今シーズンでB1に上がって、このチームで最後を戦いたい。その思いで僕はここに来ました。
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「僕が入ったからには必ずB1昇格とB2優勝を成し遂げる」
——昨シーズンのことをもう少し聞かせてください。プレーオフのパフォーマンスは“キラー”でした。出場5試合、短い時間でしたが3P成功率100%(4/4)でフィールドゴールは1本しか落としませんでした。フリースローも100%(2/2)。どうしてあんなふうにできたんでしょう?
たぶん僕は大舞台というか、何かが懸かっているとか観客が多いとか、すごい会場でプレーするというのが自然に好きなんですよ。A千葉のあのホームコートでアウェイとしてプレーするのは、自分の中では一大イベントみたいなものなんです。たぶん他にもそういう選手はいると思うんです。B1なら例えば千葉ジェッツのアリーナとか、沖縄アリーナとか宇都宮ブレックスのホームでやるとかっていうのは結局、何かいろんなエナジーを得られるというか。好きなんですよ。
——それがいい方にも出ているということなんですね。
そうですね、今はいい方向に出てくれています。
——ことA千葉との試合でもやっぱり強かったと思うんですよ。昨レギュラーシーズンに千葉ポートアリーナで1勝したとき、長谷川さんは活躍していて安齋HCも称えていました。何か特別に意識していたんでしょうか?
※長谷川は昨レギュラーシーズンのアベレージが4.0得点、FG成功率42.6%、3P成功率38.8%だったが、プレーオフを含めたA千葉との対戦では5.4得点、FG成功率と3P成功率はともに50.0%だった。
やっぱり先ほど話したように、アリーナがすごいというところもありました。相性の良さもあったんだと思います。春日部で対戦したときは結局2敗してしまいましたが、15点差くらい離されたところで僕が出て挽回した場面もありましたし。
正直に話すと、チームとしての魅力を感じていたというのもあります。すごくかっこいいしやるべきことをやっているチームなので、カルチャーに対する憧れも正直ありました。そんなチームに入ってこれからどうなんだろうというのはわからないです。どういうケミストリーを生み出せるか…。でも、何かいいものは生み出せるんじゃないかなと思っています。
——ヘアスタイルもいい感じですが、今シーズンは個人的にどんなアピールをしてどんなふうにチームを引っ張っていきたいと思っているんですか?
オンコートではどのタイミングで出ても、どんなシチュエーションで出されてもやることは変わらないし、チームを鼓舞して、リーダーシップを発揮していきたいです。それが例えば第4Q残り1分を切った時点とか残り20秒だったとしても、ちょっと出てと言われても全然僕は最後までやり切ります。勝っていても負けていても、やっぱり見に来てくれているA-xxの方々がいるし、チームメイト、スタッフ、家族のために僕はそれをやり続けなきゃいけないという思いがあります。
接戦の前半に僕がいいプレーをしたから後半の最後まで出してもらえる、というようなときもあるかもしれないですけど、仮にそうでなくてもやることは変わりません。最後の最後までベンチにいたとしても、チームを鼓舞し続ける姿勢は絶対に変わらない、変えてはいけないんだと思っています。
そういう存在というのはこのチームで絶対にいなきゃいけないものだと思います。それもここに来た一つの理由です。僕は入団コメントで言いましたけど、やっぱり「太陽の存在」になりたいです。髪型やカラーも明るくしたいなという気持ちでやっています。
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——A-xxの皆さんに伝えたいメッセージはありますか?
そうですね。すごく悔しいシーズンが続いていると思うんです。でも、その経験は本当に、他のチームのプレーヤーやファンができない経験をできていると思うので、その悔しさとか思いを必ず今シーズンで絶対に晴らしてB1昇格という目標を達成しなければいけません。僕が入ったからには必ずB1昇格とB2優勝を絶対するので、ぜひついてきてほしいなと思います。
「今度は我々のために何本か決めてもらう番ですね」——アンドレ・レマニスHC
アンドレ・レマニスHCは長谷川について、「ある種の反骨心とタフさがあっていいですね。きっと今シーズンのチームにそれを生かしてくれるでしょう」と話し、「非常にチーム志向の考え方。これまでの3シーズンはユウト(大塚裕土)が内面的なリーダーシップを多く担ってきてくれましたが、トモヤはその面で彼を助けてくれると思います」と期待を寄せている。ただ、このオフに移籍した岡田優介(現香川ファイブアローズ)と小林大祐(現横浜エクセレンス[期限付き移籍])というクラブ創設時から在籍したベテランの代役を長谷川に望むわけではないという。「誰もが独自の才能とスキルを持っています。そのスキルセットと独自性をチームにもたらすか、チームとしてどのように適合させていくかを見出してこの環境で活用できるようにすることが重要だと考えています」
昨シーズン、A千葉のB1昇格を阻むビッグショットを決めたプレーヤーであることも当然忘れるはずはない。「トモヤが積極的に打っていくプレーヤーであることは皆知っています。これまでに何度も決定的なショットでやられてきましたが、今度は我々のために何本か決めてもらう番ですね」
公開練習のフルコート・スクリメージでは、さっそく長谷川もスペーサー/シューターの役割を担い3Pショットを成功させていた。太陽の男はすでに輝きを放ち始めている。