【WUBS2024 DAY3レポート】3代目王者はデ・ラサール大(フィリピン)——日体大が日本学生選抜を破り日本勢最高位に
3代目王者となったデ・ラサール大(写真/©WUBS2024)
8月10日から国立競技場代々木第二体育館で開催されていたWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)が、12日に最終日を迎えた。優勝はデ・ラサール大(フィリピン)。決勝で高麗大を101-86のスコアで破り、初の栄冠をつかんだ。
初日に躓いた日本勢は日体大が3チーム中の最高位となる5位に入り、日本学生選抜、白鷗大が順に6位、7位フィニッシュ。日本勢の上位進出がかなわなかったのは残念だが、それぞれが収穫を手にオータムリーグ、そしてインカレ出場・上位進出を目指して進んでいく。
DAY3試合結果
第1試合(WUBS2024 GAME9)
ペルバナス・インスティテュート(インドネシア) 55(11 17 11 16)
白鷗大(日本、インカレ優勝優勝) 95(22 20 29 24)
チームトップの14得点で白鷗大をけん引したポーグ健(写真/©WUBS2024)
今大会で今一つ元気がなかった白鷗大だが、この日は試合開始早々にジョエル モンガが力強い1対1からトマホーク・ダンクを叩き込む好スタート。佐藤涼成のミドルジャンパーも続き、序盤は4-0とリードを奪った。しかし、その後訪れた絶好の得点機に小さなミスが続くなど、インカレ王者らしさが体現し切れずにいるうちに、ペルバナスはダニエル・サラメナとサンディ・イブラヒムの3Pショットを浴び、4-6とリードを明け渡してしまう。
ただ、ペルバナスも白鷗大のディフェンス強度の前に簡単にはオフェンスを作ることができず、また自らのケアレスミスでターンオーバーを犯すケースが多かった。そこに来て白鷗大は、ポーグ健が前半3本の3Pショット全てを成功させ12得点を稼ぐ活躍(試合全体では14得点)。八重樫ショーン龍も3Pショット5本中2本成功を含む10得点(同13得点)でオフェンスをけん引し、前半を終えて42-28と白鷗大がリードしていた。
後半のスタート3分間は点差が動かなかったが、白鷗大は八重樫の3Pショット、佐藤のスティールからのレイアップなどでその後勢いに乗り、一気に点差を71-35と36点差まで拡大。このクォーターを71-39で終えると、試合終了まで危なげなく40分間を戦い切った。白鷗大はポーグ、八重樫を含め4人が2桁得点。エントリー12人中10人が得点を記録した。
試合後の囲み取材で網野友雄監督は、7位という結果を受けて、「いいきっかけとする大会にしたいという思いが強い」と話し、言葉に力を込めて以下のように続けた。
「今いる学生たちは、白鷗大が勝ち過ぎているところを見てきたと思うので、普通にやれば自分たちも同じになれるんじゃないかと、一番大事にしているところが頭から飛んでしまって新しいことを積み上げようとしている感じがありました。今大会は、何をして成果を出してきたのかを見つめなおす大会だったと思います。この大会をきっかけにインカレのファイナルに出てくるという昨年の東海大の前例があるので、それを越えられるようなチームにしていきたいです」
第2試合(WUBS2024 GAME10)
日体大(日本、スプリングトーナメント優勝) 93(27 23 22 21)
日本学生選抜(日本) 77(21 15 27 14)
終盤に勝負強さを発揮した土家拓大(写真/©WUBS2024)
激しい点の取り合いで始まったこの一戦は、序盤に日本学生選抜が横山蒼太(東海大2年)と広瀬洸生(青山学院2年)の3P攻勢で13-8とリード。しかし日体大は月岡煕を中心にスピーディーなトランジションからオフェンスを展開し、ムトンボ ジャンピエールとコネ ボウゴウジィディット ハメードにペイントで得点機をたびたび生み出して応戦。第1Qを終え27-21と6点差をつけてリードした。
日体大の勢いは第2Qもとまらず、小澤飛悠らのアタックに合わせてインサイドに動くムトンボやコネとのコンビネーションが日本学生選抜のディフェンスをほんろう。前半を終えて50-36と14点のリードを築く。
点差を広げられた主な要因はセカンドチャンスをモノにしたこと。日体大は第2Qにリバウンドで17-10とアドバンテージを奪ったが、17本中7本がオフェンス。日本学生選抜はディフェンスリバウンドが5本にとどまっており、ムトンボとコネの高さに対抗し切れなかったことが明らかだ。
後半、日本学生選抜もアグレッシブさを失わず挽回を図る。第3Qは広瀬の3Pショットで反撃ののろしを挙げると、佐藤友(東海大1年)の連続得点が続き、さらにそれまでおとなしかった轟琉維(東海大2年)が当たり始めた。轟はこのクォーターだけで12得点、2アシスト、2スティールと攻守に躍動。第4Q開始時点で日体大のリードは72-63と1桁に縮まっていた。
しかし、日本学生選抜の追い上げムードを日体大の土家拓大の3Pショットがくじいた。土家は第3Q終盤にトップから沈めて初得点を記録すると、第4Qにさらに2本決めてチームを鼓舞。約3分半を残しての一撃は90-70とリードを20点差に広げ勝利を動かぬものとするビッグショットで、勝負の時間帯にキャプテンの存在感が光った。
大事な流れで3Pショット3本を決められたことについて土家は、「3Pショットに関しては他チームもまだ警戒していないと思うので、自信を持って打つようにしています」と話した。「練習の成果が出せてよかったですし、プレーの幅を広げるチャンス。チームに一つ大きな武器として加えられたらと思います」
藤田将弘監督は今大会を、「上のヤマでやりたかったというのはありますが、負けた初戦もいい経験。その後全てを勝てて、ライオンズの財産になったと思います」と前向きに評価した。WUBSの開催期間中には選手たちの成長も実感できたとのこと。「肌感覚でも結果の数字を見ても、選手たちは大会の雰囲気や対戦相手などいろんなものと戦うことに慣れたなと。しかもその慣れが、日に日に目に見えるように良い方向に振れていって、対応力があるなというのを感じました」と笑顔で話していた。
第3試合(WUBS2024 GAME11)
国立政治大(チャイニーズ・タイペイ) 92(32 22 25 13)
シドニー大(オーストラリア) 68(18 15 17 18)
ジャンプショットを放つNCCUのソン シンハオ(写真/©WUBS2024)
3位決定戦の両チームは前日の準決勝をオーバータイムまで戦った後。体力的な消耗がプレーにどのような影響を及ぼすかが一つのカギだったが、この試合ではシドニー大にネガティブな影響が強く出たようだ。序盤こそ接戦だったが、シドニー大は第1Q半ば以降ルーズボールやディフェンスで1歩目の遅れが目立ちはじめ、シュートの精度も上がらないまま徐々に引き離されていった。
一方の国立政治大は、体力の削り合いの中で高さのアドバンテージが生きた。セニ・パテ・ンジャイとボバカー・エムボの200cm超えビッグマンが併せて6ブロック。リムプロテクションはシドニー大のショットセレクションをより難しくさせ、またリバウンドからトランジションオフェンスの好機を増やすことにつながった。
NCCUはベンチ背後の一角を占めた応援団の大声援にも力を得て奮闘。新キャプテンのソン シンハオのプレーメイクも冴え、後半は一方的な試合運びで勝利をつかんだ。
NCCUのチェン ツーウェイHCは、連覇を逃した悔しさを隠さなかったが、「選手たちは最後まで戦い続けてくれました。それが一番大事なことで、いろんな経験をもらえました」と今大会の結果や経験を前向きに捉えていた。準決勝で敗れた後、選手たちは悔し涙を見せていたという。それだけ強い思いを持って臨んだWUBSについて、「日本をはじめアジアの国々とのバスケットボールでの交流が盛んになってきていて、ありがたいこと」と話し、大きな意義を感じていた様子だった。
一方のシドニー大は、敗れたとはいえ昨年の8位から4位に躍進。マシュー・ジョンソンHCは「選手たちの頑張りに驚かされました。素晴らしい成果です」と胸を張った。
第4試合(WUBS2024 GAME12)
デ・ラサール大(フィリピン) 101(26 24 27 24)
高麗大(韓国) 86(18 30 25 13)
左ローポストの難しい距離からフローターを狙うケビン・キンバオ。第4Qはこのスポットを起点に何度となく好プレーを展開した(写真/©WUBS2024)
フィリピンと韓国の大学王者の激突となった決勝戦は、両チームの応援団がそれぞれのベンチ背後から熱烈な声援を送りあうにぎやかな雰囲気の中で行われた。序盤に良い波に乗ったのはデ・ラサール大。先制点は高麗大のヨ ミンスによるレイアップだったが、最初の1分間で5得点に1リバウンド、1スティールを記録したフォワードのマイケル・フィリップスのハッスルがチームを勢いづけ、11-6とリードした。
高麗大はこの時点で早くもタイムアウトを使い、立て直しを図る。以降、フィジカルなデ・ラサール大のオフェンスをなかなか止められない中でも、ガードのムン ヨヒョンがしぶとくアグレッシブなプレーメイクでオフェンスを組み立て対抗。前半終了時点で50-48のデ・ラサール大2点リードという好ゲームになった。
後半は早々に、ムン ヨヒョンのドライビングフローターで高麗大が50-50の同点とする。その後1~2ポゼッション差でリードが変わる緊迫した時間が続いたが、勝負を分けたのは第4Qのキンバオのパフォーマンスだ。流れとしては、第3Q終了間際をムン ヨヒョンの4Pプレーで締めくくった高麗大が反撃ムードにあった。しかし、キンバオはオフェンスの起点、フィニッシャー、リバウンダーとあらゆる側面でチームに貢献。キンバオはこの試合で15得点、11アシスト、6リバウンド、1スティールを記録したが、そのうち5得点、5アシスト、4リバウンド、1スティールが最後の10分間の仕事。驚くべきはコートビジョンとパスさばきで、ボールを受ける前に次の判断ができていて、タッチパスでチャンスの味方にボールをつないでイージーバスケットを量産する場面が連続的に生み出された。第4Q開始時にデ・ラサール大のリードは77-73の4点差だったが、キンバオの支配的なプレーメイクがクォーター開始から約3分間に15-0のランを演出。92-73と一気に突き放し、以降も落ち着いたプレーぶりで試合を締めくくった。
決定的な活躍を披露したキンバオはMVPに選出された。また、敗れた高麗大からは、30得点、5リバウンド、4アシスト、2スティールを記録したムン ヨヒョンがベストディフェンダー賞を受賞している。
試合後、会見場に姿を見せたデ・ラサール大のトペックス・ロビンソンHCは、満面の笑顔で「サンキュー」を5回繰り返してから質疑に対応。キンバオについては「彼がいてくれて我々は本当に恵まれています。勝利をもたらしてくれる存在ですね」と絶賛していた。
最終順位
1位 デ・ラサール大(3勝)
2位 高麗大(2勝1敗)
3位 国立政治大(2勝1敗)
4位 シドニー大(1勝2敗)
5位 日体大(2勝1敗)
6位 日本学生選抜(1勝2敗)
7位 白鷗大(1勝2敗)
8位 ペルバナス・インスティテュート(3敗)
MVP ケビン・キンバオ(デ・ラサール大)
写真/©WUBS2024
ベストディフェンダー賞 ムン ヨヒョン(高麗大)
写真/©WUBS2024
取材・文/柴田 健 (月刊バスケットボール)