月刊バスケットボール10月号

「高校生らしく、一生懸命に」を追求する仙台大明成

指導2年目の畠山コーチの下、下級生も含めた総力戦で戦う

杜の都・仙台市に位置する仙台大明成。日本代表の八村塁(レイカーズ)ら、数多くのプロ選手を輩出し、2005年の創部からインターハイ1回、ウインターカップ6回の優勝を成し遂げてきた全国有数の名門校だ。

長年チームを率いてきた名将・佐藤久夫コーチが昨年6月にこの世を去り、チームは深い悲しみに包まれたが、教え子の畠山俊樹コーチが指導を引き継いで再出発を切った。「つらいときこそ明るく」という恩師の教えを胸に、昨年のインターハイは接戦を制してベスト8に進出。ウインターカップでは後に優勝する福岡第一相手に、1回戦敗退にはなったものの最後まで粘りを見せた。




今年は、6月の宮城県予選を制して12大会連続16回目のインターハイ出場。昨年の主力だったウィリアムスショーン莉音、村忠俊(ともに白鷗大)、佐藤晴(東洋大)の3本柱が卒業し、際立ったエースはいないものの、下級生も含めた総合力が光る。その中でもチームを引っ張るのは、3年生の瀧豊多、2年生の小田嶌秋斗といった昨年から経験を積んできたメンバー。今年は瀧と石岡青がダブルキャプテンを務めており、強い覚悟でチームをまとめている。

指揮を執って2年目を迎える畠山コーチは今年、「高校生らしく、一生懸命に戦うという明成のカラーを、選手たちには改めて日々の練習から意識して体現してもらいたい」と考えている。「周りの人が応援してくれて、サポートしてくれることは当たり前ではない。だからこそ、だらしない試合はできないと思っています」と畠山コーチ。


昨年からチームを率いる畠山俊樹コーチ

畠山コーチが口にした“サポート”という点で、仙台大明成と深い関係にあるのが総合スポーツブランドの「ミズノ」だ。かつて佐藤コーチが仙台高を指導していた時代からつながりのあったミズノは、仙台大明成のことも創部当初からサポート。大きなMの字が印象的なユニフォーム、Tシャツなどのウエア制作はもちろん、仙台大明成の選手たちは毎年のようにミズノ主催の交歓大会に出場し、他県の強豪校や大学生相手に武者修行を積んできた。それが全国大会での躍進にも大いにつながっていたのだ。

開発段階から現場の声を伝えてきた待望の新作シューズ




そして今回、ミズノが7年ぶりに中高生向けのバスケットボールシューズ「WAVE TRANSISTA(ウエーブトランジスタ)」を発売。何度か試作品を選手たちが試し履きするなど、その開発には仙台大明成も深く関わってきたという。仙台大明成を10年以上見ている高橋陽介トレーナー(アシスタントコーチ)はこう語る。

「開発の段階から、ミズノの担当者さんとコミュニケーションを取って、いろいろ要望は伝えさせていただきました。それは現場レベルでの選手たちの感触もそうですし、トレーナーの立場から見た医科学的な部分、ケガをしないためにどうしたら良いのか、というところもそうです。そういった現場の声も拾い上げながら何度も改良いただいたことは、すごくありがたいことだと思います」


仙台大明成の選手を10年以上見ている高橋陽介トレーナー

高橋トレーナーが特に強く望んだのは、かかとのフィット感と、カッティングや素早い方向転換など、“横のねじれの動き”に対するサポート力。「明成のバスケットはトランジションの速さを追求しますし、方向転換もたくさんしなければいけない。横のねじれの動きに強いシューズでないと、外側に重心がかかって捻挫をしてしまったり、骨はねじれの動きに弱いので疲労骨折にもつながります。そうしたケガを予防できるシューズを求めていました」と言う。

こうした現場の声を聞きながら、何度も改良を重ねて誕生したのが「ウエーブトランジスタ」。最大の特長は、1対1の強さを引き出す機能性だ。ローカットでも高い安定性を追求した足首周りは、素早い横の動きに対してズレを軽減するフィット感があり、かかと部分の独自素材のクッションが縦方向の動きや繰り返すジャンプ動作をサポートしてくれる。また、安定性を追求したソール設計は、横に踏み込む動作やサイドステップ時に効果を発揮。相手より速く、連続した横方向のフットワークを実現することで、1対1の強さを最大限に引き出してくれるシューズなのだ。

また、実際に履いた選手たちから多く聞かれたのが「すごく軽い」という驚き。軽量性・耐久性を高めるメッシュ素材を採用して約340g(片足27.0cm)の軽さを実現し、素早くステップを踏めるシューズとなっている。高校時代にもミズノのシューズを履いていた畠山コーチも「軽くてローカットなのが良いですし、グリップ力やクッション性にも優れている。自分が現役選手だったときもそういう視点でシューズを選んでいたので、自分が高校生のときにあったら良かったなと思います」と羨望の目でシューズを見つめる。






高橋トレーナーは、中高生のシューズ選びの重要性をこう語る。「派手な色など見た目のデザインで選ぶ中高生も多いと思いますが、履き心地や機能性も考えながら選ぶことが大事だと思います。自分に合わないシューズを履いてケガをしてしまっては、パフォーマンスを発揮することはできません。『ウエーブトランジスタ』は、1対1を重視しているチームや、スピード感あるトランジションバスケットを好むチームには特におすすめしたいです」

シンプルなデザイン性も選手たちから大好評で、機能性もこれまでのモデルとは一線を画す「ウエーブトランジスタ」。開発からミズノとともにこだわり抜いた自信の一足を履いて、仙台大明成は夏の全国舞台に挑んだ。結果は惜しくも、留学生を擁する阪南大に敗れて1回戦敗退(65-74)。ただ、11点ビハインドで入った後半、ガード陣が強気に攻めて一時4点差まで詰めるなど、随所で良さも見えた。新シューズを履いて繰り出した素早いトランジションや切れ味鋭い1対1は、全国でも存分に見せ場を作ったといえるだろう。悔しさと手応えを胸に、仙台大明成は冬に向けてさらなるレベルアップを図る構えだ。





取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)、写真/石塚康隆

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