渡嘉敷来夢が新天地アイシンでの誓い。もう一度、自分のパフォーマンスで勝利に導く
アイシンに加わった渡嘉敷、岡本、平末(右から)
渡嘉敷、岡本が青いチームウエア姿を披露
7月13~15日まで武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)でWリーグサマーキャンプが開催された。その会場には見慣れない青いウェアを着た渡嘉敷来夢の姿もあった。昨シーズンまでENEOSサンフラワーズに14年在籍、大エースとして君臨した渡嘉敷は、桜花学園高校時代からの盟友、岡本彩也花とともに、今シーズンよりアイシン・ウィングスに移籍した。
7月に入ってからチームに合流したという渡嘉敷は、サマーキャンプでは試合には出場しなかったものの、ベンチから大きな声を出し、チームメートにドリンクを渡したり、試合の前後には荷物を運んだりとかいがいしく振る舞い、チームにいち早く溶け込もうとしているように見えた。
「やはり他チームの選手からしたら、特に若い選手などは『渡嘉敷さんだ』って一歩引いてしまうと思います。でもそれは嫌で、同じチームメートとして、同じ目線でコミュニケーションをしたいなと。でもそれは若い選手たちに『気にしなくていいよ』って言っていてもダメなので、こちらから近付いていくことが必要だなと」と心境を明かす。
もちろん、それだけでなく渡嘉敷自身が求められていることは、チームに勝利をもたらすこと。長年にわたりリーグのトップに君臨してきているENEOSとは違い、アイシンは今シーズンから始まる2リーグ制において、上位リーグとなるプレミアの中では最下位となる8位での参戦。成績によって降格もあるだけに、渡嘉敷にかかる期待は大きなものになる。
「コートの上での働きはもちろんですが、それ以上にポジティブマインドであったり、大事なところを踏ん張れば、少しずつだけど点差が開いてくるから我慢比べだよといったりしたことを、しつこく伝えていければ」と勝者のメンタリティの注入を意識する。そのうえで「今年のチームにとって、サマーキャンプが初めての実戦。これまで練習してきたことを出そうとしていましたし、まだできていない部分も見られましたが、これから伸びしろしかないなと感じています」とチームの印象を語り、「この時期はチームとして合わせていくことが大切だと思っていて、自分のプレーにしても、敵として見ていたのと、同じチームでプレーするのはやはり違いますし、それは私にとって、新しいチームメートたちのプレーも同様です。周りの選手たちの良い部分を生かせるようにしていきたいですし、足りない部分は力になっていきたいと思っています。これからそうした部分のコミュニケーションを大切にしてやっていくことで、勝てるチームになると思います」と自信ものぞかせた。
「これまでやってきたなかで、昨シーズンの自分のパフォーマンスには納得がいっていない部分が大きく、それがチームの成績につながってしまったと思っています。今シーズンはもう一度、しっかりとしたパフォーマンスを見せ、それによってチームを勝利に導けるようにしていきたいですし、それができることということを自分でも見たい」と、新天地にかける思いを口にした。昨シーズンは得点部門でリーグトップの19.24得点、リバウンド部門では2位の10.16本を記録、当然のごとくベスト5にも選出されるなど、傍から見れば申し分のないパフォーマンスだ。それでも相手を圧倒し切れなかったと感じているのだろう。自分のパフォーマンスでチームを勝利に導く。それができることを自分自身で期待してもいるのだ。
ENEOSで躍動した頼もしいルーキー、田中と八木
一方、渡嘉敷が抜けたENEOSには頼もしいルーキーが加わった。昨年まで高校バスケ界でライバルとしてしのぎを削ってきた田中こころと八木悠香の2人だ。田中は桜花学園、八木は京都精華学園出身。昨年度は京都精華がインターハイ、U18トップリーグ、ウインターカップを制し3冠。その京都精華でオールラウンダーとして活躍したのが八木だ。一方で田中は先月開催されたFIBA U18女子アジアカップ2024において、日本代表を3位、来年のU19ワールドカップ出場権獲得に導く活躍で、大会のオールスター5にも選出されている。
「渡嘉敷さん、岡本さんは桜花の大先輩でもあるので、やはり一緒にプレーしてみたかったというのはありますが、それは仕方のないことなので、自分たちがしっかりとプレーして、サイズが小さくなった分、脚を動かして頑張っていきたい」と田中。「高校時代とはユニフォームの色も変わりましたし、何歳も年が離れた選手たちとプレーできるのは楽しみです。ドリブルからの1対1や、シュート力を生かして、年齢関係なく積極的にプレーしたい」と心強い。
同様に八木も「落ちる場所を予測した飛び込みリバウンドなどは、身長が高い相手にも通用する部分があると感じていますし、自分は得点に出ない部分、ディフェンスだったり、ルーズボール、一本のリバウンドを取ることだったりを積み上げてチームの力になっていければと思っています」と意気込みを語った。2人ともサマーキャンプの3試合で各試合30分前後のプレータイムを得て、2桁得点のアベレージを残しており、即戦力として有望視されていることが分かる。
アイシン、ENEOSをはじめ、昨シーズン優勝の富士通レッドウェーブ、準優勝のデンソー・アイリスもそれぞれ新戦力を加え、補強を遂げている。「昨シーズンとは違うリーグになったみたい」とは富士通のBTテーブスHC。それだけ各チームの戦力状況が変わったということだ。日本代表組を欠く富士通は「今はチームの底上げをしています」と多くの選手にチャンスを与え、経験を積ませている段階だという。
夏場をかけてチームづくりは進む。10月11日に開幕する第26回Wリーグにおいて、それぞれどんな姿を見せるのか。楽しみに待ちたい。
文・飯田康二/写真・石塚康隆