月刊バスケットボール1月号

「迷いなくプレーできている」山本麻衣が誇るカオスを打開する判断力

7月6日、有明アリーナにて開催された「三井不動産カップ 2024(東京大会)」のGAME2。ニュージーランド代表と対戦した女子日本代表は、得点が伸び悩む時間帯もあったが、激しいディフェンスで36個ものターンオーバーを奪い、9250で快勝を収めた。
 
2日前のGAME1では3Pシュートが45.5%(2555本)の高確率で成功したものの、このGAME2では一転して26.7%(1245本)と、チームが目指す「4割以上」(恩塚亨コーチ)には及ばなかった。ただ、「シュートが入らない時間帯にゲームをどうデザインするか、というオプションはいくつかあります」と恩塚コーチが言うように、シュートが外れてもオフェンスリバウンドに飛び込み、泥臭くアグレッシブにプレッシャーを仕掛けて相手のミスを誘うなど、日本らしさを随所で発揮した試合となった。
 
中でも、チームで最も長い23分の出場時間を得て8得点、4リバウンド、3アシスト、4スティールとマルチに活躍したのが#23山本麻衣だ。GAME1では3Pを6本決めてチームハイの20得点を挙げたが、このGAME2では一転して3Pは0/8と不発。それでも「今日は入りから3Pが入らなかったのですが、自分の強みは3Pだけではないので、しっかりドライブなどでチームに貢献しようと切り替えました」と柔軟な対応を見せた。
 

恩塚コーチのバスケットの中で生きる山本の高い判断力

 
2月の
FIBA女子オリンピック世界最終予選(OQT)以降、1番ではなく2番ポジションでの起用が増えた山本は、「自分の強みは得点力。攻めるところは攻めなければいけないですし、直接点を取ることだけではなく自分が点数に絡むことが重要だと思っています」と、攻める姿勢を貫いて代表内でのポジションを確立した。3x3女子日本代表の頃から鍛えてきたフィジカルの強さを生かしながら、ドライブでも3Pシュートでも得点を量産でき、ディフェンスが寄れば周りにアシストをさばくこともできる。

また、1番も2番もできて状況に応じて最適なプレーを作れる山本は、恩塚コーチのバスケットを体現するのにまさにうってつけの存在だと言えるだろう。恩塚コーチは合宿中、相手がこうきたらこう動くという対応の原理原則をあらかじめ定め、「スクリプト(台本)」として選手たちに落とし込む作業をずっと続けてきた。「選手たちにそれを覚えさせ、考えて動くのではなく体が素早く反応するように練習を重ねる。そうやって台本を演じながら、もしその台本よりもっと良いアドリブがあったらそっちを優先していいという決まりです」と恩塚コーチ。つまりは、型の決まったフォーメーションではなく、相手の動きに応じて枝分かれにプレーを選択していくようなバスケットを求めており、それはすなわちコート上の選手たちの判断力、対応力が大いに問われるということだ。

もちろんそれは選手全員に求められるところだが、そうした状況判断は山本の得意とするところ。ボールを失わない強固なファンダメンタルを誇る山本は、ディフェンスと対峙しても冷静にプレーすることができる。実際、「恩塚さんのバスケットは一番理解しているつもりです」と自負しており、今回の三井不動産カップでは全4試合にスタメン出場、平均21分の出場時間を得るなど、指揮官からの厚い信頼が目に見える形で表れている。

東京大会GAME1後の記者会見で、恩塚コーチは「山本選手のスコアリング能力は世界トップクラスだと思っています。特にすごいのが、コート上がカオスな状態の中で、自分で素早く合理的な答えを見付けてプレーを選択していけること」と話していた。それについて山本は「3年間、恩塚さんのバスケットをやってきて理解もしっかりできているので、今は本当に迷いなくプレーできています。そこは自信を持ってやっていきたい」と言う。
 
山本自身、前回の東京2020オリンピックには3x3女子日本代表として出場し、「パフォーマンスがあまり上がらず、個人的にも納得のいかない結果(準々決勝敗退)でした」と、不完全燃焼に終わった過去がある。だからこそ、5人制で挑む初のパリ・オリンピックに向けて「まずは自分らしさを出せるようにしたい」と懸ける思いは強い。強豪国ばかりが相手となるオリンピックでは、カオスな状況も多々発生するはず。そんなときこそ、山本の迷いなき判断力、世界トップクラスの得点力がチームを導く光となるかもしれない。

 

 

女子日本代表国際強化試合 三井不動産カップ2024(東京大会)

・[DAY 1]7月4日(木曜日)
日本代表125-57ニュージーランド代表

・[DAY 2]7月6日(土曜日) 
日本代表92-50女子ニュージーランド代表

男子日本代表国際強化試合SoftBank CUP 2024 (東京大会)

・[DAY 1]7月5日(金曜日)
日本代表 8485 男子韓国代表

・[DAY 2]7月7日(日曜日)
日本代表VS 男子韓国代表
ティップオフ19:30
<放送>テレビ朝日系列にて生放送



写真/石塚康隆 文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

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