月刊バスケットボール7月号

Bリーグ

2024.05.22

雌雄決するBリーグファイナル、広島と琉球の4つの共通点

昨日の琉球ゴールデンキングスと千葉ジェッツの第3戦が終わり、いよいよ「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2023-24」の対戦カードが決まった。

千葉Jを第3戦で下したディフェンディングチャンピオンの琉球と、三遠ネオフェニックスと名古屋ダイヤモンドドルフィンズをともにアウェイで下した広島ドラゴンフライズだ。

琉球はシーズン最終節で名古屋Dが連勝したことで、Bリーグ初年度以来初めて西地区の王座を明け渡した。しかし、敵地でのアルバルク東京とのシリーズでは第1戦からダブルオーバータイムの激闘を制し、2勝1敗でセミファイナルへ。同ラウンドでは第1戦で千葉Jに大敗するも、見事にバウンスバックしそこから2連勝を挙げて横浜アリーナへの切符を手にした。

一方の広島は、エースガードの寺嶋良を故障で欠きながらもレギュラーシーズン終盤の猛チャージでワイルドカード1位でCSに乗り込んだ。クォーターファイナルではリーグ3位の勝率をマークしていた中地区王者の三遠をストレートで下すと、同じ西地区で首位となった名古屋Dと第3戦に及ぶ死闘を戦い抜き、クラブ史上初、そしてB2を経験したクラブとしても初のファイナル進出を果たしている。

そんな両クラブにはいくつもの共通点があるので、ここで紹介したい。

1.レギュラーシーズン最終節のリマッチ


エバンスとローのマッチアップはファイナルでも要注目!

まず話すべきは、今季のレギュラーシーズンで最後に戦った相手だったという点。琉球にとっては、連勝すれば地区優勝が決まるシリーズで、広島にとってはレジェンド朝山正悟の広島サンプラザホールでの最後の試合。お互いに負けられない2試合は、初戦を広島、2戦目を琉球が制し、痛み分けで終わっていた。

際立ったのが対照的な2つの試合展開だ。広島が勝利した1戦目は69-59のロースコアゲーム。特に広島が琉球の強力なフロントコート陣を抑え込み、アレン・ダーラムが10得点、ジャック・クーリーが5得点、アレックス・カークとヴィック・ローは4得点に封じ込められている。結果として、琉球の2P成功率を40.7%(RS全体では52.1%)まで下げ、自分たちは中村拓人の3本を筆頭に40%(10/25)の高確率で3Pを射抜き、勝利した。

対する2戦目は89-80のハイスコアで琉球が勝利。前日の反省を踏まえてダーラムとクーリーがインサイドでアドバンテージを取り、2人合わせて37得点、15リバウンド。さらに、インサイドにディフェンスが寄ったことでオープンショットが増え、3Pも13/29(44.8%)と効果的に決まった。

もう一つ琉球にとって追い風となったのが、前日無得点に終わっていた小野寺祥太がFG5本とフリースロー4本をノーミスで決め切り、15得点の大活躍を見せたことだ。大黒柱2人が優位に立ったことでチームのリズムもつかめた結果と言える。

2.エバンスと船生は“古巣対決”に



現在、広島で主軸を担うドウェイン・エバンスと船生誠也は、ともに琉球でのプレー歴がある。船生は桶谷大HCが再就任する前年2020-21シーズンの1年間、そしてエバンスは琉球が初めてファイナルに進んだ2021-22シーズンまでの2年間プレーした。

特にエバンスはユーティリティな活躍で琉球のエースを務め、22年のCSセミファイナル第2戦では、島根スサノオマジック相手にブザービーターを決め切って、チームをファイナルに導いてみせた。同シーズンにはBリーグの年間ベスト5にも選出されている。

今回は中立地・横浜アリーナでのファイナルとなるが、キングスブースターが2人をどう迎え入れるのか、あるいは手痛いブーイングを浴びせるのか。ここも見どころの一つだ。

3.重量級の帰化選手による3ビッグ


帰化選手の起用法とクーリーやブラックシアー・ジュニアらの活躍は大きなポイント

両クラブの強みの一つが、帰化選手を絡めた3ビッグのラインナップを敷ける点だ。広島は208cm・122kgの河田チリジ、琉球は211cm・114kgのアレックス・カークがそれぞれ帰化枠で登録されている。このシリーズでは、両クラブが2選手をどう起用するのか興味深い。

広島は名古屋Dとのシリーズで効果的に河田を起用していたが、第3戦では平面のラインナップを敷いた名古屋Dに対して、スピードに劣る河田を出せなかった。逆に名古屋Dも210cm・138kgの巨漢センター、ジョシュア・スミスをコートに送れず、我慢比べが続いていた。これに近い展開は琉球とのファイナルでも起こり得そうで、そうなったときにポイントになるのがクーリー&ダーラム対ケリー・ブラックシアー・ジュニア&ニック・メイヨのマッチアップ。

琉球の2人はインサイドでのフィジカルプレーが得意で、広島の2人はクーリーとダーラムほどの力強さはないが、代わりに3Pシュートのオプションを持っており、スキルと機動力を生かしたプレーでアドバンテージが取れる。ローとエバンスの直接対決は言わずもがなだが、両ヘッドコーチが帰化選手とビッグマンをどう起用するかはシリーズの行方を大きく左右することになりそうだ。

4.大東文化大OBガード対決



縁あるマッチアップといえば、琉球・岸本隆一と広島・中村拓人による“大東文化大OBガード対決”も楽しみにしたい。キャリア12年目の岸本は大学3年時にチームを関東1部昇格に導き、4年時にはインカレベスト8入りを果たしている。対する中村は広島4季目の23歳。高校時代から世代トップガードとして活躍し、大学最終年にはリーグ戦とインカレの優秀選手賞も受賞している。

プレーヤータイプとしては、岸本は代名詞の3Pシュートの象徴されるスコアリングガードで、近年はゲームコントロールの巧みさも光るリーグ屈指の司令塔。中村は184cmの長身と冷静沈着なゲームメイクが売りで、寺嶋離脱後はその穴を見事に埋める活躍。CSでは平均10.0得点、1.8スティールと調子を上げている。

経験という面で言えば、キャリアも長く優勝も成し遂げた岸本が1枚も2枚も上だ。しかし、CSでの中村の活躍には目を見張るものがあり、彼も立派なリーグ上位の司令塔と見るべきだろう。岸本が先輩の意地を見せるか、後輩・中村がこの勢いでマッチアップを制するのか。試合前後のお互いの交流なども含めて注目してみたい。

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以上、4つのポイントを挙げたが、ほかにも広島・寺嶋と琉球・荒川颯は洛南高時代の同期であり、もし寺嶋が会場に来られる可能性があるのならば、エモーショナルな瞬間が生まれれるかもしれない。広島のアイザイア・マーフィーは自身のルーツである沖縄のクラブとのファイナルだ。また、引退を表明している朝山は自身のキャリア最後の2試合、あるいは3試合を生まれ故郷の横浜市で戦うことになる。ファイナル初戦まであと3日。今季の集大成を会場や配信でぜひ楽しもう!

【生中継】
GAME1…5/25(土)12:00〜:NHK BS/日本テレビ系
GAME2…5/26(日)13:10〜:NHK総合
GAME3…5/28(火)19:05〜:NHK BS

【ライブ配信】
・バスケットLIVE(見逃し配信あり)
・J SPORTS(※)
・J SPORTSオンデマンド
・Hulu
・Amazon Prime Videoチャンネル
※一部試合が録画放送となる可能性あり

写真/©︎B.LEAGUE、文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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