月刊バスケットボール12月号

NBA

2024.05.14

1980年代のサンアントニオ・スパーズを支えたレジェンド、ジョニー・モア インタビュー

1980年代のサンアントニオ・スパーズで活躍した選手を何人くらい思い浮かべられるだろうか? 例えば、ジョージ・ガービンやアーティス・ギルモアは当時スパーズで大暴れして殿堂入りも果たしているエリートだ。しかしその一人として、ジョニー・モアもまた忘れてはいけない存在だ。彼の背番号「00」は1998320日に永久欠番となり、スパーズからその功績が称えられている。


今もなおコーチとしてバスケットボールに携わっているモアに、80年代のスパーズやルーキー時代のデビッド・ロビンソンについて話を聞いてみた。
取材日: 2024年3月29日


独占インタビュー当日のジョニー・モア(左はインタビュアーの小谷太郎氏、写真提供も)





1980年代もスパーズの雰囲気は特別だった

——今日はお時間ありがとうございます。まずは現在何をされているのか教えてください。

今のメインフォーカスは小学校で特別支援教育の教師をしていることです。この仕事に就いてから10年ほど経ちます。生徒たちが、しっかりと教育面で基礎を確立させて生産的で豊かな人生を送れるよう支援をしています。

——1980年代の現役選手時代について聞きたいことが多々あります。まず当時のサンアントニオのファンは今同様に熱狂的だったのでしょうか? 過去の映像を見ると、ヘミスフェア・アリーナ(1973年から1993年までのスパーズのホームアリーナ)のファンはとても熱意のこもった声援を送っていたように見えます。僕自身もスパーズファンになったきかっけの一つがヘミスフェア・アリーナで応援するファンの熱狂的な姿でした。

ヘミスフェア・アリーナは特別な場所でした。ベースライン・バムス(Baseline Bums=当時ベースライン際の一画に陣取っていたスパーズ公式応援団で、)が先頭に立って我々をサポートしてくれて、対戦チームは彼らとも戦わないといけなかった。少し小さ目のアリーナだったこともあって、ファンとの距離感も近かったです。

ロッカールームからコートに出ていくと、すぐそばにファンがいて、ファンの人たちとの接し方も学ぶ必要がありました。ファンは誰もがチームにとても感謝してくれていた半面、試合に負けると気分を損なう人たちもいました。もしかしたら賭けをしていた人もいたのかもしれないですね。そのため気を付けなければいけない点もありましたが、彼らとの間にできた関係は特別でした。

——スパーズの印象というと1990年代以降の5回の優勝がどうしても先行しがちですが、80年代初期にはとても強かったシーズンが何度もありました。1980-81年はレギュラーシーズン52勝、81-82年は48勝、82-83年は53勝してカンファレンスファイナルまで進出しています。

カリーム・アブドゥル=ジャバー(当時ロサンゼルス・レイカーズ)やモーゼス・マローン(1980年代前半はヒューストン・ロケッツ、フィラデルフィア・セブンティシクサーズに所属)のようなタフなライバルがいましたが、我々は常に競い合っていました。リーグ全体でもチームの実力が拮抗していた中で、我々もとても強いチームでしたね。カンファレンスファイナルを突破することはできませんでしたが、たくさんの試合に勝ちました。

優勝となると様々なことがうまくはまる必要があります。まずは良いチームであること。コーチは指示を出してくれますが、最終的にはゲームは選手ものですから。そのため選手同士密接な信頼関係を築き、ケガをしないことが大事です。あとは多少の運も重要です。1本のシュートが入るか、外れるかで勝敗が決まることもあります。

とにかくファンは最高でした。我々との距離感が近く、皆大声援を送ってくれていたので、彼らはシックスマンのような存在だったんです。おかげでとても特別な時間を過ごすことができました。

——1983年のプレーオフでの個人スタッツを拝見したのですが、11試合で平均22.5得点、14.6アシスト、2.5スティールでした。いつの時代でもプレーオフの大舞台でこれだけの数字をただき出すのは大物ばかりです。カンファレンスファイナルではマジック・ジョンソンやジャバーの“ショータイム”レイカーズと対戦しています。

まず言わせて欲しいのが、レイカーズにはジャバーがいたということです(笑)つい最近レブロン・ジェームス(現レイカーズ)が歴代最多得点記録を破るまで、長い期間ずっとそれを持っていた選手ですよね。レイカーズには、先ほど話した優勝するのに必要なことがそろっていました。

彼らはサンアントニオで試合をするときは、いつも以上に気を引き締めて真剣勝負に向かうんだという意識を持っていたので、僕自身もレイカーズとの対戦はとても楽しめました。プレーオフになると皆自身のゲームのレベルを上げなければなりません。レギュラーシーズンに何を達成できたかは関係なく、全員により質の高いプレー、より密な信頼関係が求められます。スパーズもそれができていたので、高いレベルで競うことができたと感じています。





小谷太郎/月刊バスケットボールWEB

タグ: サンアントニオ・スパーズ

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