月刊バスケットボール8月号

Bリーグ

2024.05.12

勝ち切った越谷アルファーズ、戦い抜いたアルティーリ千葉――B2プレーオフGAME1、OT残り3.3秒の珍事がシリーズにおよぼす影響やいかに

511日に千葉ポートアリーナで行われたアルティーリ千葉と越谷アルファーズのB2プレーオフセミファイナルGAME1は、アウェイの越谷がオーバータイムの激闘を97-93で制して先勝、念願のB1昇格とファイナル進出に王手をかけた。越谷は12日(日)に行われるGAME2に勝利できれば、初めてB1の舞台に立つことが決まる。一方のA千葉はあとがなくなったが、逆転2連勝の可能性も十分感じさせる内容の濃い戦いを披露していた。


ティップオフから終始緊迫した展開が続いたこの一戦は、両チームのスタイルが強く打ち出され、それを打ち消しあう好ゲーム。リバウンドとフィジカルなプレーでお互いがお互いを削り合う。

越谷は、3Pショット7本中5本を決めての33得点に5アシストを記録した松山駿の爆発力と、多彩なオフェンスで18得点を挙げたLJ・ピーク、ゴール下で支配的な存在感を見せ18得点、14リバウンドのダブルダブルを記録したアイザック・バッツらの活躍で波に乗った。A千葉も、最大の得点源であるブランドン・アシュリーが、試合をオーバータイムに持ち込む同点レイアップを含む19得点と12リバウンドでけん引。出場した10人中9人が得点を記録し、木田貴明、前田怜雄、杉本慶、デレク・パードン(それぞれ13得点)、そしてキャプテン大塚裕土(10得点)と6人が2桁に乗せる重厚なオフェンス力で対抗。クラブ史上3位となる、チケット完売の5924人という大観衆が集まった千葉ポートアリーナは、両チームの激闘に大いに沸いた。


松山駿は越谷アルファーズの歴史に名を遺すような大活躍を披露した(写真/©B.LEAGUE)






オーバータイムで一度は91-88と3点リードを広げる豪快なダンクなど、アルティーリ千葉のブランドン・アシュリーも獅子奮迅の活躍だった(写真/©B.LEAGUE)

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時間を超える戦いの行方は、最後の最後、オーバータイムの残り0秒を迎えるまでわからなかった。より正確には、いったんオーバータイムのゲームクロックが0秒となった後も、戦いは続いたのだ。非常に珍しいケースで、短期決戦のシリーズに影響を及ぼす可能性もありそうなので、一連の流れを追いかけてみたい。

一度は試合終了、しかしその約20分後に残り3.3秒からやり直し

状況としてはオーバータイムの終盤で、松山のクラッチフリースローで越谷が97-93とリードしていた。越谷はさらに、小寺ハミルトンゲイリーがフリースローを獲得し、勝負を決める瞬間が訪れたかに思えた。

事の起点はそれが2本ともミスとなったところからだ。ボールがリムにはじかれて、A千葉ベンチ前にころがった。それを追いかけた杉本慶は、時計を進めないためにフロントコートの様子を把握するまでボールに触れずにいたが、ここで時計が誤作動。杉本がボールをつかんでドリブルし始めた途端にゲームオーバーのブザーが鳴ってしまった。

フリースローのミスショットは、本来ならば時計が動き出すのはプレーヤーがボールに触れてから。しかしこのときは、リムにはじかれた時点(もしくはその直後)から動いてしまったようだ。

この記事は、オフィシャルの運営やレフェリーの判断を非難する意図は全くないことをご理解いただきたい。大事なのは、非常に緊迫した短期決戦のプレーオフでは、すべての人があらゆる努力をしても、思わぬことが起こりうるということを認識することだ。その出来事が起こった時に、どんな姿勢でそれを受け入れるかが、シリーズの流れに影響するかもしれない。

A千葉のアンドレ・レマニスHCは、時間管理が正しく行われないまま試合終了となったことに異論を唱えた。

越谷側は早々にロッカールームに戻り、安齋竜三HCと松山は勝利者インタビューに対応していた。A千葉側のプレーヤーたちも、一度は来場者へのあいさつのためにコート上に整列した。来場者も相当な人数がすでに出入り口ゲートに動いた後。しかし、それでもざっと見た感覚では半数程度の人々がアリーナに残り、どのような結末になるかを見守っていたと思われる。

レマニスHCはテーブルオフィシャルに自身の見方を主張し続けていた。最終的にレフェリー陣はゲーム・ディレクターとの協議に入り、さらにはリーグオフィスにも連絡を取ってどのように対応すべきかの確認作業を始めることとなる。レマニスHCは、いったん整列したA千葉のプレーヤーたちをフロントコート側に集め、作戦版を持って指示をし始めていた。そうしているうちに、状況に気づいた越谷側が再びベンチに戻る様子を見て、場内は騒然。どうやらまだ勝負はついていなかったようだ。

結論としては、レフェリーのビデオ判定も経た後で、杉本が最初にボールをつかんだ付近のサイドライン外から、A千葉のインバウンドで試合再開。スコアボードには改めて、残り時間3.3秒の数字がともった。最初の「試合終了」の瞬間から20分近くが過ぎた後、一度は終わったかと思ったGAME1が再び動き出す。

レフティーのパードンが、ハイポストに陣取るリュウ チュアンシンめがけてロングパスを放ったが、ジャスティン・ハーパーがそれをインターセプト。ついに万事休すか。しかしそれも違った。リュウがハーパーからボールを奪い、最後にジャンプショットをミスした時点まで、試合も千葉ポートアリーナも生きていた。


越谷はアルファメイトとの一体感も感じさせながら勝ち切った(写真/©B.LEAGUE)

「どうせ最後のリュウのジャンプショットでは結果は動かない」と思うことなかれ。仮にリュウへのパスが通っていた場合、バックコートからB2ベスト3P成功率賞を獲得した大塚がフロントコートにかけこみ、ファウルを受けながら1本決めるという離れ業を狙える状態にあった。それができれば2度目のオーバータイム。試合が再開した時点では、まだあらゆる可能性が残されていたのだ。

この日の最後の3.3秒に似たような出来事は、両チームがレギュラーシーズンの最後に戦った414日の一戦で、逆の立場で起こっていた。あの試合では、第4Q残り11秒に杉本が決定的な3Pショットを決めて83-794点差とした後、越谷の最後のオフェンスが不発に終わったが、杉本がつかんだリバウンドを残り2秒でピークがスティールし、ワイドオープンで3Pショットを放っていた。もし慌ててピークにファウルを犯し、かつピークが放った3Pショットが決まっていたら…。

どちらも、A千葉と越谷が最後の最後まで戦い、自分たちを信じることを徹底しているからこその出来事だろう。

試合後、この日2度目の勝利者インタビューに応じた越谷の安齋HCは、「こうしてすっきり終わった方がいいです」と笑顔。A千葉のレマニスHCは、「最後まで何が起きるかわからないのがバスケットボール。だからこそ絶対に諦めずに最後の最後の1秒まで戦い抜くつもりでした。最後の3.3秒、何かを起こすは可能だったと思いますよ」と話している。


GAME1では文字通り最後の最後の最後まで戦い抜いたA千葉。GAME2は運命を切り開くビッグゲームとなる(写真/©B.LEAGUE)

両指揮官が流れを自チームに引き留め、引き寄せようと戦っている心情が、こうしたコメントからも伝わる。試合終了のブザーを聞いてからも、両チームの戦いが続いている。最後まで勝ち切った自信が、最後まで戦い抜いた自信が、次の試合でどのように表現されるだろうか。

昨シーズンは両チームがB2のシーズン最高成績を最後まで争う好成績を残していたが、プレーオフではA千葉がセミファイナル、越谷はクォーターファイナルのシリーズを、どちらも初戦で敗れた後12敗で落としている。

短期決戦の怖さを身に染みて知っている両チーム。まだどちらかが何かを成し遂げたわけではない。何かが失われたわけでもない。まだまだ「今」が大事。GAME2は千葉ポートアリーナで、12日午後3時にティップオフを迎える。

アルティーリ千葉対越谷アルファーズGAME2ページ(Bリーグ公式サイト)





文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB)

タグ: 越谷アルファーズ B2プレーオフアルティーリ千葉

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