B2プレーオフ 越谷アルファーズ対熊本ヴォルターズの見どころ――「貫く」のはどちらか?
越谷アルファーズの得点源LJピークは、かつて熊本ヴォルターズに在籍して1試合52得点をきろくしたことがある(©B.LEAGUE)
5月3日(金・祝)に開幕する日本生命 B2 PLAYOFFS 2023-24のクォーターファイナル、越谷アルファーズ対熊本ヴォルターズの見どころをまとめる。両チームは今シーズン中の成績が近く(越谷は35勝25敗、熊本が33勝27敗)、直接対決も2勝2敗のタイ。どちらもホームで2勝ずつしているので、ホームコートアドバンテージを持つ越谷が有利という見方はできるものの、4つのクォーターファイナルの中でも最大の激戦が予想できる組み合わせとも言える。
一貫性を体現できるかどうかが勝利のカギ
安齋竜三HC就任とともにチームの改造に取り組んできた今シーズンの越谷アルファーズは、自分たちがそれに取り組んできた事実を振り返ることが重要だ。安齋HCはシーズンを通じて、一貫性の欠如をたびたび言葉にしてきた。しかし、わずか2年前にワイルドカードからB1制覇を成し遂げた指揮官の下で、選手たちが60試合戦い続け、リーグ最少の75.5失点で東地区2位の成績を残せたことには理由がある。最後の2節で、アルティーリ千葉と滋賀レイクスを相手にまたとない「期末テスト」も済ませた。アウェイで戦った東地区優勝のアルティーリ千葉戦は、2試合とも敗れたもののどちらも4点差の大熱戦。西地区優勝の滋賀からは、最終戦で白星をもぎ取った。最高のタイミングで自信を深められたはずだ。
一方の熊本は、もう少し以前の経過まで振り返る必要があるかもしれない。跳ね返され、跳ね返され、跳ね返され。跳ね返されて今がある。プレーオフ進出5度目の熊本ヴォルターズが、今回向き合う挑戦の本質はそれだ。3年連続のプレーオフ進出。3度目の正直で、是が非でも異なる結果をつかみたいという決意に燃えている。
それでは今年はどうかというと、レギュラーシーズン終盤の成績——故障離脱の続出で最後の11試合が8連敗を含む1勝10敗——からは不安を膨らませるブースターが多くなるかもしれない。また、熊本が今シーズンアウェイで11勝19敗と分が悪く、越谷に敗れた2試合がどちらも失点90超え、得点70未満の大敗(昨年11月11日と12日でGAME1が67-90、GAME2が59-95)だったというのも、ネガティブな印象を強めるデータなのは間違いない。
ただし熊本は、自身のホームで越谷から117得点を奪って勝っている(昨年12月16日に117-111で勝ち、翌日も84-74で勝利)。OTがあったとはいえ、これは越谷にとって今シーズン最多失点であり、レギュレーションの4クォーターでの98失点もシーズン全体で2番目に多い数字。かつ、「勝ち切る」ことを通年のテーマにしてきた越谷相手に、逆に粘り勝ちした意義は決して小さくないだろう。問題はそれと同じことを、苦手のアウェイでできるかどうか。熊本側も、一貫性を問われているということだ。
熊本のロングレンジゲーム vs. 越谷のリーグ最強ディフェンス
越谷は攻守両面でのフィジカル面の強さや機動力、ショットメイクなど、様々な側面で他チームにない強みを持っている。喜多川修平、菊地祥平というB1王座経験者がいて、身長206cm、体重130kgの小寺ハミルトンゲイリー(帰化枠)を含むスリービッグのラインナップがあり、かつ身長201cmで3Pショットを武器とする日本代表フォワードの井上宗一郎という「飛び道具」も使える。
シーズンフィナーレでベテランガードの二ノ宮康平が戦列復帰を果たしたことは、非常に大きな価値をもたらしそうだ。司令塔のポジションでベテランらしく統率力を発揮してくれる存在は、緊迫した舞台でのプレーに一貫性を持たせ、40分間、80分間徹底し続ける助けになるに違いないからだ。クォーターファイナルを迎えるにあたり、越谷はようやく、今シーズンの理想とするラインナップを組めるのかもしれない。バックコートがより充実することで、平均18.0得点(リーグ5位)を記録したジャスティン・ハーパーや17.5得点(同8位)のLJピークら得点源も活躍しやすくなる。
これに対して、熊本にとっての朗報は、終盤戦のどん底からバイウイークを経てのプレーオフを、心身のコンディションから何からまったく違う状況で迎えられるということだ。クォーターファイナル直前の練習では、最終節もプレーできなかったジャメール・マクリーンや同節でようやく復帰を果たした得点源のテレンス・ウッドベリーらも汗を流している姿が、地元メディアを通じて伝えられている。
得点力だけでなく全般的なスマートさを感じさせるプレーが持ち味のアーロン・ホワイト(写真左[右は井上宗一郎]/©B.LEAGUE)
平均19.7得点と10.7リバウンドがリーグ3位、1.4スティールも同6位とチームで最も安定した活躍を披露したアーロン・ホワイトがこれまでどおりの貢献をもたらし、ウッドベリー、マクリーン、山本翔太らが一貫性を体現するパフォーマンスを披露できるとすれば心強い。特に、越谷が3Pショットを武器とするチームにあまり分が良くなかったこと(アテンプト数1位の山形ワイヴァンズ、3位のライジングゼファー福岡と4位の熊本に対し越谷はいずれも五分の星)を思えば、熊本がそれをレギュラーシーズンの33.4%よりレベルアップした高確率で炸裂させるようだと勝負の行方はまったくわからなくなる。
3Pショットでディフェンスを広げて、インサイドが空けばペイントアタックから状況の打開を狙う熊本。インサイドのディフェンスを絞りつつ、ウイングプレーヤーの奮闘で相手のロングレンジゲームも困難にする越谷。そう単純には割り切れないものの、こうした側面がどんなバランスで体現され、互いにどんな対抗策で臨むのか。いずれにしても、一貫性をコート上で少しでも長く表現できた方が勝つ。そんなシリーズではないだろうか。
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