月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2024.05.03

B2プレーオフ 滋賀レイクス対青森ワッツの見どころ——最終盤の勢いがシリーズにもたらす影響

53日(金・祝)に開幕する日本生命B2 PLAYOFFS2023-24のクォーターファイナル、滋賀レイクス対青森ワッツの見どころをまとめる。B1から降格してきて今シーズンを戦った滋賀は、昨シーズンの悔しさを西地区優勝という結果に結実させた。一方の青森ワッツは、シーズン半ばのコーチ交代劇に続いて経営難が明るみに出るなど大荒れのシーズンを過ごした挙句、ワイルドカード上位でプレーオフ進出に至っている。順当にいけばホームコート・アドバンテージを持つ滋賀が圧倒的優位かもしれないが、勝負ごとに絶対はない。どんな戦いが待っているだろうか。



滋賀レイクスに所属する日本代表ビッグマン、川真田紘也(写真/©B.LEAGUE)


シーズン後半戦の青森の成績は当てにできない

滋賀はレギュラーシーズンの最後の10試合を8勝2敗という好成績で乗り切った。結果として西地区優勝を果たし、セミファイナルまでの試合は(シード順どおり順当に勝ち進んでいれば)ホーム開催で戦うことができる。ホームでの戦績はアルティーリ千葉に次ぐリーグ2位の246敗。ホーム開催試合での平均入場者数3000人越えの目標も達成しており、あとは力強いブースターの声援を受けながらクォーターファイナルを勝ち切り、さらにB1昇格まで勝ち切れるかどうか。それが相当高い可能性で起こりそうだということを、レギュラーシーズンの成績が示している。

一方の青森は、316日のA千葉戦以降の13試合を310敗としてレギュラーシーズンを終えた。その間に東地区3位からワイルドカード枠に順位を落とし、クォーターファイナルの相手が西地区王者の滋賀となった。普通に考えればこれはマイナス材料でしかない。

ところが今シーズンの青森に限っては、それ以上に大事な経営面の力強い支援獲得という4月に入ってからの朗報に勢いを得ている。「来シーズンもBリーグでプレーできる」。Bリーグのクラブとして当たり前であるべきことが、当たり前ではなかった青森にとって、その時期を乗り越えて臨むプレーオフは格別の喜びを表現する舞台だ。仮に勝ち進んでも、来シーズンのB1ライセンスが交付されていないので昇格はできない。それでも、クォーターファイナルは歓喜の中で迎えられる。なすべきことは、新たに運営母体として名乗りを挙げた株式会社メルコグループ関係者や、小さな支援の積み重ねでクラブを支えたブースターの期待に応えるために全力を尽くすことだけ。ある意味失うものがない青森は、最も怖い存在かもしれない。

実は似た者同士? の両チーム、違いはトランジション・ゲーム

そうした流れや勢いとは別に、両チームのデータを比較してみるとおもしろい傾向がある。勝敗成績ではかなり差があるのに、特にオフェンス面のスタッツでは似ている部分が多いのだ。いくつか並べてみよう(以下、カッコ内はB2の14チーム中における順位)。

得点 滋賀86.32)/85.53
アシスト 滋賀21.82)/21.43
FG成功率 滋賀48.4%(2)/47.9%(3
3P成功率 滋賀33.6%(7)/33.9%(6
ペイントでの得点 滋賀43.42)/青森42.93

滋賀はブロック・モータム(平均20.1得点、3P成功率42.1%)とライアン・クリーナー(16.0得点、3P成功率36.8%)という万能タイプのビッグマンが得点面の1-2パンチ。アジア枠の小兵キーファー・ラベナ(平均12.4得点、5.5アシスト、3P成功率35.4%)や若きビッグガードの湧川颯斗(7.2得点、3P成功率34.1%)らガード陣にも得点力があり、インサイドを主な仕事場とするジャスティン・バーレル(13.9得点、8.3リバウンド)と川真田紘也(5.8得点、3.6リバウンド)がペイントで体を張って彼らのチャンスを広げる。モータムの得点や3P成功率、バーレルのリバウンドは、試合数規定を満たしていないがリーグのトップ10レベル。ラベナはアシストがリーグ5位、3P成功率が10位だ。

ただし青森もオフェンス面ではまったく見劣りしない。ジョーダン・ハミルトンは平均20.8得点がリーグ2位、4.0アシストが10位、3P成功率35.5%が9位。さらには10.4リバウンドが5位、1.6スティールが3位とオールラウンドな貢献ぶりで、さながらリーグMVPレベルの存在感があった。左利きのビッグマン、パトリック・アウダもリーグ4位の平均19.0得点を記録し、ハミルトンとともにチームの1-2パンチとして活躍した。平均12.5得点に7.0リバウンドのイージェイ・モンゴメリーも含めて、両チームの外国籍プレーヤーの威力は甲乙つけがたい。彼らの能力を最大限に引き出しているプレーメイカーの池田祐一は、平均7.9アシストでぶっちぎりのアシスト王。成長著しいウイングの常田耕平はキャリアハイとなる8.5得点、3P成功率37.3%を記録したが、特に2月以降は平均9.9得点で、ほぼ2桁得点を期待できる存在になっていた。



3月17日のアルティーリ千葉戦でキャリアハイを更新する3Pショット5本成功と25得点を記録した常田耕平。昨シーズンのチームメイトでこの日対戦相手だったアレックス・デイビスからも、「アグレッシブに攻めてシュートを決め切っていた。プロキャリアを歩み始めたばかりだった昨シーズンからの成長を見られてとてもうれしい。今後の活躍にも期待しています」と試合後にエールが贈られていた(写真/©B.LEAGUE)

こうみれば、数字や顔ぶれを眺めるだけでは、両チームの違いは見えにくいかもしれない。では何が違うかというと、トランジション・オフェンスと総体的なディフェンスに明確な差があった。





速攻での得点 滋賀16.61)/青森14.25
ターンオーバーからの得点 滋賀17.61)/青森15.37
失点 滋賀79.17)/青森87.513
ディフェンス・レーティング 滋賀104.43)/青森114.210
※失点とディフェンス・レーティングは少ない方からの順位

滋賀は相手のミスから生まれたチャンスを自らの得点につなげることが、青森よりもうまくできていることがわかる。速攻での得点差が2点と聞けば「1ゴール差だけか」とも感じるかもしれない。しかし、ミスに終わるケースやセカンダリー・オフェンスでの得点はここに含まれていないのであり、走られた回数は決まったショットの数倍になる。このインパクトは試合の流れを変えるほど大きい。

滋賀はこのトランジション・オフェンスでリーグトップレベルなのだ。ディフェンス・レーティング(100回の守備機会でどれだけ失点するかの指標)と併せて見れば、しっかり守って相手のミスから走って得点という勝ちパターンが浮かぶ。

これに対して、青森は自身の得点以上の失点がある。この両チームのマッチアップでは、トランジション・ゲームの攻防がカギとなりそうだ。フルコートを走り回る展開なら滋賀が有利と思える。キースタッツはターンオーバー数で、この項目では滋賀の13.8(リーグ12位)に対して青森は12.2(リーグ5位)と少ない。青森がこの部分を強調するような堅実さを発揮して、ハーフコートゲームでしっかり攻め、ライブ・ターンオーバーから速攻で失点を食らう回数を減らせれば、青森の勝機が広がるのではないだろうか。

Bリーグ公式サイトの両チーム対戦情報ページ





文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: B2プレーオフ 青森ワッツ滋賀レイクス

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