月刊バスケットボール10月号

大学

2024.06.12

【第3回WUBS】2度目の来日で初勝利を目指すシドニー大(オーストラリア)


シドニー大の得点源の一人、マイキー・ヨーンの出来は、シドニー大のWUBS初勝利に欠かせない要素だ(写真/©山岡邦彦 月刊バスケットボール)


3WUBSSun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)に2年連続で出場するシドニー大は、昨年の第2WUBSで最も悔しさを味わったチームと言っていいだろう。初戦で初代王者のアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)に50-88で屈した後、5-8位決定戦ではペルバナス・インスティテュート(インドネシア)に56-60で惜敗。最終日の7-8位決定戦でも高麗大に69-84で敗れての8位フィニッシュ。今回彼らにとっては、まずオーストラリア勢として初の勝利を手にすることが大きな目標になる。

勝利に至らなかった理由についての見方は様々だが、昨年はシドニー大(8位)、高麗大(7位)、ペルバナス・インスティテュート(6位)と初来日の3チームが下位を占めたことには何らかの理由もあったかもしれない。シドニー大の場合、母国のリーグ戦(UBL=University Basketball League/次ページ参照)を終えた後のオフ期間でもあり、かつチームとして初めて異国を訪れて参加するWUBSだった。彼らの誰一人として、泣き言は一言も漏らしてはいない。しかし現時点で振り返るには、本来の力を出し切れなかった事情としてそういったことも念頭に置くべきだろう。

問題は第3WUBSでどんな戦いを見せるかということだ。

【関連記事】第2回WUBS最終日の激闘をチェック
WUBS公式Instagramをフォローして最新情報をチェック
第3回WUBSチケットサイトはこちら

指揮官交代で心機一転、ポテンシャルを発揮できれば上位進出も

上記の視点からは、シドニー大がパフォーマンスを高めて日本にやってくるのが必然だ。今年3月に開幕し、現在進行中のUBLでは430日現在62敗で首位に1ゲーム差の4位。ここまでの試合に登録された16人のメンバーには、2年前にリーグ制覇を果たした顔ぶれ、昨年の第2WUBSで来日した主力級が残っている。

さらには、ヘッドコーチが昨年のトム・ガーレップHCからマシュー・ジョンストンHCに交代。チームとして新陳代謝を図り、心機一転2年ぶりの王座奪還に向かっているという状況だ。昨年の来日を含むこれまでの経験が生きる上に、内面的に駆り立てられるべき理由が複数あるのは、チームとして非常に良い状況に違いない。

昨年の大会でパフォーマンス上の問題として浮き彫りになっていたことの一つは、ペリメーターディフェンスで相手シューターに十分なプレッシャーをかけられなかったことだ。3試合で、相手チームに3Pショットを91本打たれ、35本中決められた。“被弾数”としても確率(38.5%)としても厳しい数字だ。

加えてオフェンス面では、自らのロングレンジゲームが不発(3Pショットが85本中14本のみ成功の16.5%)に終わった。インサイドでも、1年生でチーム最長身だった204cmのセンター、キャンベル・グリーンが平均5.2得点、4.8リバウンドなど、フィジカル面の強さをいまひとつ生かしきれなかった。

これらの数字に表れる明確な課題を克服することで、おのずと初勝利が見えてくるわけだが、UBLでのパフォーマンスをそのまま日本で出しきれれば、それは十分可能だろう。

UBL2024シーズンでは、ジョシュ・ペイン(188cm/SG)が平均16.3得点、マイキー・ヨーン(175cm/PG)が平均15.9得点、ミッチ・スミス(194cm/PF)が平均15.5得点で得点面の柱。このほかに、平均13.1得点のマシュー・ウェイチャー(186cm/PG)、平均11.0得点のロビー・ムーア(183cm/SG)という得点分布をみれば、オフェンスではガード陣とシューター陣の活躍が欠かせないチームであるという特徴が見えてくる。


UBL2024でシドニー大をリーディングスコアラーとしてけん引しているのは、シューティングガードのジョシュ・ペインだ。第2回WUBSでは3Pショットが思うように決められず、満足できる結果を残せなかったが、2度目の挑戦はどうか(写真/©山岡邦彦月刊バスケットボール)

2WUBSでの個人成績を振り返ると、チームのトップスコアラーはムーアで平均12.0得点。このほか2桁のアベレージを残したのはウェイチャー(10.3得点)とペイン(10.0得点)の2人だけだった。身体的に強くスピードと突破力があるペインやヨーン(昨年大会は6.3得点)を含め、バックコート陣がペイントアタックからオフェンスを作り、自らの得点機を作るだけでなくチームとして効率よく3Pショットを炸裂させられるかどうか。

ヨーン、スミス、ウェイチャー、ムーアはセミプロリーグのNBL1でもプレーしている。腕を磨く機会にも事欠かない彼らの成長に加えて、今年はキアヌ・ゲーリング(188cm/SG)という新加入のシューターもいる。ゲーリングはまだ出番が少ないが確率的には55.6%9本中4本成功)と申し分なく、シドニー大のロングレンジゲームの力になりそうだ。彼らのポテンシャルが本来どおりに発揮されれば、シドニー大は間違いなく初白星に大きく近づく。

ジョンストンHCはニューサウスウエールズ州(シドニーを含むオーストラリアの東南地域)のU18選抜チームのヘッドコーチを務めた経験もある。ドリブルやシュートよりも人柄を重んじ、生真面目に献身できるかどうかを重視するのが特徴とのこと。もともと教員でもあり、若者たちの心理もよく理解している。昨夏のWUBSでは、内面的なコンディショニングが整い切れなかったことがディフェンス面に現れたとみることもできるが、ジョンストンHCの手腕でインテンシティーが向上することにも期待したいところだ。

柴田 健/月刊バスケットボールWEB

PICK UP

RELATED