月刊バスケットボール8月号

親子で全国に出るのが夢だった…田中さくらが過ごした充実の2日間【全国ミニバス】


親子二人三脚で“夢”の全国での1勝目!


「あの13番の子、めちゃくちゃ上手ですね!」
試合後に宗方ミニバスケットボールクラブ(大分)の田中江コーチにそう声をかけると、「ありがとうございます」と喜び、やや照れながらこう続けた。「…実はあの子、僕の娘なんです」

3月28~31日にかけて、国立代々木競技場第一体育館と第二体育館で開催されている「第55回全国ミニバスケットボール大会」。女子初日の第2試合で岐阜県代表の大垣スポーツ少年団と対戦した宗方は、49-44で接戦を制しうれしい初戦勝利を飾った。

宗方には男女のミニバスチームがあり、男子は全国ミニバス出場歴があるが、女子は今大会が初出場だった。そんなチームの絶対的エースとして活躍したのが、冒頭の「13番の子」である田中さくら。身長は157cmと突出して大きいわけではないが、身体能力の高さとガッチリとした体格、さらには抜群のスキルを持ち合わせ、試合を支配した。



2Qから登場した田中は、自慢のフィジカルを使ったドリブルプッシュからレイアップ、ジャンプシュートなどで多彩にスコアを重ね、1-24と大きなビハインドを背負っていたチームの巻き返しの原動力に。前半を24-25の1点ビハインドで終えると、2点差を追う4Qにも得点を積み重ねていった。

途中、腕を痛めてベンチに下がるアクシデントもあったが、18分の出場で22得点、5リバウンド。アシストこそスタッツではゼロだが、決してワンマンに点を取っていたわけではなく、パスすべき場面では味方にボールを散らし、そのパスも小学生とは思えない強く、鋭いものだった。

田中自身は「森岡ほのかちゃん(日立ハイテク)が好きで、スピードの強弱の付け方がうまいと思っているので、そこを真似しています」と言う。そう言われると、彼女の余裕とどっしりとしたプレーぶりは、どこか森岡のそれに近いようにも感じられる。一方で取材をお願いしたときには「お父さんも一緒に来てよ」と恥ずかしがるそぶりも見せるなど、そこはまだまだ小学生というかわいらしい一面も見せていた。

そんな娘について父・江コーチは「選手としての彼女の一番の強みはハッスルして足を動かし続けるところですね。前を向いて走り続ける、攻め続ける。それが1番の武器だと感じています。本人はドライブが好きみたいですけどね(笑)」と言う。



コートを出れば父と娘の関係だ。バスケのことでも学校のことでも、2人はよくケンカをする。江コーチがシングルファザーであるため、よりコミュニケーションが多いからこそ、起こるケンカだろう。だが、だからこそ確かな絆も生まれている。

強い絆を証明するのが2人の抱いていた“一緒に全国大会に出る”という夢だ。さくらは「昔、お父さんが全国大会に出たこともあって、私も(全国に)行ってみたいと思ってバスケを始めたら、めちゃくちゃ楽しくてハマっちゃいました(笑)。親子2人で全国大会に出るのが夢だったので、めちゃくちゃうれしいです」と満面の笑み。それを江コーチに話すと、娘への感謝と共にこんなエピソードを明かしてくれた。

「あの子は僕の夢を叶えてくれました。実は僕が小学生の頃に宗方ミニバスの選手として、この体育館でプレーしたんです。ウチのチームにとっては男女合わせてもそのとき以来の全国大会。それを叶えてくれて、今日も頑張ってプレーしてくれたので、親としては100点満点です」

親子二人三脚で歩む父・江コーチと娘・さくら。残る2試合は敗れて勝利はこの一つのみだったが、小学生最後の大会は2人にとってかけがえのない思い出になったはずだ。



取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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