月刊バスケットボール1月号

河村勇輝が『アシックス原宿フラッグシップ』でトークショー

「ともに達成したシューズは実家に大切に保管してあります」

3月10日、アシックスジャパンは、アドバイザリースタッフ契約を結ぶ河村勇輝(横浜BC)をゲスト招き、『アシックス原宿フラッグシップ バスケットボールコーナーOPEN記念 河村勇輝が語る“自分とバッシュ“』イベントを開催した。これは、同月16日(土)から期間限定でアシックス原宿フラッグシップにバスケットボールコーナーが新設されることを記念したもので、イベントはOneASICSの会員を対象に3300人を超える応募者の中から抽せんで選ばれた20名の参加者を前に、佐々木クリスさんの司会のもと行われた。



成長期の小学校高学年の頃、踵(かかと)の痛みで大好きなバスケットボールが全力でできなくなってしまったことをきっかけに、バスケットボールシューズについてしっかりと考えるようになったという河村。その当時から今に至るまで、全国優勝など大きな思い出とともにある歴代のシューズは、実家に大切に保管してあるという。「道具であるバスケットボールシューズと一緒に達成したっていう、大きな役割を持っているものだと思うので、本当に大切にしたいなっていう気持ちがあって保管しています」と河村は語る。



そんな河村が参加者、そして一般プレーヤーへのバッシュ選びのアドバイスとして語ったのはサイズに関すること。「同じアシックスの、同じサイズでも、モデルによって違います。しっかりと履いて、自分のフィーリングに合うかどうかを確かめることがすごく大切だと思います」。また、河村自身がシューズを試履きする際のチェックポイントについては、「僕はつま先の部分の感覚を大切にしています。スピードを出したりストップしたりするときに、つま先の部分のサイズが合ってないと痛くなってしまうので。皆さんにも、自分なりの感じ方をまずは大切にしてほしいなと思います」と語った。ちなみに河村の場合、つま先部分に“指が使えるくらいのゆとり”があるのが目安だそうだ。



河村にとってアシックスは、高校時代からサポートを受けているブランド。最新着用モデル『UNPRE ARS LOW 2』の開発に際して河村は、全力でプレーできるという感覚が得られる“フィッティング(履き心地のよさ)”を求めたという。そのうえで、「(アシックスは)僕のバスケットボール人生では本当に欠かせない存在。これから世界に挑戦していくうえでも、ともに挑んでいければ」と思いを語った。

トークイベントの中では、ミニバスから中高生までバスケットボールに励む様々な年代の参加者からの技術やリーダーシップに関する質問、悩みなどに対して、自身の経験を踏まえながら、じっくり時間をかけて丁寧に回答。その中の一つを紹介する。

参加者「小学校2年生からバスケをしているのですが、中学校のときに顧問との相性が悪く、バスケがすごい嫌になった時期がありました。バスケが嫌だなとか、さぼりたいなって思った時期はありましたか?」

河村「そうですね…バスケットボールに付随するいろいろな環境みたいなものが嫌になってしまうっていうことは、やっぱり人それぞれあると思いますし、僕もチームメイトとうまく意見が合わずに委縮してしまうこともありましたし、中学校の頃はキャプテンとして本当にうまくみんなをまとめられずに悔しい思いをしたこともあります。でも、それってバスケットボールというよりも、バスケットボールに付随する何かが嫌いになっているっていうことだと思うので、だからこそバスケットボールは好きでいてほしいなって思います。
人が成長できるときって、本当に自分が苦しいとき、うまくいかないなって思っているときこそ、いちばん成長できているなって感じます。これまでも、本当に苦しい経験があったからこそ今の自分があるなって僕は思っているので、ぜひそれを乗り越えた先を想像しながら毎日を過ごしてもらえればいいかなと思います」



質問者に対して真っ直ぐ向き合いながらそう答える姿に、バスケットボールプレーヤーとしてのみならず、一人の人間としての河村勇輝の真の人間性がにじみ出ていた。

イベントの最後には、河村自ら参加者へ直筆サインを手渡しし、ツーショットの記念撮影。シーズン中のつかの間、河村はコート上とは違ったリラックスした表情でファンとの時間を楽しみ、次なる試合に向けて英気を養った様子。そして参加者も、ふだんはなかなか聞くことのないシューズに対する思いやエピソードを通じて河村の素顔に触れたことで、充実したイベント体験となったようだ。




取材・文/村山純一(月刊バスケットボール編集部) 写真©ASICS

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