月刊バスケットボール6月号

神奈川VANGUARDSが連覇達成、埼玉ライオンズに粘って逆転勝ち【車いすバスケ天皇杯】

昨年王者の神奈川が逆転勝ちで優勝


車いすバスケットボールの日本一を決定する天皇杯(第49回日本車いすバスケットボール選手権大会)が。2月3、4日に東京体育館にて開催された。

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天皇杯に臨んだのは、昨年度優勝の神奈川VANGUARDS(パラ神奈川から名称を変更)を筆頭に、東西第二次予選を勝ち抜いた6チーム(東/埼玉ライオンズ、NO EXCUSE、COOLS、西/伊丹スーパーフェニックス、ワールドバスケットボールクラブ、ライジングゼファーフクオカ)、最終予選を勝ち抜いた1チーム(SAGAMIFORCE)の8チーム。初日の準々決勝、準決勝が行われ、2日目には3位決定戦、決勝戦が行われた。
ベスト4に名を連ねたのは神奈川VANGUARDS、NO EXCUSE、伊丹スーパーフェニックス、埼玉ライオンズ。そして神奈川VANGUARDS、埼玉ライオンズが決勝に進んだ。


伊丹スーパーフェニックスのエース、村上直広



3位決定戦では、終始優位に試合を運んだ伊丹スーパーフェニックスが53-40でNO EXCUSEを退けた。エースの村上直広(4.0)は「準決勝で負けてしまいましたが、最後の試合で勝って帰ることが西日本1位の意地。プライドでもあるので、絶対に勝って3位になろうとチームのみんなに伝えて、チーム一丸となって臨みました」と振り返った。近年の天皇杯では、昨年度が神奈川VANGUARDS、それ以前には宮城MAXの11連覇(大会中止を挟んで)、千葉ホークスが3連覇と東日本勢が優勝を果たし、西日本勢が上位にくることも少なくなっており、そうした中で、伊丹スーパーフェニックスが強化を進めてきた。「僕自身、伊丹でこうした大きな大会で3位になったのは初めてですから、うれしいですね」と笑顔を見せた。

迎えた決勝戦。下馬評では神奈川VANGUARDSが優勢。鳥海連志(2.5)、古澤拓也(3.0)、丸山弘毅(2.5)といった昨年の優勝メンバーに加え、髙柗義伸(4.0)、宮本涼平(1.0)の2人が加わったことで、さらに強力な布陣となったからだ。前述の5選手は1月に行われたアジアオセアニアチャンピオンシップスの日本代表に選出されていることからも、その実力は推し量ることができるだろう。対する埼玉ライオンズは日本代表の赤石竜我(2.5)を中心に、チーム力と選手層の厚さで勝ち上がってきており、安定感は抜群。また、神奈川VANGUARDSとは昨夏にホーム&アウェイの試合を行い、1勝1敗の成績を残している。お互いチーム状況も熟知している同士の対戦でもあった。


埼玉ライオンズは日本代表の赤石竜我らが序盤から得点を重ねた

試合は序盤から赤石、大山伸明(4.5/健常)らを中心に得点を重ねた埼玉ライオンズがリードする展開。神奈川VANGUARDSはシュートがなかなか入らず、波に乗れないまま1Qを終えて9-14と後手に回った。2Qも同様の流れで22-29と差を詰められないが、それでも激しいディフェンスやボールへの執着心を見せ、何とか踏み止まっていた。
後半に入ると、神奈川VANGUARDSが追い上げを見せるが、埼玉ライオンズが突き放す。が、3Q終盤に古澤、髙柗、鳥海が立て続けに得点を決めて35-39とその差を4点まで縮めた。最終Qに入ると、両チームともシュートを決め切れず膠着。試合が動いたのは残り7分。一度ベンチに下がっていた神奈川VANGUARDSの古澤がコートに戻るとすぐに速攻を決めてワンゴール差に詰め寄ると、さらに鳥海からのアシストで髙柗がゴールを決めて39-39と同点に追い付いた。しかし、そこから埼玉ライオンズも大山、北風大雅(4.5)が得点を決めリードは許さない。緊迫した展開の中、残り一分を切ったところで、鳥海のミドルシュートがネットを揺らして44-44と同点。その後、鳥海からのバスを古澤が決めて46-44と神奈川VANGUARDSがついに逆転。粘る埼玉の攻撃をしのぎ47-44で連覇を達成した。


神奈川VANGUARDS・鳥海連志は同点シュートを決めると、アシストで決勝シュートを演出



「うれしい気持ちと、勝つことは難しいなという気持ち」と古澤は試合後にもらす。若い世代の日本代表メンバーがそろい、優勝が当たり前といった評判の中、終始相手にリードを許したゲーム内容はやはり満足のいくものではなかったのだ。鳥海も「不甲斐ない試合でした。けど、何とか勝てて良かったです」と振り返る。昨年の優勝の際に、それまで11連覇を果たしていた宮城MAXのように「勝ち続けるチームになりたい」と話していたが、「あれだけ勝ち続けたチームがあったので、まずは並べるようになりたい」と目標は揺らいでいない。「そのためにも連覇を意識するより、まずは自分たちが成長を続けないと。それが連覇にもつながってくると思うので」と鳥海。「今自分たちができることを一つ一つやっていきたいです」と先を見ている。古澤も「素直に振り返れば、勝ちゲームではなかったです。でもそこで勝てたことで、うちのチームがまた一歩大きな進化を遂げられるのでは」とチームの将来への期待を語った。


MVPを獲得した神奈川VANGUARDSの丸山弘毅

■天皇杯最終順位
優勝 神奈川VANGUARDS
準優勝 埼玉ライオンズ
3位 伊丹スーパーフェニックス
4位 NO EXCUSE

■オールスター5
MVP 丸山弘毅 (神奈川VANGUARDS/2.5)
クラス1 財満いずみ (埼玉ライオンズ/1.0)
クラス2 鳥海連志 (神奈川VANGUARDS/2.5)
クラス3 古澤拓也 (神奈川VANGUARDS/3.0)
クラス4 村上直広 (伊丹スーパーフェニックス/4.0)

■サントリーやってみなはれスピリッツ賞
髙柗義伸(4.0/神奈川VANGUARDS)

■三菱電機 Changes for the Better賞
青山結依(1.0/伊丹スーパーフェニックス)

■試合結果
1回戦A 神奈川VANGUARDS 86-23 SAGAMIFORCE
1回戦B ワールドバスケットボールクラブ 29-52 NO EXCUSE
1回戦C 伊丹スーパーフェニックス 79-43 COOLS
1回戦D ライジングゼファーフクオカ Wheelchair 33-67 埼玉ライオンズ
準決勝A 神奈川VANGUARDS 71-24 NO EXCUSE
準決勝B 伊丹スーパーフェニックス 53-66 埼玉ライオンズ
3・4位決定戦 NO EXCUSE 40-53 伊丹スーパーフェニックス
決勝 神奈川VANGUARDS 47-44 埼玉ライオンズ

( )内数字は障がいの程度による選手の持ち点



文/飯田康二(月刊バスケットボール)

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