月刊バスケットボール6月号

NBA

2024.01.25

急逝したコーチを偲ぶセレモニーをウォリアーズが実施、カーHC「黙祷ではなくデキが天国で聞けるような喝采を送りましょう」

ウォリアーズの選手たちも涙を流す


現地1月24日(日本時間25日)、ゴールデンステイト・ウォリアーズはホームのチェイスセンターでアトランタ・ホークスと対戦。その試合前に急逝したアシスタントコーチ、デヤン・ミロイェヴィッチの功績を称えるセレモニーを行った。ウォリアーズのスティーブ・カーHCが「黙祷を捧げるのではなく、皆さんも一緒にデキと彼の美しい家族を称えましょう。デキが天国で聞けるような喝采を、私たち全員で送りたいと思います」とスピーチの最後に語るとアリーナは温かな拍手に包まれた。

【動画】ウォリアーズが行ったセレモニーを見る

セルビア人コーチ、ミロイェヴィッチは現役時代、201cmのサイズを生かしてパワーフォワードとして活躍。セルビア・モンテネグロ代表として出場した2001年ユーロバスケットでは優勝も経験している。2009年に現役引退すると、2012年からセルビアのメガでヘッドコーチに。8年間の指揮の中ではニコラ・ヨキッチ(ナゲッツ)と共に戦ったこともある。その後、ブドゥチノストを経て2021-22シーズンからウォリアーズのアシスタントコーチに就任。主にインサイドの選手を担当していた。2022年にはセルビア人アシスタントコーチとしては2人目(現ホークス、当時のイゴール・ココスコフACが1人目)となるチャンピオンリングも手にしている。
チーム内では「BRATE」(セルビア語で“兄弟”という意味)という呼び名で親しまれていたミロイェヴィッチが倒れたのは現地1月16日。ソルトレイクシティでのチームディナー中に心臓発作を起こし、病院に搬送されたものの、翌朝に帰らぬ人となった。この悲劇を受けて現地17日のジャズ戦、同20日のマーベリックス戦は中止になっている。



チームは現地1月22日に練習を再開。その際にカーHCは、「NBAに関わってきた中で最も悲しい出来事だ。苦しむ家族の様子を見ることが辛い。何人かの選手は特に彼と親しい関係にあった。(ケボン・)ルーニーはもちろんだし、ダリオ(・シャリッチ)もだ。自身も悲しみにある中でダリオはこの数日間、デキの家族をサポートしてくれている。ルーニーも、ドレイモンド(・グリーン)もだし、みんなが彼と親しかった。彼の人間性に触れたら、親しくならないわけがないんだ」と思いを言葉にしている。

カーHCはまた「(アシスタントコーチの)ロン・アダムスにこれからどうすべきかを相談したんだ。そしたら、選手たちに『彼(ミロイェヴィッチ)が自分たちに望むことは何かを聞くべきだ』と返してくれた。そう考えたら、彼がこう言う姿を思い浮かべたんだよ。笑顔を見せて『お前たち、試合に勝ってこいよ』とね。私が見たビジョンを(みんなで)共有しようと思った。彼はチームが示そうとする精神や価値観を体現していた。競争心が強い我々は勝つためなら何だってやる。そして何があっても人生を楽しむんだ。それが彼の姿で、私たちもそうであり続けるべきだと思ったんだ」と明かした。さらにステフィン・カリーは「波乱に満ちた4日間だった。彼が持っていた精神を受け継ぎながら、前に進む方法を日々見つけようとしていた。本当に大きな損失だよ。長い間、喪失感が残ると思う。その中で試合に没頭しながら前に進んでいくしかない。それでも最初の4日間はバスケをするのも辛かった」と喪失感が大きいと語っている。

本日のホークス戦、ウォーミングアップで、ウォリアーズの選手たちは月曜日の練習でも着用していたという胸に「BRATE」と入った黒のTシャツを着用。さらにセレモニーには「MILOJEVIC」と入ったジャージーを着て臨んだ。黒いTシャツを着たホークスのメンバーと共にサイドラインに一列に並ぶと、モニターにミロイェヴィッチを偲ぶトリビュート・ビデオが流れる。ビデオ内では、同じセルビア人であるラプターズのダーコ・ラヤコビッチHCも“笑顔が印象的だった”と語る動画が紹介されたほか、現役時代に所属していたパルチザンが行ったセレモニーのシーンなども紹介された。

セレモニーの最後、カーHCが一歩前に出てマイクを持つ。「その笑顔は完璧なものでした。彼は常に微笑み、笑顔でいてくれました。今夜、デキがいない中で迎える初めて試合で、このアリーナに来たところから感傷的になっています。私たちはみんなでシャツを着ていて、いつも笑顔を絶やさない彼の写真も掲示されています。まだすべてが生々しく非現実的で、とても感傷的になっています。ここ数日練習をこなしてきましたが、このようなことに備えて話すことは持っていません。できるのは団結してバスケットボールの試合に勝ちにいき、ブラザーを称えるだけです」と語る。そして最後に「笑顔、喜び、笑い、それが常に存在していました。彼は私たちにとって大きな一部であり、魂の一部です。黙祷を捧げるのではなく、皆さんも一緒にデキと彼の美しい家族を称えましょう。デキが天国で聞けるような喝采を、私たち全員で送りたいと思います」と語ると、ミロイェヴィッチ、そしてアリーナにいた家族に向けて温かな拍手が送られた。



セレモニー後、クレイ・トンプソンやドレイモンド・グリーンも大粒の涙を流していた。9日ぶりの試合となったウォリアーズだったが試合は134-112でホークスに勝利。ジョナサン・クミンガはベンチから出場して放った11本すべてのシュートを成功。殿堂入りしているレジェンド選手、クリス・マリンが持っていたノーミスでシュートを成功させるフランチャイズ記録に並ぶ活躍を見せている。






文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

タグ: ゴールデンステイト・ウォリアーズ

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