月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2024.01.07

攻防両面でリーグ最高級の首位アルバルク東京、テーブス海「全員がチームのルールを徹底できている」

Bリーグの2023-24シーズンは昨年末までに各チームが26試合を消化し、今月半ばのオールスター以降は後半戦へと切り替わっていく。第15節を終えた時点でリーグトップに立つのは、共に22勝4敗(勝率84.6%)のアルバルク東京と三遠ネオフェニックスだ。

そのうち、A東京は2024年の1試合目で川崎ブレイブサンダースをホーム・代々木第一体育館に迎えた。試合は序盤から拮抗した展開が続き、川崎は藤井祐眞やロスコ・アレンを起点に得点。序盤でニック・ファジーカスが負傷するアクシデントに見舞われたが、前半を終えて44-44と粘りを見せていた。今季の平均失点が65.7のA東京にとっては決して良い試合展開ではなかった。後半に入っても差は付かず、3Qを終えて68-66とA東京が2点をリードするのみ。

しかし、4Qに入ると流れが一変。ディフェンスでリズムを作ったA東京が開始から11-0のビッグランを作り、その勢いのままに94-79で勝利を収めた。3Q終了時点で、川崎に今季の平均失点以上の得点を献上したことはマイナスだ。しかし、テーブス海が「特に前半はハイスコアになってしまい、後半の出だしも少し悪かったです。でも、そこからチームとしてディフェンスのインテンシティを上げて最終的には勝てたので、内容の良い試合だったと思う」と振り返るように、4Qのみを切り取れば26-13と、攻防でA東京らしいバスケを展開しての勝利だった。


【Jr.ウインターカップ2023-24】特設ページ(日程・出場校&選手名鑑・トーナメント表)

個々の能力とルールの徹底が鉄壁のディフェンスを作る

今季のA東京には絶対的なエースがいるわけではない。しかし、川崎とのゲーム1以前の26試合では、勝利した22試合中18試合で失点が60点台以下。前述した平均失点に加え、100ポゼッションあたりの失点を数値化したディフェンシブレーティング(DEFRTG)でもリーグトップの95.3を記録している。全24クラブの中でDEFRTGが90台なのはA東京と宇都宮ブレックス(97.0)のみだ。

テーブスもディフェンスをチームの最大の武器として挙げており、「本当に全員がチームのルールを徹底できているのを実感しています。1人でもチームのルールを間違えたり、約束を破ってしまったりすると、周りの選手がすぐに声を出して注意できる環境が今のチームにはあります。スカウティングや1対1のディフェンスが強いというのは大前提で、その中でチームのルールを常に守ってプレーできているとのが、ディフェンスの強度と安定感につながっていると思います」と自信を見せる。

この試合でも、それを象徴する場面があった。A東京が10点リードしていた4Q残り2分56秒、川崎のロスコ・アレンにトランジションからダンクを決められた場面で、デイニアス・アドマイティスHCは体全体で怒りを露わにし、すぐさまタイムアウトを請求。このプレーは攻守の切り替えのタイミングで起こったものであり、致し方ないシチュエーションにも思えた。しかし、アドマイティスHCは一連の流れについてこう振り返る。

「リードしていたこともあって、メンタル的に少し緩くなってしまったと思いました。40分間戦いを終えて、しっかりと勝ち切るところまで気を緩ませないのが私の考えです。そこが少し甘くなったのでタイムアウトを取りました。例えば仕事や家の掃除などでも一つ残らず片付けるまでは終わりませんよね。それと同じように、試合でも40分しっかりと戦い終えるということを練習から言い続けているので、それができなかったことに対するタイムアウトでした。川崎はライバルチームですし、明日のゲーム2はどうなるか分からないです。だからこそ、リードがあるときも気を緩ませず、リードをもっと広げるという気持ちでプレーしてほしかったんです」

アドマイティスHCの一喝で目を覚ましたチームは、最終的にはヘッドコーチの期待通り「リードをもっと広げる」形で勝利を手にした。

戦術的な部分に目を向ければ、突き放した4QにA東京はスイッチディフェンスを多用。ピック&ロールを中心に攻めてくる川崎に対して持ち前のサイズを生かしながら素早くローテーションし、タフショットを打たせ続けた。そこで起点となっていたのがライアン・ロシターだ。ゴール下のアンカーとして君臨するのはアルトゥーラス・グダイティスやセバスチャン・サイズだが、ディフェンスの司令塔となるのがロシター。自らのマークマンにしっかりとマッチアップしながら、味方にもスクリーンやスイッチのタイミングを的確に指示し、ギャップを作らせなかった。

サイズはロシターの存在について、「ライアンはポジショニングにすごく厳しくて、コーチと同じような考え方をしています。それが僕たちにも指示のリマインドという形で伝わるので、彼のリーダーシップは僕にとってもプラスに働いています」と言う。

ロシター個人のディフェンシブレーティングは驚異の88.2。この数字からも彼がディフェンスに与えているインパクトがどれだけ大きいかが分かるだろう。


攻防それぞれの中核を担うメインデルとロシター

豊富なオプションとパッシングが武器のオフェンス

では、反対にオフェンスサイドに目を向けてみよう。A東京のオフェンスの最大の武器は多くの起点を持っていることだ。インサイドではこの日28得点を記録したサイズをはじめ、ロシターやグダイティスが効率よく得点し、ウィングには安藤周人やザック バランスキーら優秀なシューターが待ち構える。さらにはテーブスや小酒部泰暉、レオナルド・メインデルというリーグ有数のショットクリエイターが個人技で得点を奪うこともでき、テーブスの言葉を借りるのなら「誰が20得点しても不思議ではなく、毎試合日替わりヒーローが誕生する」状況だ。

これらのタレントに加えてロシターがポイントセンターのように潤滑油として立ち回り、川崎戦ではシーズンハイの8アシスト。「オフェンスの柱はライアンだと思っているので、彼が起点になってくれることにはめちゃくちゃ助かっています。ピックを使って、ちょっとしたズレを作ってライアンにボールを入れるだけで、そこからもう一つの判断ができます。2段階で攻め手を判断できるというのは相手からしたら嫌なことだと思うので」とテーブス。

敵将の佐藤賢次HCもA東京の強みとして「アルバルクさんは相手の弱いところを突いてきて、それがうまくいくと繰り返し同じプレーを使ってきます。そして、そのプレーがうまくいかなるなると次のセットを使ってきて、本当にコントロールに長けていると思います」と語っており、そのゲームコントロールを生み出している要因が、彼らのボールムーブと個々の状況判断だ。

オプションが豊富がゆえに「誰を使っていくのかが逆に難しい」とテーブスは笑うが、平均16.1得点のサイズをはじめ、7人が平均5.0得点以上を挙げており平均FG試投数もサイズの10.3本が最高値。平均アシスト数も19.3本のリーグ5位で、川崎とのゲーム1でも22本を記録している。

もちろん、メインデルを中心に個人技での打開が求められる場面でのショットクリエーション能力も高いため、一度流れをつかまれると止めようがない。100ポゼッションあたりの平均得点を示すオフェンシブレーティング(OFFRTG)は第15節終了時点でリーグ3位の116.9。OFFRTGからDEFRTGを引いた差は+21.6とリーグで唯一+20を超えており、2位の三遠(16.5)を大きく上回るダントツの数値。スタッツにも表れる攻防両サイドでの安定感がリーグ首位を走る理由である。

本日の川崎とのゲーム2でも、このバスケットを体現できるか。注目したい。



写真/©︎B.LEAGUE、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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