月刊バスケットボール6月号

Wリーグ

2024.01.04

デンソー木村亜美インタビュー“皇后杯初優勝に導いたヒロイン”

皇后杯決勝ではチーム2位の16得点をマーク


2023年12月17日、皇后杯・決勝で前年の女王であるENEOSを89-56の大差で破って見事初優勝を飾ったデンソー アイリス。その試合で3Pシュート4本を含む16得点を挙げて大活躍したのが木村亜美。大会ベスト5にも初選出された。そこで、Wリーグが再開した12月22日の東京羽田ヴィッキーズ戦後に直撃インタビュー。

木村は東京医療保健大学4年生の時に、主将としてチームを優勝(インカレ2021)へと導き、その後、2022年1月にアーリーエントリーでデンソーに入団。同年4月に正式に加入し、翌シーズンの2022-23シーズンからは、それまでデンソーを引っ張っていた稲井桃子の跡を受け継ぎ、ルーキーながらチームの司令塔としてスターターに抜擢。そして全試合に出場するなど、秘めたるポテンシャルを見せた。2年目となる今シーズンは皇后杯を制覇し、日本一の称号を手にした。次はWリーグチャンピオンの座を狙っている。

【写真】皇后杯優勝を伝える木村選手の投稿を見る


――今日(12月22日)は皇后杯が終わった直後の試合でしたが、どんな思いで臨みましたか?

「皇后杯が終わって最初の試合でしたから、やっぱり大事な試合でしたし、ここからまたリーグ戦が再開するにあたって、Wリーグ優勝に向けてチーム全員がやるやるべきことを40分間集中して頑張っていこうと思っていました。それが今日の試合は最初からできたのかなとは思います。特に優勝したあとすぐの試合に気持ちをどう持っていくのかというのは個人的には初めてだったので、それはいい経験ができていると感じました」

――木村選手は、折尾中、東京成徳大高、東京医療保健大とバスケットボールの名門を歩んできましたが、デンソーに入って今シーズンで2年目、選手としてご自身のどういうところが成長していると感じますか?

「Wリーグには経験をたくさん積んでいる方たちが多いし、自分的にも尊敬している選手、うまいなあと思う選手がたくさんいる中でプレーをすることによって自分の成長につながっています。特にメンタル面がすごく成長できたと思っています。それは周りの選手の方や、スタッフの方が支えてくれて成長できている部分もありますし、自分的にも気持ちの切り替えはすごく大事ですから、そういう面では成長できているのかなと…」



――皇后杯の決勝ではENEOSのガード、宮崎早織選手とのマッチアップでしたが、” 気持ちの面で負けないぞ”という気持ちがあったのではないですか。

「チャレンジする気持ちで臨みました。やはり受け身になると相手の方がうまいので、どんどんやられて自分が落ちてしまうので、最初からこういう選手だっていうふうには気にしないように、常にチャレンジするという気持ちを持って、コートに入ろうと思っていました。ですから、何かを仕掛けるというよりは、相手がディフェンスで強くプレッシャーをかけてくるからこそ、そこで怖いと思うのではなく、チャレンジするというか胸を借りるというか、そういうメンタルでやろうと思っていました」

――決勝では3Pシュートも4本決めましたし、スコアも髙田真希選手に次ぐ16得点でした。シュートの感覚はいい日だったんですか?

「そうですね。すごく、なんか自分でもいいなという風には感じていました。やっぱりそれは周りの選手がどんどん攻めて、点を取ってくれるからこそ自分にもチャンスが回ってきていると思うので、空いたら積極的に打とうというのは思っていました」

――そのあと、皆さんで祝勝会みたいなものはしましたか?

「はい、みんなでワーッて(笑) みんなでご飯食べて、本当によく頑張ったね、やったねっていうふうに内輪で(笑)」


皇后杯初優勝に貢献(写真:月刊バスケットボール)

ベテランの先輩たちから得られるもの


――ところで、周りにベテランの髙田選手、馬瓜エブリン選手、本川紗奈生選手などいますが、まず髙田選手についてどう感じますか?

「リツ(髙田)さんは常に練習から周りの選手をよく見てくださって、すぐに声を掛けてくださいますし、チーム内でも悪いときがあったら声を掛けてくれます。尊敬するところが本当に多いですし、学ぶところがたくさんあって本当にリツさんはすごい人なんです。試合ではもちろんすごいプレーをするし、一緒に練習をしていても手を抜かなくて常に全力、本当にすごいです」

――以前のデンソーはどちらかというとおとなしいイメージというか、真面目な雰囲気が感じられました。その中に馬瓜選手のような起爆剤的な人が入ってきて、雰囲気が変わったと思います。その辺についてはどのように感じますか?

「ダン(馬瓜)さんが来て本当に全然違う雰囲気になりました。これまで自分たちがちょっとダメだなっていうときに、落ちてそのままズルズルといくことが多かったんですけど、ダンさんはそういうときに、みんなに『こうやるよ』っていう声を掛けてくれて、それにみんなが引っ張られて、そうするとみんなも『もう一回行くぞ』ってなるんです。ダンさんが入ったからこそもう一段階上のレベルになったと感じます」

――本川選手はいかがですか?

「イチ(本川)さんは私ともポジションが近いので、頼るところはすごく頼りますし、イチさんも、『大丈夫だよ』ってすぐに声を掛けてくださいます。自分が何かイチさんに託したいって思うときに、安心して託すことができます」




課題はコミュニケーション力をつけること


――ところで、ご自身の性格は? 見た目の印象だと真面目という印象もありますが。

「そうですね。あまり“うわーっ”ていうタイプじゃないですし、コミュニケーションを取るのもちょっと苦手で…。あまりしゃべらないわけでもないし、おとなしくもないんですけど(笑) でも、バスケットのときはコミュニケーションをなるべく取ろうと意識はしていますね」

――ガードとしてこれだという自分の持ち味は何ですか? また、今後の目標もお聞きしたいのですが、ガードとしてはどんな選手になりたいですか?

「持ち味はアシストで、仲間を生かすプレーです。今後の課題は、もっとしっかりゲームコントロール力をつけること。チームに必要とされる選手になること。そして、チームの勝利に貢献できる選手になりたいと思います」

――Wリーグも再開されましたが、後半戦をどう戦っていきたいですか? 特に皇后杯で勝利したENEOSとはまだWリーグでは対戦していないですよね (Wリーグでは3月9日、10日に対戦予定) 。

「チームとしては一戦一戦、Wリーグの優勝に向けて成長し続けることが大事です。これからは(皇后杯で優勝したことで)強く当たってくるチームもたくさん出てくると思うので、そういうチームに対して消極的だったり、受け身にならずに自分たちから攻めていくバスケットをしていきたいと思います」

★ヘッドコーチのヴラディーミル・ヴクサノヴィッチ氏からひと言
「競争心、チームをコントロールする能力、シュート力、野心などもあり、非常に勉強熱心ですし、吸収力もすごく評価できます。今はまだ成長段階ですが、すごく賢い選手だと思います。それにすごくボールにプレッシャーをかけるディフェンスもできます。(課題・要望は?)しっかりと地に足をつけて今後も学び続ける姿勢を守って、これからもハードワークを続けてくれればと思っています」





Profile
きむら・あみ◎1999年9月18日生まれ/165㎝/ポイントガード/福岡県出身/折尾中→東京成徳大高→東京医療保健大/2022年1月、アーリーエントリーでデンソー入り、卒業後正式に入団/中学3年次には全中で優勝、高校時代はインターハイ、ウインターカップでベスト8入りし、大学時代はリーグ戦、インカレでチームを優勝に導いた。また、2015年にはU16アジアカップ日本代表として活躍、準優勝に導くなどけん引した。


取材・文/飯塚友子

タグ: 皇后杯 デンソー アイリスWリーグ

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