月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2023】真冬の東京体育館に咲いた大輪のサクラ──桜丘(愛知)


優勝候補をあと一歩まで追い詰める


最終スコア74-82。

優勝候補の一角・東山と対戦した桜丘は、最終盤まで互角の戦いを演じたが、あと一歩届かず2回戦敗退となった。

抜群のドリブルワークが持ち味の#1舘山洸騎をエースに据え、安定感と爆発力のあるコンボガードの#9平寿哉、ディフェンスや3Pなどの裏方として輝く#36橋本岳大、インサイドの要の1人#37服部フェルナンド、そして守護神#7セイ・パプ・マムウルという不動のスターティング5を形成。加えて、控えガードの#32 松井快吏らも思い切りよくプレーし、東山を追い詰めていった。


『ウインターカップ2023』特設ページ(日程・出場校&選手名鑑・トーナメント表)


勝敗を決する上での決定的なターニングポイントがあったわけではない。桜丘の集中力が切れたわけでもない。両チームの点が止まった4Q終盤に少しだけ東山の選手たちの技術が勝ったというような展開だった。

「どこかでジャイアントキリングを起こしたかったです。(3回戦で福岡第一を追い詰めた)インターハイもそうですし、この大会も組み合わせが決まった段階で、どこか一つでもやっつけたいなと思っていたんですけど、私の指導力不足もあって子どもたちに申し訳なかったです」

桜丘の水越悠太コーチはそう肩を落とした。緻密な合わせと個の能力の高さを組み合わせて戦ってくる東山に対して、桜丘は開始から3-2のゾーンで対応。エース#5瀬川琉久には42得点を献上したものの、もう1人の得点源である#13佐藤凪を9得点に留めることに成功するなど、個人技による致し方ない得点以外は全体としてはプラン通りの試合運びだった。


#1舘山洸騎

それでも舘山が「組み合わせが発表されたときから東山戦が一番大きい山になると思っていて、そこに向けてビデオを何回も見て対策してきたんですけど、それ以上に東山のシュート確率や個人の能力があって…すごいなと思いました」と言うように、苦しい場面では瀬川の3Pやジャンパー、勝負どころでは#4佐藤友のバスケットカウントや佐藤凪の3Pなど、東山は随所に個の力を示してきた。

またしてもジャイアントキリングは幻に終わった──しかし、夏に続き優勝候補を追い詰めた実力は誰もが認めるところだろう。だからこそ、選手たちも涙は流さなかったし、この負けを冷静に受け止めている。

舘山は言う。「普段だったら自分の点数やアシストの数を気にするんですけど、今日はそれ以上に勝つことを意識していました。自分の得点よりもチームが勝つためにどうするかを意識して、その中でチームが勝つためにもっと自分が点を決めたり、アシストしてゲームをコントロールする必要があると思いました。僕は一瞬一瞬の判断がまだ鈍いところがあるので、そこは今後のバスケットボール人生においても生かしていきたい」


#9平寿哉

今年は能力の高い選手が集まった。だからこそ、細かな口出しはせずに一定の自由を与え、選手の判断に任せる。水越コーチは選手たちとの信頼関係を構築しながら、最後の試合でも選手たちにプレーの選択を委ねた。

26得点を挙げた舘山も、25得点を挙げた平も、40分間“良い顔”でプレーし続けたのは、選手の意見を取り入れ、共に歩んできた水越コーチの指導があってこそだ。「3年間、熱い仲間とバスケができたり、しっかり評価してくれる先生がいてくれて、桜丘で良かったなと思ってます」と舘山。

結果だけを見ればウインターカップは2回戦敗退だが、その内容はあまりにも濃密で、桜丘の名を人々の脳裏に焼き付けるのには十分すぎるものだった。

コートを駆け回った選手たちは、真冬の東京体育館に大輪のサクラを咲かせた。そして、その散り際もまた、美しかった。


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「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」
(略称:SoftBank ウインターカップ2023 / ソフトバンク ウインターカップ2023)
■開催期日:2023年12月23日(土)~29日(金)
■会場:東京体育館(A,B,C,D,Mコート / 東京都渋谷区千駄ケ谷1-17-1※メイン会場)、武蔵野の森総合スポーツプラザ(E,F,G,Hコート / 東京都調布市西町290-11※サブ会場12月23日のみ)
■出場校:男女各60チーム(計120チーム)


文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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