月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2023】坪井遥生と梅田晄希、“豊浦魂”を燃やした最後の40分間


共に40分間フル出場で豊浦のバスケを体現


試合開始から約6分半が経った時点でスコアは0-13。この間、豊浦は1点も取ることができていなかった。互いに初戦の硬さもあってシュートが入らない序盤だったが、桜丘が#9平寿哉の3Pシュートで先制すると、徐々に得点を伸ばし序盤のリードを作った。


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豊浦のエース#15梅田晄希は「会場の雰囲気にのまれてシュートが入らなくて、それでディフェンスも少し崩れていってなかなか流れに乗れなかった」と序盤の攻防を振り返る。

梅田自身、昨年大会は1回戦で33得点を挙げるなど、チーム内ではウインターカップでの試合経験が豊富な方。それでも3年間の集大成となる今大会では体がこわばった。もう1人の主軸であり、1年時からスタメンを務める#12坪井遥生も「準備してきた対策があったんですけど、それ以上に相手の気持ちに圧倒されてしまって、それが出せなかったです」と振り返っている。

粘りや気迫といった本来、豊浦が強みとしている部分で相手に面食らってしまったのである。

豊浦のエース#15梅田晄希

だが、その流れを断ち切ったのもまた、坪井と梅田の2人だった。ファーストポイントとなったのは坪井の3Pシュート。そして、それに続くように梅田にも本来のアグレッシさが蘇り、坪井は試合トータル12得点、梅田は36得点を記録している。

時間を追うごとに“らしさ”を取り戻していったチームは、最大24点のビハインドから4Qには一時リードを奪う見事なカムバックを見せた。最終的にはあと一歩及ばず、60-68で試合終了のブザーが鳴ったが、後半の戦いぶりは豊浦らしさを十分に体現したものだといえるだろう。

共に40分間フル出場でチームを引っ張った坪井と梅田について枝折康孝コーチは「坪井はすごく一生懸命に頑張る姿勢を出してくれて、梅田は内に秘めた闘志というか、『やっちゃろう』という思いを持ちながら3年間やってきて、それぞれ違った性格を持つ中でかなり成長したと思います。僕は彼らのことを全国でも通用する選手だと思っていますし、彼らの成長にはこちらが感謝するというか。お疲れ様でしたという言葉をかけたいです」と労いの言葉を残している。

脈々と受け継がれる豊浦のバスケットを継承してきた2人。坪井は「小さい頃から今プロで活躍されている中村功平(茨城)さんとか佐々木隆成(三遠)さんを見て、2人に魅了されて、憧れを持って豊浦に入りました」と言い、梅田は「僕は小学1年生の頃に当時6年生だった喜志永修斗(富山)さんと同じミニバスで1年だけ一緒にプレーすることができました。中学でも当時、豊浦でプレーしていた喜志永さんと一緒に練習する機会があって、そこで豊浦で勝っていきたいと思いました」と、それぞれに憧れるOBの背中を追って豊浦の門をたたいた。


梅田と共に1年時からスタメンを務めてきた#12坪井遥生



県立校とあって、限られた環境でバスケットに打ち込む日々。学校生活などの私生活から枝折コーチに指導され、今では選手としてのみならず、人間としても大きく成長できたと胸を張る。

この試合最初の得点は梅田のアシストから坪井が決めた3Pシュート、そして最後の得点は坪井のアシストから梅田が決めたリバースレイアップだった。3年間チームを支えてきた2人が、お互いへのアシストでチームの最初と最後の得点を決め切ったことは、偶然とは思えない。

結果は決して納得できるものではなかったかもしれない。だが、伝統の“豊浦魂”を継承してくれた2人に対して、枝折コーチは以下のように話してくれた。「彼らが1年生の頃に見た3年生の姿のように、これから今の1年生が2年生になったとき、また今の2年生が3年生なった来年に、この経験はつながってくるんじゃないかなと思います」

豊浦の伝統は、今年も確実につながった。


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「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」
(略称:SoftBank ウインターカップ2023 / ソフトバンク ウインターカップ2023)
■開催期日:2023年12月23日(土)~29日(金)
■会場:東京体育館(A,B,C,D,Mコート / 東京都渋谷区千駄ケ谷1-17-1※メイン会場)、武蔵野の森総合スポーツプラザ(E,F,G,Hコート / 東京都調布市西町290-11※サブ会場12月23日のみ)
■出場校:男女各60チーム(計120チーム)



文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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