月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.12.21

東京八王子ビートレインズのタイラー・ガトリンHCは、勝利を目指し、盛り上げ、チケットも売る熱血指揮官

©HachiojiBeeTrains

今シーズンのB3をおもしろくしているチームの一つに東京八王子ビートレインズがある。昨シーズンは1636敗(勝率.308)で16チーム中12位だったが、2023-24シーズンは1218日までの第11節を終えた時点ですでに12勝(10敗)。勝ち越した状態で(勝率.545)、同率の立川ダイスとプレーオフ進出ラインの8位の座を争っている。


その立川をオーバータイムの末に107-103で破った128日、エスフォルタアリーナ八王子で、チームを率いるタイラー・ガトリンHCに話を聞いた。コート上でブースターに向けて感謝を述べ、勢いあまって(?)「次のホームゲーム(1222日の福井ブローウィンズ戦)のチケットを500円引きにします!」と宣言した後、ガトリンHCは明るい笑顔でインタビューに応じてくれた。

勝利の喜びをスペシャルオファーで来場者と分かち合う

——今日は立川とのクロスタウン・ライバル同士の対戦でした。雰囲気をどう感じましたか?

すごかったですね。プレシーズンにもサブアリーナで立川ダイスと対戦したんですが、そのときも、ハーフコートのブザービーターが飛び出してものすごく盛り上がったんですよ。だから9月の頃から立川がどんなチームかをよく見ることができていましたし、シーズンの初めからカレンダーでこの週末に印をつけて楽しみにしてきました。

八王子のブースターはアンビリバボー! こんなに応援してもらえるのかというくらい熱心に応援してくれるので、驚いているくらいです。だから全力でおもしろい試合をして、勝っても負けても皆さんに楽しい気持ちで帰っていただけるように頑張っています。

——クラブの応援歌を聞くと、「立川だけには負けたくねえ」という歌詞が入っていますが、皆さんの気持ちもそんな感じですか?

そのとおり。あの歌はいろんな意味で我々のチームを良く表現していると思います。それに、何しろ東京にはたくさんの強豪チームがありますから、見応えのあるショーをお届けして、やはりその東京地区でも一番プロフェッショナルな、緊迫感が高いチームとしてコートに立ちたいという思いがあります。でも特に立川に関しては実力的にも近くて、どの対戦もプレーオフ進出に向けて負けられないものになりますからね。

——今日の試合はとても見応えがありました。B33P成功率1位の秋山皓太選手には第4Qにパーフェクトで決められましたが、オーバータイムは無得点に封じましたね。

ものすごく競い合った展開の中で、試合が進むにつれて立川がうまくこちらのディフェンスに対応してきました。我々としてはゴール周辺のディフェンスに重点を置いて、ペイントに関してはしっかり守れていたのですが、逆にアウトサイドを少し捨てなければならなかったんです。彼らの3Pショットには非常に苦しい思いをさせられました。

それでも第4Q10分間を集中して戦い切ることができて、オーバータイムに持ち込めたのは幸運でしたね。最後は少しプランを変えて、アウトサイドからの脅威にも対応することができました。

——実際に戦い方を変えていたんですね。

そうです。フィッツジェラルド(NCAAの名門オクラホマ大出身の203cmのビッグマン、アンドリュー・フィッツジェラルド)とボールハンドラーへの対応を変えて、コーナーから簡単に打たせないようにしたんですよ。

——終盤、高橋幸大選手*と大金広弥選手がディフェンスでものすごく頑張っていたと思うのですが、彼らの活躍をどんなふうに評価していますか?
*=高は「はしごだか」)

素晴らしいのは彼らが我々にとってオフェンス面で一番頼りになる二人だという点です。彼らに大事なところで活躍してもらうことが我々にはものすごく大事なことなのですが、ここまでの試合で、彼らにはディフェンス面でももっとできるよねと、背中を押しています。ボールにもっとプレッシャーをかけて、あきらめずに頑張るようにと話しているんです。

序盤戦でも、ヒロヤが価値あるスティールからドライブで得点を決めて勝つということがあったし、このところコウダイもディフェンス面で力を見せ始めています。


オーバータイムでスティールから決勝点となった104点目のレイアップを決める大金広弥

<筆者追記>

この試合は両チームの意地がぶつかり合うような激闘で、特に第4Q終盤は残り5秒に秋山の3Pショットが決まって立川が96-94とリードしたが、残り1秒にTK・エドギが執念の同点ゴールをねじ込んでオーバータイムに突入。最後の5分間も、大事な場面で高橋や大金のタフなディフェンスが立川のターンオーバーを誘った八王子が押し切ったような展開だった。流れの上では、残り38秒に大金がスティールからのカウンターでレイアップを決めて104-101と2Pショットなら2ポゼッション差の状態に開いたことが大きかった。また、残り30秒に秋山のフリースローが2本ともミスに終わったのも大きかったが、これはエスフォルタアリーナ八王子に集まった1,000人越えのブースターの力だったのかもしれない。





12/22・23の福井ブローウィンズ戦は満員の会場で勝ちたい!

——あなたのやりたいバスケットボールはどんなスタイルですか?

今日の試合はいい例で、どれだけ見応えのあるプレーをできるかをしっかり見せてくれたと思います。ディフェンスでは、リバウンドの後でも得点した後でも毎度の機会にプレッシャーをかけて、オフェンスでは高い身体能力とサイズ面の優位を生かしてどんどん攻め上がり、3Pショットを高確率で決めていく。この部分も少しずつ自信を深めてきているところですよ。

チームで最も重要視しているのはコミュニケーションです。それができれば重要な場面のディフェンスでも相手を止められるし、オフェンス面のスペーシングも組織として作り出すことができ、ボールをプレーメイカーの手にゆだねて展開できますから。

——今シーズンのB31勝できるかできないかで立場が大きく変わってしまうような大混戦です。全体像としてどのような展望を持っていますか?

昨シーズンをB1の京都ハンナリーズで過ごして、日本のバスケットボールの質の高さを実感しました。夏場にB3をいろいろと勉強したんですが、これは八王子での仕事は楽ではないなと思っていました。スピードのあるチームばかりだし、ガードのプレーぶりが素晴らしいところばかり。外国籍のプレーヤーたちのサイズも大きいですからね。

だからバランスの良いチームを作ってあらゆるタイプのチームに対抗できなければいけないと思いました。サイズにはサイズで、ペリメーターでのプレーがうまい相手には有能なプレーメイカーで対抗するという具合です。我々には運動能力の高い外国籍プレーヤーがいるし、外国籍プレーヤー二人と帰化枠のジュフ伴馬を同時に投入する“オンスリー”ができるというアドバンテージもあります。昨シーズンから継続契約のメンバーに加え、京都からタカヒロ(小室昂大)も加わりました。彼らは皆、より良いチームになることへの責任を理解しています。

ベテランが多いチームでもあり、毎試合の重要性も理解しています。プレーオフ進出を目指しているので、今日のような試合に勝てたのはとても大きなことでした。


この日17得点のジュフ伴馬はガトリンHCにとって非常に貴重な戦力だ





——コート上でのあいさつで、ブースターに特別割引チケット販売の案内をしていましたね。

いやぁ~! そうなんですよ!(笑)

——チケットセールスがうまい人だとは知りませんでしたが、自分ではご自身をどんな人柄だと思っていますか?楽しい性格?

ええ、間違いありません! やっぱりチームの看板を背負っているわけですから、それにふさわしい人でありたいと思っています。私だけでなくプレーヤーにもコーチングスタッフにも、コミュニティーにおける模範になってほしいとも思いますし。情熱的な八王子のブースターが大事な場面でこんなふうに応援してくれるのは本当にありがたいことですし、お礼の気持ちとしてあんなことをしてみました。

それに次のホームゲームは福井ブローウィンズとのものすごく重要な対戦です。前回福井で対戦したときは非常に苦しめられました。会場を満員にして気持ちを高めてプレーできたら、勝てる可能性が大きくなりますからね!



アメリカ出身のガトリンHCはまだ36歳の若さだが、NBA Gリーグをはじめとしたアメリカのマイナーリーグで豊富なコーチング経験を持っている。昨シーズンは京都ハンナリーズのアシスタントとして、NBAを含む世界的な実績を持つ名将ロイ・ラナHCの下で貴重な知識と経験をさらに上積みした。日本でのキャリア2年目は、蓄えた力と朗らかな人柄で結果を出す節目かもしれない。八王子でそれがどのような形に花咲くか注目だ。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 京都ハンナリーズ 立川ダイス東京八王子ビートレインズ

PICK UP

RELATED