月刊バスケットボール1月号

デンソー、ENEOSを下して悲願の初優勝! MVPは髙田真希が初受賞[皇后杯決勝]

3年連続8回目の挑戦でデンソーがついに頂点へ


「やりました~」試合後の優勝インタビューで髙田真希は声を張り上げた。8度目の挑戦にして初めてENEOSサンフラワーズを破り、皇后杯を獲得したデンソー アイリスの大黒柱。髙田はその8度すべてを経験している唯一のプレーヤーだ。

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ENEOSとデンソーによる女子バスケットボールの頂点を決める皇后杯決勝(12月18日/@国立代々木競技場第二体育館)。3年連続の同カード、そして8回目の顔合わせ。過去7回はすべてENEOSが優勝してきた。デンソー悲願の初優勝を目指し、ENEOSは未踏の11連覇を狙っての戦いとなった。両チームとも準決勝では自チームの持ち味を十分に発揮し決勝に勝ち上がり。昨年のチームと違うのは、デンソーが東京2020の銀メダリストであるインサイドで力を発揮する馬瓜エブリンを補強、一方でENEOSは同じく銀メダリストシューターである林咲希が富士通へ移籍していなくなったことだ。

今シーズンのWリーグにおいて、両チームとも12勝2敗。直接対決はまだなく、得失点差によりデンソーが2位、ENEOS3位。両チームとも富士通、シャンソン化粧品に1敗ずつ、そして、皇后杯準決勝ではレギュラーシーズンで敗れたチーム、ENEOSはシャンソン化粧品を、デンソーは富士通を下しての決勝進出となった。

試合は、渡嘉敷来夢のゴールでENEOSが先制、すかさずデンソーの髙田が決め返し、両チームのエースによる得点によってスタートした。その後、デンソーディフェンスを攻めあぐむENEOSに対し、デンソーは馬瓜、篠原華実らのスコアで着々と加点。髙田が渡嘉敷を抜き去りドライブを決めると16-7、ENEOSはたまらずタイムアウトを請求した。しかし、その後もデンソーは積極的なプレーでENEOSに流れを渡さず、1Qを21-13とリード、先手を取った。


デンソーは髙田、馬瓜、そして篠原華実の得点でスタートダッシュを決めた

2Qも先行するデンソーにENEOSが付いていく展開のなか、ENEOSが渡嘉敷、髙田とデンソーディフェンスを破ってドライブを決める。しかし、デンソーがタイムアウトで流れを切ると、ENEOSは再び我慢の時間が続く。ENEOSの岡本彩也花、星杏璃の3Pシュートが外れる一方、デンソーはセンターの髙田が3Pシュートを沈めて34-22とその差を2ケタに開く。その後もジリジリと差を広げ41-27で前半を折り返した。
後半に入っても髙田が立て続けに3Pシュートを沈めるなどデンソーの勢いは止まらない。次々にシュートを決めるデンソーに、ENEOSはすっかり飲み込まれてしまう。気が付けばその差が30点以上開くという予想外の展開となった。
66-33と大差で迎えた最終Qもデンソーのシュートが入り続ける(試合を通して3Pシュート54.5%、2Pシュート58.8%の成功率)。ENEOSも攻め続けるが、最後まで隙を与えなかったデンソーが89-56で勝利した。3Pシュートを54.5%(12/22)と高確率で決めたデンソー。対するENEOSは19.2%(5/26)にとどまった。



「自分が入って、初めての皇后杯での負けで、責任を感じていますし、悔しいです。11連覇というプレッシャーに自分自身が耐えられなかったんだと思います」とENEOSのキャプテン宮崎早織は声を詰まらせた。
「悔しいです。やはりあれだけ乗らせてしまったら、なかなか追い付けないなと。チームとしてもそうですが、これをマイナスと捉えるのではなく、リーグ戦で取り返せるチャンスはあるので下は向いていないです」と渡嘉敷はリベンジに向けてチームを鼓舞する。


ENEOSのキャプテン宮崎早織

今シーズンからデンソーに加わった馬瓜は「入団会見のときにお伝えしたように、デンソーというチームが優勝したら、ほんとうに日本のバスケット界が変わると。ここから本当におもしろくなると。そのとおり、むちゃむちやいい試合をみんながしてくれました。その一員になれたことがすごくうれしいです」と語る。チームメイトも口々に馬瓜の加入でチームの雰囲気が変わったことを認め、デンソーにとって馬瓜が優勝への最後のピースとなったことは間違いないだろう。しかし、何より皇后杯MVPを獲得した髙田の存在を抜きにデンソーは語れない。


大会MVPに選ばれた髙田(デンソー)

チーム入りして16年の髙田が入団当時、2部制だったWリーグにおいて、入れ替え戦を戦うような、リーグ下位に甘んじているチームだった。そこから一歩ずつリーグの強豪へとチームを引っ張り上げ、何度も頂点をつかみかけたが、その度にENEOSに跳ね返されてきたキャリアだった。
「素直にうれしいです。ようやく勝てました」と髙田。「頑張り続けた結果、自分は16年かかりました。自分のチームでは1年目からこの経験をできた選手もいます。でも、やり続けたことが、自分は良かったと思っています。悔しい経験をしたからこそ、今こうして喜びを分かち合えるんだなと思っています。もちろん日本一はうれしいですが、それ以上に、今まで悔しい思いをし続けてきても、頑張ってきたことが、何よりも自分を評価したい」と喜びをかみしめた。
 長く日本のバスケットボール界を引っ張ってきた髙田は東京2020の銀メダルに続き、ついに日本一のタイトルも手に入れた。





第90回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド 最終結果
優勝 : デンソー アイリス (初優勝)
準優勝 : ENEOSサンフラワーズ
3位 : シャンソン化粧品 シャンソンVマジック / 富士通 レッドウェーブ

■共同通信社MVP賞
髙田真希(デンソー#8/初)

■大会ベスト5
馬瓜エブリン(デンソー#0/3年ぶり3回目)
髙田真希(デンソー#8/2大会ぶり7回目)
木村亜美(デンソー#13/初)
赤穂ひまわり(デンソー#88/3大会連続4回目)
渡嘉敷来夢(ENEOS#10/3大会連続13回目)



文・飯田康二(月刊バスケットボール)

タグ: デンソー アイリス ENEOSサンフラワーズ

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