12/13(水)琉球ゴールデンキングスのEASL4戦目を楽しむ4つのポイント
今村佳太はEASLの3試合で平均17.3得点、3P成功率52.4%、フィールドゴール成功率50.0%、フリースロー成功率100%。メラルコ・ボルツとの初戦もゲームハイの19得点と大きな力になった(写真/©EASL)
琉球ゴールデンキングスが12月13日(水)に、東アジアスーパーリーグ(EASL)における一つの節目となる一戦を迎える。マカオのスタジオシティで、メラルコ・ボルツ(フィリピン)と激突する「メルコ・スタイル・プレゼンツClash of the Champions」だ。
EASLにおける琉球はここまで2勝1敗でグループBの2位。一方のメラルコは、勝ち星なしの2敗でグループB最下位という状況だ。両チームは今回が2度目の対戦。11月15日に沖縄アリーナで行われた初戦は琉球が89-61で勝利した。しかし現在はチーム状況が大きく変わっている。はたして2度目の対戦はどのような展開になるだろうか。ここでは4つのポイントを挙げてこの一戦を展望してみたい。
1. 前回対戦はアレン・ダーラムの活躍を軸に琉球が快勝
前述のとおり、琉球はメラルコを一度ホームで破っている。大きな勝因は3Pショットで、琉球は35本中18本を成功させた。そのような展開に持ち込めた理由の一つは、かつてメラルコの一員としてPBA(フィリピンのプロ競技会)の最優秀外国籍プレーヤー賞を3度獲得した経歴を持つアレン・ダーラムが、サイズと身体的コーディネーションを生かして古巣に恩返しする幅広い活躍を披露したことによるところが大きい。
両チームの最初の対戦では、アレン・ダーラムのオールラウンドな活躍が琉球のオフェンスを勢いづけた(写真/©EASL)
リバウンドを奪い、トランジションでボールを運び、フィニッシュし、というこの日のダーラムは最終的に16得点、9リバウンド、6アシスト。フィールドゴールは3Pショット全3本成功を含む7本中5本成功という高確率だった。この中で得点は今村佳太の19得点に次ぐチーム2位、リバウンドはゲームハイに並ぶ数字、そしてアシストは単独のゲームハイだ。
琉球はジャック・クーリーも12得点に8リバウンドと活躍し、松脇圭志も11得点。ほかにも岸本隆一と牧 隼利がともに3Pショットを3本ずつノーミスで決めて9得点ずつを奪うなど、コートに立った全員が脅威となった。
メラルコはこのとき、PBAでチームの中心的な活躍をしていた外国籍センターフォワードのスレイマン・ブレイモーを欠いていた。フィリピン代表ガードのクリス・ニューサムがチームハイの11得点を記録し、唯一外国籍ビッグマンとして来沖したプリンス・イベも10得点に9リバウンドと奮闘したが、第1Qを21-17と4点リードして終えた後、残る30分間は攻め手を欠き、40得点しか奪うことができなかった。
2. メラルコの外国籍スコアラー、ザック・ロフトンに要注意
しかし今回マカオでは外国籍の登録事情に変動がある。メラルコのルイジ・トゥリロHCは5日に行われたオンライン会見で、ブレイモーが故障離脱したことに触れるとともに、新たに加わった身長193cmのシューティングガード、ザック・ロフトンを琉球戦に登録する意向を明かしている。
ロフトンはアメリカ国籍で、2018-19シーズンにNBAのデトロイト・ピストンズに在籍していたプレーヤーだ。メラルコではまだPBAで1試合、EASLで1試合しかプレーしていない。ただし2試合とも爆発的なパフォーマンスを披露しており、相当警戒が必要だ。
ロフトンのメラルコでのデビューは11月29日に行われたEASLのニュー台北戦だった。メラルコはこの試合に92-97で敗れたが、ロフトンは3Pショットを13本中6本沈めて35得点を奪っている。PBAでのデビュー戦となった12月10日のノースポート・バタンピアー戦はさらに衝撃的で、ロフトンは19本中9本の3Pショットを決めて54得点と爆発し、メラルコを125-99の勝利に導いた。ロフトンの加入により、メラルコの得点力は前回対戦時とは異なるレベルに向上したとみて間違いないだろう。
5日の会見に登壇した今村は、「素晴らしい選手が来るかもしれない(話を聞いた時点でロフトンの登録は未確認だった)ので、マッチアップを楽しみにしています」と闘志を見せていた。「僕個人としても、よりペイントにアタックしてディフェンスを収縮させてオープンショットを作り上げること。すごくシンプルですけどそこから流れが生まれる大事なことで、それができていないと良いショットセレクションができずディフェンスにも影響してしまうので、自分たちの形を出していくことを意識してやっていこうと思っています」
どのようなマッチアップになるかは当日を楽しみに待つばかりだが、今村か、あるいは前回故障離脱で出場できなかったヴィック・ローがロフトンと対峙する可能性が高いのではないだろうか。その状況で、それぞれどんなパフォーマンスを見せるかは勝負に直結する要素となりそうだ。
琉球側では身長207cmのセンター、渡邉飛勇がいよいよEASLデビューを果たす可能性もある。Bリーグではまだ出場が5試合のみで、出場時間も直近12月10日の信州ブレイブウォリアーズ戦でようやく6分25秒というのが最長。まだまだ試運転状態だが、6日の大阪エヴェッサ戦では豪快なアリウープ・ダンクで今シーズン初得点も記録している。出場機会があれば、メラルコに対しサイズ面のアドバンテージを生かした活躍を期待したいところだ。
3. 「逆転の琉球」?——少し気になる今シーズンの傾向
今シーズンの琉球は試合ごとの波がやや激しく、点差を空けられて敗れる、あるいは大きなビハインドを背負う展開から終盤巻き返して勝つ試合が何度かある。
Bリーグでの琉球は現在15勝4敗でB1西地区1位だが、敗れた4試合のうち3試合が20点差以上離されての黒星。EASLでここまで唯一の黒星となっているソウルSKナイツとアウェイ戦も、一時23点差(最終的には69-82の13点差)まで離された。
また、Bリーグでは5点差以内で決着がついた試合が7勝1敗(そのうちオーバータイムが2勝0敗)と非常に粘り強く勝ち切るチーム力を示している一方で、その7勝のうち3試合では、第4Q残り5分を切って2桁点差のビハインドを跳ね返すという非常に難しい試合だった。12月に入ってからの5試合は勝った4試合すべてが5点差以内で、そのうち2試合がこのケース。直近12月10日の信州戦は、最後の2分16秒間を16-0のランで締めくくって劇的な勝利を手にしている。
今シーズンの琉球ゴールデンキングスは、心配とは言わないまでも気になる特徴があるのも事実だ(写真/©B.League)
こうなるとさながら「逆転の琉球」と呼びたくなる特徴だが、終盤に大量ビハインドを背負う展開を望んで作ってはいないだろう。その状況下の経験はプラスになるとしても、そこまでの状況に陥ってしまわないことも重要だ。メラルコ戦では試合全体の流れをどのように作っていけるだろうか。ここは今後の国内での戦いも踏まえた見どころの一つと言える。
4. マカオはアウェイかニュートラルか
今回の対戦で興味深い事項の一つには、開催地がメラルコのホームであるフィリピンではなくマカオで開催されることも挙げられる。EASLの共同創設者であるヘンリー・ケリンズは、12月5日のオンライン会見で、「マカオはアジアのスポーツ/エンターテインメントの中心地」との見方を示し、スタジオシティとのパートナーシップの下でEASLのさらなる発展を実感できるビッグイベントとして、この対戦に寄せる期待を語っていた。スタジオシティのシニアバイスプレジデント&プロパティゼネラルマネージャーを務めるケビン・ベニングも、「多様なワールドクラスのエンターテイメントをゲストの皆様にお届けすることをお約束します」と今回の対戦での盛り上がりに自信を見せている。
リーグ戦の視点から気になるのは、スタジオシティが琉球にとってアウェイ感の強い開催地になるかどうかだが、5日の会見で今村は「場所や環境にあまり左右されなくなったかなと自分では感じています。アジア競技大会に出させていただいてそのままリーグ戦に入っていったので、海外でプレーすることに抵抗もなくなりました」と頼もしいコメントをしていた。環境的に負荷を感じるようなことも特段にはないとのことだ。
一方メラルコのトゥリロHCは、自身の伴侶がマカオに隣接する香港で育った経験を持ち、トゥリロHC自身も香港とマカオを毎年のように訪れているという。「(マカオには)フィリピンの人々も大勢いますし、ファンの熱気もあります。我々のホームコートのように感じさせてくれると思っていますよ」というコメントは、彼らにとってマカオがごく身近な地域であることを感じさせた。となると、沖縄あるいは日本からのブースターはどのくらいマカオ入りするだろうかという点も気になってくる。
いずれにしても、豪華なリゾートでどのようなバスケットボール空間を生み出してくれるかという点も期待したい一戦だ。ちなみに上記のケリンズは将来的にもマカオでのEASL開催の可能性を明かしている。ブースターの皆さんも、この先一度は訪れるかもしれない場所として様々な情報をチェックしておいて損はないだろう。
取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)