月刊バスケットボール6月号

大学

2023.12.06

【日体大×インカレプレビュー】鮮やかなユニフォームをまとった選手たちの集大成

インカレで22年ぶりの優勝を目指す日体大男子

12月2日から開幕した「第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(以下、インカレ)」は、グループステージを終え、いよいよ一発勝負のトーナメントがスタートする。今回は、男女それぞれの日体大に焦点を当てて、その戦いの行方を考察していきたい。

【男子】アップテンポに攻める破壊力抜群のオフェンスがカギ

まず、男子は関東リーグ戦で4位に着けたことでトーナメント左下のシードを獲得。初戦の相手は三谷桂司朗や小川敦也といった華やかなタレントをそろえる筑波大が有力と見る。両校は春のトーナメントに新人戦、リーグ戦、そしてシーズンの初陣となった4月の日筑定期戦と、今シーズンここまで5度対戦(新人インカレは対戦なし)。直近のリーグ戦では1次リーグで日体大(79-70)が、2次リーグでは筑波大(90-85)で勝利しており、通算成績は筑波大の3勝2敗となっている。ただ、リーグ戦のスコア差を見れば分かる通り、ほぼ力の差はない状況だ。

日体大にとってカギになるのはリバウンドとファストブレイクでいかにペースを掴むか。リーグ戦でダントツ1位の平均86.3得点(2位は山梨学院大の77.6得点)が示す通り、ハイペースでの点の取り合いになれば日体大の勝率は大きく高まる。逆にリーグ戦で敗れた6試合中5試合は平均得点以下のスコアに終わっている。この数字からも日体大伝統の走るバスケが勝利に欠かせないものだと分かる。

#21 月岡 熙(2年・PG・174cm・昌平)

#21 月岡 熙(2年・PG・174cm・昌平)


そのハイペースな攻めを牽引するのがPGの月岡熙だ。月岡のプッシュから西部秀馬や小澤飛悠らウィング陣が走り、ムトンボ・ジャンピエールとコネ・ボウゴウジィ・ディット・ハメードの2人の留学生もトランジションに参加。外からも大森尊之や石川響太郎、早田流星といったシューター陣が待ち構えており、彼らが繰り出すダイナミックかつ的が絞りづらいオフェンスは相手にとって大きな脅威となる。

シーズンの初陣であったため、日筑定期戦の結果はあまり参考にはならないかもしれないが、リーグ戦での2戦に加えて同対戦でのスコアは82-67と、日体大自慢のオフェンスを封じ込めた筑波大が勝利を挙げている。総じて筑波大との対戦ではスコアが伸び悩む傾向にあり、これらの試合のように日体大の得点を抑えた場合、筑波大の勝率はグッと高まるということだ。

筑波大としては三谷や小川、木林優ら既存戦力に加えて副島成翔、星川開聖、坂本康成のルーキー3人も大学バスケの水に慣れ、チーム力はますます高まっている。日体大もチームケミストリーは大学界随一であり、下級生が主体のチームだからこそ4年生のコート内外でのパフォーマンスがカギを握るはず。

過去5年のインカレではベスト8の壁に阻まれている日体大。初戦に勝利して勢いに乗り、21年ぶりの優勝を飾った春のトーナメントのような爆発力で大会を駆け上がりたいところだ。

#23 ムトンボ・ジャンピエール(3年・C・206cm・東山)

#23 ムトンボ・ジャンピエール(3年・C・206cm・東山)


【女子】泥臭いプレーと得点力アップで勝利へ

リーグ戦終盤の勢いで上位進出を狙う日体大女子

リーグ最終戦の勢いで上位進出を狙う日体大女子


一方の女子はグループステージGブロックを勝ち抜いた名古屋経済大が初戦の相手。危なげなく81-60で勝利して2回戦に進出した。秋の関東女子リーグ戦では苦しい戦いが続き通算5勝9敗と負け越したものの、専修大との最終戦では大激戦を勝ち切り、戦いを終えている。

中心となるのはストリートボールのようなハンドリングスキルで見る者を魅了する小野寺佑奈と、2年生ながらチームの得点リーダーとなる宮城楽子、そしてインサイドを任されるマカヌアンバ・ロリアンだ。ガード、ウィング、インサイドにしっかりとした軸があり、リバウンドやルーズボールなどの泥臭いところでポゼッションを勝ち取ってアグレッシブに攻める──伝統として続くこの戦い方を突き詰めた先に勝利が見えてくる。

#3 小野寺 佑奈(4年・G・157cm・開志国際)

#3 小野寺 佑奈(4年・G・157cm・開志国際)


課題は得点力。リーグ戦では敗れた試合のうち6試合は70得点未満で9試合の平均得点も66.1。逆に、勝利した5試合は全て70得点オーバーで、平均でも77.0得点であることを考えると、オフェンスで70得点を超えられるかどうかが勝敗を分ける一つの指標となりそうだ。

ただ、得点力が課題とは言ったものの、リーグ戦の個人成績では宮城が平均得点で7位(16.8)、小野寺が同8位(16.2)を記録しており、後者についてはMIP賞も受賞している。個々の能力が高い選手はそろっているだけに、あとはチームとしての得点力を上げ、完成度をどこまで高められるかがカギになるだろう。

仮に初戦を勝ち抜くと、2回戦の相手は関西1位の大阪人間科学大だ。同大を昨年から指揮する安藤香織監督は宮城の大阪薫英女学院高時代の恩師でもあり、同大は薫英高出身の選手も非常に多い。宮城にとっては恩師との再会という点でも注目のカードだ。

#8 宮城 楽子(2年・F・167cm・大阪薫英女学院)

#8 宮城 楽子(2年・F・167cm・大阪薫英女学院)


大阪人間科学大は組織力が高く選手個々の強みを生かしながら戦ってくるスタイル。泥臭いプレーを身上とする日体大としては、その持ち味を継続しつつ、課題であるスコアリングの面でロリアンのインサイドとガード陣のアウトサイドからいかに効率よくスコアできるかが勝敗の分かれ目になるだろう。

ここまでは男女の戦いについて考察してきたが、今シーズンの日体大にはもう一つ大きな変化があった。それがユニフォームをはじめとするウェア関係、そしてチームロゴの刷新だ。それらを男女ともにスポルディングのデザインに一新。男子部の藤田将弘監督が「ユニフォームやロゴマークはチームの看板であり、精神になるもの。帰属意識や一体感、連帯感の高まりをライオンズ(日体大体育会の愛称)としてより強固なものにしていきたい」と言葉に力を込めるように、強い決意をもってシーズンを戦ってきた。男子部と女子部で目指すバスケットのスタイルに違いはあれど、共通する部分はやはり“チーム”として戦えるかである。

鮮やかなブルーとオレンジのユニフォームに袖を通した選手たちが織りなす1年の集大成、大いに注目したい。



スポルディング・ジャパン
https://www.spalding.co.jp/


文/堀内 涼(月刊バスケットボール)

タグ: スポルディング インカレ日本体大

PICK UP

RELATED