月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.12.04

B1昇格即刻上位で健闘中の長崎ヴェルカ、チーム力を引き出す前田健滋朗HCの「塩加減」

12月3日の川崎ブレイブサンダース戦に勝利した後、地元ブースターに手を振る前田健滋朗HC(写真/©B.LEAGUE)

B1に昇格したての長崎ヴェルカの健闘は、バイウイークを迎えるまでの期間で注目を浴びた出来事だった。長崎はいまだに、今シーズン一度の週末で同じ相手に連敗していない(週をまたいだ日・水・土の3連敗があったが)。バイウイーク明けの12月2日・3日も、ホームの諫早市中央体育館で川崎ブレイブサンダース相手にスプリット。敗れたGAME1もオーバータイムを戦う大激戦で、結果を悲観的に受け止めるよりも今後への期待を膨らませたブースターの方が多かったのではないだろうか。


チームのリーディングスコアラーは平均15.1得点のニック・パーキンス。この数値はリーグ全体のランキングでトップ10に届く数値ではないが、代わりに長崎にはジャレル・ブラントリー(14.9得点)、マット・ボンズ(14.7得点)、馬場雄大(14.6得点)と得点力の高い万能タイプのサイドキックが複数名を連ねている。しかも、彼らが相手にとって脅威をもたらす中で、狩俣昌也が3Pショットをリーグ5位の43.5%の高確率(69本中30本成功)で決めてくる。チーム平均での86.7得点はリーグ2位という力強さだ。


新天地の長崎で馬場雄大は攻守両面で大いに貢献している(写真/©B.LEAGUE)

ブラントリーはアシストランキングで6位(4.6)、スティールで3位(1.6)に入っており、馬場もスティールで7位タイ(1.5)と攻守両面でハイレベルな貢献ぶり。彼らを中心に、長崎はロスターの力をうまくコート上で発揮させることができていると言えるだろう。


ジャレル・ブラントリーのバランスの良い活躍は長崎の躍進を支える柱の一つだ(写真/©B.LEAGUE)

しかし、B1昇格直後のチームがなぜ、このような成功を当たり前のようにできているのか。ここまでの16試合を106敗(勝率.625)として西地区3位。B1で長年戦ってきているクラブでも、そうできない方が多いというのに。クラブ創設からわずか3シーズン目のクラブが国内最高峰の舞台で好成績を残している要因は、プレーヤーに目を向ければ上記のようにいくつも挙げられるが、ここではその力を引き出す存在としての前田健滋朗HCに着目してみたい。





期待に応えたB2でのヘッドコーチ初シーズン

前田HCがチームの指揮を執るようになったのは昨シーズンから。創設初シーズンは、伊藤拓磨GMがヘッドコーチを兼任しており、その中で前田はディフェンス面を担当するアシスタントを務めていた。長崎が創設から最短でB1に昇格するという目標を明確に内外に示していた中で、B2昇格後の2022-23シーズンからヘッドコーチの役目を請け負った。


12月3日の川崎ブレイブサンダース戦で、ベンチで指示を出す前田健滋朗HC(写真/©B.LEAGUE)

ファンからクラブ自体と関係組織の人々まで、多くの目が注がれる中で、プレッシャーは大きかったはずだ。何しろ長崎は、伊藤がGM兼HCとしてチームを率いたB3でのクラブ創設初シーズンに453敗(勝率.938)という圧倒的な成績でリーグ制覇・B2昇格を果たしていたのだ。しかも平均得点が101.4という超ハイエナジー・バスケットボールでの快進撃。B2に昇格して、新任の立場で同じようなことをやれるとはそうそう思えない。

それでも前田は伊藤から引き継いだ責務を全うし、クラブ創設2シーズン目にB2で立派に結果を出した。レギュラーシーズンで4317敗(勝率.717)の成績を残し、第4シードでプレーオフに進むと、クォーターファイナルで熊本ヴォルターズを、セミファイナルでアルティーリ千葉を下してB1昇格を実現。そして今日に至っているわけだが、この成功を語るには、前田HCを特徴づける二つのキーワードがある。「ヴェルカスタイル」と「塩」だ。






取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 長崎ヴェルカ

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