月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.11.20

強い相手に強い? 神戸ストークスの「秘密兵器」、金田龍弥のおもしろい特徴

©B.LEAGUE

神戸ストークスが越谷アルファーズを77-69で破った1119日の一戦で、3Pショット4本中3本を成功させて9得点を記録するとともに、越谷のスコアリングマシーン、LJピークに対するディフェンスでも力を発揮した金田龍弥。過去2シーズンは大阪学院大に所属し、特別指定枠で西宮時代のストークスに加わっていたが、ユニークな特徴を感じさせるプレーヤーだ。


身長195cmのスモールフォワードで、「幅広いプレーをしたい」と語る大阪府出身の23歳。平均810秒の出場時間で3.0得点、フィールドゴール成功率32.6%、3P成功率26.9%という今シーズンのアベレージは、騒ぎ立てるようなものではないかもしれない。しかし金田には、大事な試合や強い相手との対戦で強さを発揮する傾向がある。

この日の越谷戦での働きぶりはその一例だ。両チームは2022-23レギュラーシーズンで6度対戦し、ストークスは24敗と負け越したが、プレーオフのクォーターファイナルでは逆にストークスが21敗でシリーズを制したという因縁のあるチーム同士。今シーズンは前日まで21敗で越谷がシリーズをリードし、この日がレギュラーシーズン最後の対戦だった。越谷としては、昨プレーオフの借りをまずはレギュラーシーズンの勝ち越しで返したい思いもあり、かつ6連勝中のホームゲームを落としたくない。ストークスは当然、大勢のアルファメイトが集まったウイングハット春日部で、今シーズンの対戦成績を22敗のタイに持ち込みたい。ここで勝つことで、仮にプレーオフで激突する場合にも自信を持って臨める根拠を確立させられそうな、意味のある試合だ。

そこで光を放ったのが金田だ。もちろん彼一人の活躍で勝てたわけではないが、金田は高確率のシューティングによる9得点に加えて、前日26得点の荒稼ぎをしたLJ6得点に封じたチームディフェンスの中で、大いに力を発揮した。


11月19日の越谷アルファーズ戦で3Pショットを放つ金田龍弥(写真/©B.LEAGUE)

データが物語るビッグタイム・プレーヤー金田のポテンシャル

この試合で今シーズンのアベレージを大きく上回るスタッツを残した金田だが、昨シーズンの数字を振り返ると、プレーオフ進出チーム(西宮ストークスを除く7チーム)との対戦で、以下の通り通年のアベレージよりもシューティングのデータが明らかに高くなっていた。

■2022-23レギュラーシーズン全体のスタッツ
平均3.1得点、フィールドゴール成功率34.4%、3P成功率28.4

■2022-23レギュラーシーズンのプレーオフ進出チームとの試合におけるスタッツ
平均3.0得点、フィールドゴール成功率36.8%3P成功率34.3%

また、プレーオフで出場機会があった6試合でのアベレージは平均3.0得点、フィールドゴール成功率50.0%3P成功率55.6%とさらに高い。0.1減少している得点の数値には、出場時間やアテンプト数との兼ね合いがあるだろうが、精度の差には注目すべきものがある。

昨シーズン中の326日に、この日と同じウイングハット春日部で行われた越谷との一戦では、95-100で敗れたものの金田はフィールドゴール7本中4本を成功(うち3Pショットは4本中3本成功)させて11得点。この活躍に、当時越谷のスーパーバイジングコーチだった桜木ジェイアール(現在は富山グラウジーズのスーパーバイジングコーチ)は、「金田選手に思っていた以上にやられすぎてしまった」と話していた。

「強い相手に対して強い」のかという特徴について聞くと、金田自身は「プレッシャーに強いかどうかはわからないんですけど、相手がどうこうというよりも、自分がその試合で何ができるかということだけ意識してやっています」という答えだった。「相手が強くても弱くても、自分のところにボールが来たら自信をもってシュートを打つということだけ意識してやっています」





コーチングスタッフからの効果的アプローチも

金田の勝負強さはおもしろい特徴であり、ここが伸びていけばチームにとってより貴重な存在になれるに違いないが、森山知広HCの会見でのコメントを聞くと、こうしたメンタル面の特徴の背景にコーチングスタッフの存在も影響しているように感じられた。実は前日の試合で金田はロスター外。「一度ゆっくり外から見るようにと森山知広HCから言われた」のだという。森山HCはその経緯を「昨日、彼(金田)と試合前にロッカーで二人きりになるタイミングがあり、『明日チャンスが来るから、ゲームにしっかり集中してイメージをもっておくように。次の試合で出たら思い切ってやるんだよ』という話をしていたんです」と語っている。


神戸ストークスの森山知広HC(写真は18日撮影分 ©B.LEAGUE)

金田はこの週末の間に、プロとしてコートに立てない歯がゆさも、森山HCからの期待も感じたことだろう。「当然昨日ロスター外で悔しい思いはしています」と話した金田が、活躍を期して臨んだ一戦でさっそく期待に応えたことを、森山HCも「昨日の話で今日彼がステップアップしてくれた」と喜んでいた。

とはいえ、神戸も森山HCも金田も、ここで満足してはいられない。現時点で96敗の神戸はB2西地区4位。故障者もいる中でも勝ち越せていることは、後半戦につながる大健闘といえるものだが、森山HCは「余裕はまったくありません」と苦笑いで話していた。それだけに、金田のような若手のさらなる成長に期待がかかる。

金田の方も、「今日は活躍できてよかったんですけど、1試合ではなくこれを継続してやることが大事。ここで慢心することなく、来週からまた気持ちを切り替えて頑張りたいと思います」と話していたが、今後どんな貢献をもたらすだろうか。ファンにとっては、ストークスのチームとしての戦いぶりと合わせて、シーズンをよりおもしろくしてくれる見どころとなるに違いない。





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