月刊バスケットボール1月号

W杯男子日本代表12人の今——国内組ビッグマン編(ジョシュ・ホーキンソン、井上宗一郎、川真田絋也)

©FIBAWC2023

FIBAバスケットボールワールドカップ2023に出場したAkatsuki Japanでは、いうまでもなく多くのプレーヤーが脚光を浴びた。しかし、評価を高めたという点では帰化枠で出場したビッグマンのジョシュ・ホーキンソンが一番だったのではないだろうか。


大会終了後のスタッツリーダーを眺めると、ホーキンソンは平均得点7位(21.0)、フィールドゴール成功率9位(58.8%)、2Pフィールドゴール成功率1位(73.5%)、フリースロー成功率10位タイ(88.9%)、リバウンド2位(12.4)、出場時間は渡邊雄太の3位(35.0分)に続き5位(34.9分)、エフィシェンシー2位(28.6)と多くの項目でトップ10入りを果たしている。ブロックショットはトップ10外だが、それでも平均1.4本は12位だった。こんなホーキンソンの活躍が、日本代表の歴史的な3勝とパリオリンピック出場権獲得を引き寄せたことに異論を呈する人もいないだろう。

出場機会が少なかった川真田紘也と井上宗一郎にホーキンソンや渡邊同様の華々しさはなかったとはいえ、両者やほかのチームメイトたちの活躍に感化され、かけがえのない経験を積んだのは間違いないだろう。彼らの国内での現在はどのような状況か、ここでも115日までのデータを見ながらまとめてみたい。

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ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)


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新天地でのキャリアをスタートさせたばかりのホーキンソンは、信州ブレイブウォリアーズでの昨シーズンまでの数字もインパクトがあったため、ジャンプアップした項目はさほど多くない。しかし3P成功率が33.6%から45.0%に向上している点が目を引く。これはホーキンソンにとって、Bリーグにおけるキャリアハイペースだ。

今シーズンの渋谷は、大幅なロスターのテコ入れとコーチングスタッフの交代を経ていることもあり、まだシステムやチームカルチャーが浸透してくるのがこれからという印象もある。ホーキンソンはここまで全試合でスターターとして出場し、30分以上プレーしてきている。コンディションに気を配りながら、ルカ・パヴィチェヴィッチHCのシステムになじむ中で徐々にギアを上げていくと思えば、ホーキンソンにはまだまだ伸びしろがありそうだ。

井上宗一郎(越谷アルファーズ)


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B1の渋谷からB2の越谷に移籍した井上は、安齋竜三HCの下で昨年の3倍以上となる平均1728秒の出場時間を得ている。彼のデータをB1での昨シーズンと単純に比較してよいのかという点には様々な見方もあるだろうが、得点が平均5.6(昨シーズンは1.7)、リバウンドも平均3.2(同0.9)とそろって3倍以上に伸び、3P成功率も20ポイント近く上昇させての42.4%という数字は評価できる。

安齋HCは井上について、6試合目を終えた時点でインサイドの動きもアウトサイドの確率もまだまだという厳しい評価をしていた。同時にスキルアップに向けた支援をスタッフとともに提供していることも語っており、今後さらなる成果を期待したい。カテゴリーを下げての数値的な向上は常にアスタリスク付きで語られるので、結果で実力を見せつけ続けることが求められるし、自らもそう望んでいることだろう。





川真田紘也(滋賀レイクス)


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滋賀のB2降格により、川真田も今シーズンはB1からB2にカテゴリーを下げてプレーしている。ゆえに対昨シーズン比の分析には井上と同じく必ず但し書きがついて回るが、出場時間が昨シーズンの1222秒から30%近く伸びて1544秒、平均得点が3.4から5.3へ(約56%増)、リバウンドが2.0から倍増の4.0という現状は、どう謙虚に見積もってもまずまず以上のスタートと言えるだろう。

ワールドカップ前に日本代表のトム・ホーバスHCは、川真田を初めて合宿に呼んだ当時は姿勢に問題を感じていたと話していた。そこから最終ロスター入りを果たした事実は、川真田の内面に信頼に足りる成長が見られた証しと捉えることができる。今、最短でのB1返り咲きを目指す滋賀が65敗の西地区4位と苦戦を強いられている現状、川真田にはもう一段上のレベルへのステップアップが求められているのかもしれない。どんなレスポンスを見せるか注目だ。

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日本代表がワールドカップで成功できた要因の一つに、渡邊とホーキンソンを軸としたビッグマンによるリム・プロテクションやトランジションへの積極的参加があった。ここで紹介している3人はそれぞれに持ち味が異なるが、誰であれこのスポットで代表入りを狙うならば、そのような部分での奮闘は欠かせない要素となるだろう。

ジェイコブズ晶や川島悠翔ら若手の成長も著しい現状や、ワールドカップよりも強い相手とばかり対戦することになる代表チームの今後を考えると、日本人ビッグマンがこれまでと同じ意識で同じ取り組みをしていたら代表入りはできないのではないだろうか。パリオリンピックでの日本代表を想像しながら今シーズンのBリーグや海外動向を追いかけると、どんなタレントが台頭してくるか非常に興味深い。





文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

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