月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.11.09

“新しい風”が好調を後押しする川崎ブレイブサンダース「新加入組が数字に表れないところでもチームを助けてくれている」

4人の新加入選手が試合のリズムを変える


川崎ブレイブサンダースが好調だ。

第7節を終えて10勝2敗で中地区首位。開幕戦こそ、同地区で同じく10勝2敗を記録している三遠ネオフェニックスに敗れたが、そこから7連勝。10月25日にはアウェイで昨季王者の琉球ゴールデンキングスに快勝するなど、上々の船出といえる。

今季は今のところケガ人も少なく、大きなアクシデントなしで戦えている点も大きい。また、徹底したタイムシェアを行い、10人が平均10分以上のプレータイムを獲得(うち8人が15分以上)するバランスの良い選手起用もその要因だろう。

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11月8日の信州ブレイブウォリアーズ戦では、大黒柱のニック・ファジーカスを約18分の起用に留め、出場時間最長のジョーダン・ヒースでも24分17秒。1Qで奪った2桁のリードを一時追い付かれる場面もあったが、最後は75-59で勝ち切った。

この試合で流れを呼び込んだのはセカンドユニットの、特に新加入の選手たちだ。19得点で川崎のリーディングスコアラーとなったロスコ・アレンはインサイドの力強さに加えてパワフルなドライブや3Pシュートでも力を発揮する万能フォワード。追い付かれた3Q終盤には流れを断ち切る3Pを沈め、4Qはさらに積極的にペイントを攻め立てたことで、後半だけで12得点を集中した。





内外に得点できるアレンの存在が、川崎の戦術に柔軟性をもたらしている

そのアレンと共に川崎のオフェンスを活性化したのが、トーマス・ウィンブッシュだ。今季はスタメン起用がほとんどだったが、この試合はベンチから登場。スタッツこそ4得点に留まっているが、強度の高いディフェンスに加え、前述した3Q終盤のアレンの3P成功後には見事なトランジションアタックを決めて4Qには豪快なダンクも披露。これらは数字以上に価値のある得点だった。

佐藤賢次HCもこの2選手について「トム(ウィンブッシュ)とロスコはリングにアタックする能力が本当に高いので、ニックやジェイ(ヒース)が外がうまくてスペースがある中で、ああいうアタックができることはウチの強みになっている」と、川崎の新たな武器であることを強調する。

そして、3Pとディフェンスで力を発揮するのが野崎零也と飯田遼の2人。特に野崎はこの試合の前半で3本の3Pを含む13得点と気を吐き、前半のMVPといって差し支えない活躍だった。飯田もプレータイムこそ10分に満たなかったが、ハードなディフェンスで信州のガード陣を自由にさせなかった。「オフェンスは水ものな部分がありますが、彼ら2人はディフェンスのベースが高いです。インテンシティも高いですし、彼らのそういうところがチームのベースを上げてくれている」(佐藤HC)と、川崎の身上であるディフェンスから始まるバスケットの大きなピースとなっているようだ。


信州戦では3Pが大当たりだった野崎



新加入選手4人を「悪い時間帯に今シーズンから入ってきた選手たちが勢いを与えてくれます。それはオフェンスだけでなく、ディフェンスの遂行力やハッスルの面などでもです。数字に表れないところでもチームを助けてくれています」と佐藤HCは評している。

そして、ここまで新加入選手がうまくフィットしている理由は、長年チームに在籍している選手たちの影響も大きい。アレンは言う。

「ずっと一緒にやってきている選手が多いので、その分、オンコートでもオフコートでも(チームに慣れるために)みんなが手伝ってくれます。何か質問をすれば丁寧に教えてくれますし、チームには今、すごく良い雰囲気が漂っています。川崎は新しい選手も在籍年数が長い選手も関係なく、全員の意見を尊重してくれるチーム。何か気付いて発言したいときにコーチ陣も他の選手も心を開いて話を聞いてくれる。それがこのチームの強みだと思います。意見をしっかりと発言できて、かつ聞く姿勢をみんなが持っています。だから、すごくやりやすい」

しっかりとしたアイデンティティーがあり、そこに佐藤HCが「彼らの一番良いところは全員がコミュニケーションをすごく取ってくれるところ。そういう良いところが出てきて、今は良い状態が作れています」という4人の新加入選手がパズルのピースのようにうまくハマっている。現状の好調さはそこから来ている。

ただ、川崎にとってはレギュラーシーズンの成功はゴールではない。ファジーカスが今季限りでの現役引退を表明した今、現体制で臨む最後のシーズンが今季だからだ。

だからこそ、現在の好調さをキープしつつ、ベテランの多いロスターでいかに体力を温存しながらチャンピオンシップを目指していくか。そして、過去6年超えられずにいるセミファイナルの壁をいかにして越えていくか。“川崎のキング”のラストシーズンに花を添えるためには、現有戦力と新戦力のさらなるケミストリーの向上が必要不可欠だ。



取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

タグ: 川崎ブレイブサンダース 信州ブレイブウォリアーズ

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