月刊バスケットボール6月号

【ウインターカップ2023プレビュー】福岡第一高を訪問! 勝利と成長を支えるマクダビッド Vol.1/井手口 孝コーチインタビュー

勝利と育成は切り離されないもの。その土台となるのが身体作り

インターハイで3位に入り、ウインターカップでも優勝候補の一角と目される福岡第一高。部員100人を超える大所帯が一丸となり、勝利と個々の成長を追い求めている。そんな彼らを、陰ながらサポートしているのがマクダビッド。プロテクティブアパレルHEX、サポーターなどは、福岡第一のバスケットを遂行するために欠かせないアイテムだ。井手口孝コーチにアイテムの使用感や身体のケアについて聞いた。

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―マクダビッドとの関わりについて教えてください。

今から15年ほど前、全国の強豪チームと戦うようになった頃から、選手たちが使い始めました。近年は特に、ピック&ロールのプレーが増え、相手や味方と接触する場面もかなり多くなったので、ももかん(大腿筋挫傷や大腿部打撲)などを予防するために着用する選手は多いです。着用することで、怖がらずに思い切りいけるという安心感がある。特に僕は攻めるようなディフェンスを大事にしているので、接触を怖がらずに力強く出られるのは良いですね。全国のトーナメント大会では5試合や6試合の連戦ですから、最終日まで戦い抜くためにも、ケガの予防をすることは非常に大事だと思います。

―身体作りやケアを、井手口コーチは創部当初から大事にされていますよね。

創部した頃からチームには必ずトレーナーがいましたし、日本一を目指す上での土台となるのがケガをしない強い身体作りだと思っています。どこのチームもそうかもしれませんが、ウォーミングアップやクールダウンなど、試合前後のストレッチやケアは、途中の練習時間を削ってでもしっかり時間を取りますね。あとは時期に応じて、朝、ヒザなどへの負担が少ない柔らかい土のグラウンドでジョギングさせることもしています。

また、トレーニングについても、毎週こまめに時間を与えています。もちろん、トレーナーにも限界はあるので、全てを手取り足取り教えて見守っているわけではありません。選手たち自身に任せる部分が大きいので、トレーナーから教わった知識を、どれだけ自分で本気で取り組めるかという意識の問題になります。ただ、練習後の体幹トレーニングなどの基本的な方法は、毎日きっちり時間を取ってチームでやるようにしています。

―「日本一」を目指すために強い身体が土台となるとのことですが、井手口コーチは1994年の創部当初から日本一を目標に掲げていたそうですね。

僕自身には何の力もありませんが、日体大の学生時代、そして中村学園女高でのアシスタントコーチ時代と、日本一を経験させてもらいました。日本一になるためにはどうすれば良いのか、どうあるべきなのか、すごく”良いもの”を身近で見てきたわけです。そこから今度は、自分がヘッドコーチになって頑張ろうと決めたときに、やるからには「日本一」を目標にしたのは自然な流れでした。もちろん、創部当初は地区の3部からのスタートでしたから、「まずは1勝しよう」「地区大会で勝とう」「県予選で勝とう」といった中間目標はたくさんありましたが、どんなに弱小チームでも、最終的にぶれない目標として「日本一」がありました。

最初の頃は雲の上のような話でしたし、初めて優勝したときには雲の上をふわふわ歩いているみたいでした。日本一になった後は、「3冠を取ろう」「連覇しよう」「大学生やBリーグを倒そう」と。それは、選手たちが成長して、自ずと目指すものも引き上げられた感じですね。

時折「勝利と育成の両立」ということが語られますが、僕としては両立というより、同じものだと捉えています。選手を育成しなければ、日本一はあり得ませんから。勝利と育成、そこは同じゴールであって、切り離して考えなくていいのではないかと思います。

―弱小チームだった頃から日本一を目指すというのは、難しくはありませんでしたか?

目指すからには「日本一になれるような環境ではない」と言い訳するのではなく、「日本一になるために、環境を変えよう」と目標はぶらさずにやってきました。県立の工業高校が50回以上も日本一になったわけですから、自分たちにもやれることがあるはずだと。どこのチームだって、たとえ練習時間が制限されていても、良い選手が来てくれなくても、そういう環境を変えてまで頑張ろうという気概があれば、動くものがあるかもしれません。

昔から、今いる選手で勝つためにはどうすれば良いかなど、試行錯誤を重ねてきました。今思えば、最初から最高の環境が与えられていたら、案外優勝はできなかったかもしれません。目標をぶらさず、子どもたちと一緒にできることをやっていく。結局それが、偉そうな言い方になりますが、子どもたちの”教育”にもなるのかなと。そうやって歴代の選手たちと一緒に作り上げた”良いもの”が、今でもうちのベースとしてあるのだと感じています。

―現在では皆、日本一を目指して福岡第一に入学してくると思います。

そうですね。チームが日本一を目指しているということは、みんな理解してくれています。それにありがたいことに、試合に出られる、出られない関係なしに「このチームの一員になって、日本一に向けて頑張りたい」という気持ちで入学してくれる子どもたちもたくさんいます。あとは、たとえ下手でもとにかくバスケットが大好きな子どもたちですね。今は学校教育の現場でも働き方改革などが進み、クラブ活動がやりづらい学校もたくさんある。でもどうやら福岡第一に行けば、思い切りバスケットに打ち込めるようだということで、うちを選んでくれるんです。僕はそういう子たちを断りませんし、3年間充実してバスケットができる手助けをして、進学先も面倒を見ます。安心してどっぷりバスケットに打ち込める環境になっていると思います。

―身体や技術に加え、メンタルを強くするためにどのような指導を行なっていますか?

なかなか難しいですけれど、1年生と3年生とでは要求するレベルも変わってきます。1年生のときにはのびのびプレーしてもらい、失敗してもあまり叱ることはありません。でも3年生になればチームを背負うわけですから、些細なことでも注意することがあります。そうやって求めるレベルを変えていくと、メンタル面も3年間でものすごく変わるんですよね。その変化を感じられたときには、僕自身もうれしいです。

ごくまれに、1年生の頃から3年生のようなメンタルを持っている選手もいます。これは技術や身体と一緒ですね。1年生でも3年生以上の技術や身体を持つ子というのがまれにいますが、それと同じ。1年生の中で、技術や身体の面では全く変わらないのに、なぜあの選手を先に試合で使うのかといえば、基準はメンタル面です。腐らないとかいじけないとか、心が大人であるかどうかですね。

これまで、1年生から試合に使ってきた選手はみんなそうです。河村勇輝(横浜BC)や小川麻斗(千葉J)もそうですし、並里成(群馬)なんてバスケットに対する意識の高さが異常でしたよ。メンタルの強さとか、そういう枠に当てはまらない。プロの16歳が入学してきた、という感じでしたね。

―今年のチームに関しては、そうした心技体の強さをどう見ていますか?

正直、未熟な部分はあります。コロナ禍で中学時代や下級生時代に空白期間のあった子たちですから、その弊害というか、メンタル面でもバスケットIQの面でもまだまだです。3年生の中には、今年からようやくバスケットが始まったような子もいる。でもそういうことも含めて、コーチングですし、僕自身の指導の見せどころなのかなと。今年はベンチでも全く気が抜けないですし、選手たちを常に戦わせるために僕がベンチで静かになったらいけないなという方針です(笑)。

今後、身体作りなども含めて、トレーナーとも協力しながら、やれることは全部やって冬を迎えたいですね。ケガをさせないというのが一番ですし、そこが勝利や選手の成長にもつながっていきます。マクダビッドの協力も得ながら、そうしたアイテムに頼り切らず、プラスして身のこなしなど身体の使い方を教えていかなければいけないなと。ケガは起きるときには起きるものです。でも日頃から準備していれば、少しはケガをしたときにその度合いが軽減されるのかなと考えています。

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取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

タグ: マクダビッド

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