月刊バスケットボール6月号

Wリーグ

2023.11.03

Wリーグの新天地で新たなスタートを切った林咲希

新天地・富士通で躍動する日本のキャプテン


10月14日に開幕したWリーグ2023-24シーズン(第25回Wリーグ)も、10月29日の試合を終えて各チームとも6試合を消化した。既報のとおり、Wリーグは来シーズンより2ディビジョン制が導入されるため、今シーズンの結果によって上位8チーム(プレミアリーグ)、下位6チーム(フューチャーリーグ)に分かれることが決まっている。どこのチームもプレミアリーグ入りを目指して熱い戦いを繰り広げているのは言うまでもない。

【SNS】試合ごとにファンにお礼を綴る林咲希の投稿を見る

厳しいバトルが続く今シーズン、昨シーズンの優勝チームENEOSから富士通へと移籍し、新天地で躍動しているのが林咲希だ。ご存じ日本を代表する3Pシューターでもある。

東京2020オリンピック(2021年8月開催)の準々決勝・ベルギー戦、4Qの残り15.2秒で決めた林の逆転3Pシュートは、日本バスケットボール界にとって五輪史上初となる銀メダル獲得に大きくつながるハイライトシーンだった。

その活躍が多くのファンだけでなく、同じ土俵に立つWリーグ所属の選手たちにも忘れられないシーンとして心に残っている。
Wリーグ総選挙で、シューター部門1位の林咲希に聞いてみた。

――Wリーグ総選挙(2023-24Wリーグ公式プログラムの巻頭企画)のシューター部門で、林選手がWリーグに所属する選手の皆さんによる投票で1位になりました! まず、その感想をお話しください。

 えっ、知りませんでした(笑) すみません(笑) 正直嬉しいです。でもやっぱり自分よりシュートが入る選手たちはたくさんいるので、その選手たちに負けないようにもっともっと頑張らなきゃいけないですし、シュートだけじゃなくて、他のところをしっかり伸ばしていきたいという気持ちで試合に臨んでいます。

――ところで、移籍して今日(10月28日)で5戦目が終わりました。リーグはまだ始まったばかりですが、ここまでを振り返ってご自身のプレーはいかがですか?

 1、2試合目より3、4試合目、そして5試合目の今日と、少しずつ良くなってきて、富士通のバスケットボールにフィットできるようになってきていると感じています。富士通はディフェンスがいいチームで、しかも特殊ですし、そこに自分がどれだけ早くフィットするのかが鍵だなと思っていました。チームメイトは(私が)ベテランだからなのかあまり言わないですけど、自分としては責任を感じていて、ちゃんと守って、ちゃんとオフェンスにも参加したいという気持ちが一番強かったんです。だから、今日はそこが少しは成長できていたかなというふうには思いますね。システムについて言うと、オフェンスは全然大丈夫です。とにかくディフェンスが本当に難しいんです。例えば、オンボールのディフェンスが全然違うんですよ、他のチームとは。プレッシャーのかけ方も違いますし、そこが本当に慣れないので、普段の練習の中でコーチ陣と一緒にプレーしたり、体でまず覚えるまで動くというところをしっかりやっているので、それが少しは出せたかなって思います。

 ――目指すのはもちろん優勝だと思いますが、今後の自身の改善すべきところは?

 まずディフェンスの部分で早くフィットすること。そして、ディフェンスからブレイクがまだあまり出せていないので、そこは自分の役割ですから。あとはリバウンドからのルーズボール。今日も(相手に)何回もやられたので、そういう泥臭いことをまずチーム一やること。それを下の子たちにもしっかり見せたいです。それから、上位チームとの対戦になると相手のシュート確率も高くなるし、当然自分のシュートの確率も上げなければいけない。だから、もっともっとシュート確率をよくしていきたいですし、シュートに集中できる時間を長くするためにもディフェンスなどの不安要素をなくしてやっていけたらなって思います。



Wリーグ総選挙のシューター部門1位になった林、選手からの評価は高い



 ――移籍するのは大変だったと思いますが、チームにフィットする、なじむために心掛けていることはありますか?

 正直忙しくて…。日本代表の活動で1ヶ月チーム練習ができなくて、戻ってきて1週間後にリーグが開幕でしたから、自分が合わせるしかないので自分に不安要素があったとしても絶対できるという気持ちでやっています。それから、チームメイトとはコミュニケーションをよく取るようにしていますね。やっぱり試合に長く出るのは、町田(瑠唯)選手、宮澤(夕貴)選手、内尾(聡菜)選手たちですから、その人たちだけじゃなくて他の選手たちともたくさん話そうというふうに意識はしています。やっぱりチーム一丸となって戦うためにもそういうところを心掛けています。

――富士通は主力の選手が結構長い時間出るバスケットですが、その辺の体力的なものはいかがですか?

 ベテランの選手はそこの気持ちは負けないと思います。疲れていても絶対にやれると思います。それもあってやっぱり他の選手たちとコミュニケーションをとってなるべく早くというか、少しでもルイさん(町田)とか、アースさん(宮澤)を休ませられるように、若手の選手たちには自信を持って戦ってもらいたいという思いがありますから、そこもしっかり伝えていきながら、練習でうまくできないことをほったらかしにしないで自分も一緒にやっていけたらと思います。

「皆さんの期待以上のことを!」。強い心意気で試合に挑む


――今の体の状態はいかがですか? 大変なところや気になるところなどはありますか?

 気になるところはありますね。ただ日本代表での疲れがあって、ちょっとずつ落ち着いてきていい感じになっている途中です。日本代表ではキャプテンをやっていたこともあって、みんなのことを考えたり、気持ちも引き締まりましたし、メンタルも体力的にも大変で自分のプレーに集中できなくてモヤモヤした部分があったんです。富士通では自分がどれだけフィットできるかというところにフォーカスできているので、そこはすごくやりやすいです。ストレスなく戦えています。

――ところで、今は寮生活ですか?

 一人暮らしです。食事は朝とオフの日は自分で作って、練習のある日は昼と夜はチームでみんなと一緒に食べています。でも、疲れているときなどは朝ご飯も頼んで寮で食べることもできるので、そういったことは有効活用しています。やはり休む時間も必要だと感じていますから。


うまくリラックスもできているという林



――うまくリラックスタイムは取れているんですか?

 はい取れています。ありがたく(笑) ENEOSにいた時も少しずつ増えてきていたので、休む時間を自分のメンテナンスに充てる時間が去年から増えています。だから、自分の体にはすごくいいというふうには感じています。

――ではファンの皆さんにひと言お願いします。

 私が移籍して、いろいろな期待を持って迎えてくれたのはすごくありがたいです。その期待に応えようと思ってしっかり戦っています。ただ、自分としては期待以上のことをやりたいと思っています。その期待を自分の負担に思わずに、みんながどれだけ楽しい思いをして見てくれるのかというところにフォーカスしてやっています。ですから、ぜひ自分の楽しそうなプレーを見ていただけたらいいなと思いますし、優勝できるように頑張っていきたいと思っています。

――そのためには、1試合に何点取るとか、3Pシュートは何本入れるという目標はありますか?

 あー、そうですね、打ったシュートはほぼ決めたい(笑) 60%以上かな……。でも、何%とかはあまり考えないですね。一本一本が自分の仕事ですから、あまり考えずにしっかり決めていけたらと思います。



富士通には3人の頼もしいリーダーがいる


インタビューを終えた後、富士通のBT テーブス・ヘッドコーチにも話を聞いてみた。

BTテーブスヘッドコーチ「うちはディフェンスのルールが多くて、林は頭でそのルールは理解しているのに、自動的に体が動くようになっていないという現状だと思うけれど、だいぶできるようになってきたと思う。大きな問題はない。林の良さは、ディフェンスのいろいろなシチュエーションでの予測・読みに長けているところ。例えば、相手のピックがどこで始まりそうだとか、このプレーだとダウンスクリーンが来るからどう抜ければよいのかなど、オフェンスのシチュエーションが起こる前に予測ができる賢さを持っているところ。そして何よりもオフェンスでは、シュートを決め切る力があり、また、リーダーシップも発揮してくれている。うちには宮澤、町田、そして林という3人のリーダーがいて、宮澤は考えていることをはっきりとチームメイトに伝えるし、林は前向きで、伝えるべきことははっきり言いながらも後輩には優しい。そして、町田は背中で見せるタイプ。うちには3人のいいリーダーがいるのも心強いね」



3人の頼もしいリーダーがいるとテーブスHC


Profile
林 咲希◎はやし・さき
富士通№7/SG/1995年3月16日生まれ/173㎝/血液型・A型/出身地・福岡県/出身校・精華女高→白鷗大/6シーズン所属していたENEOSから、昨シーズン終了後、「新しい環境で新しいバスケットボールを学び、世界を広げていきたい」と、大きな決断をして富士通に移籍。今後のさらなる飛躍が期待される



取材・文/飯塚友子 写真/ⓒWリーグ

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