月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.10.27

最古参ザック・バランスキーが語る“強いアルバルク東京”の条件

「緑の時代のアルバルクを知るのは僕1人なので」

秋田ノーザンハピネッツとの第4節を勝利で終えたあと、アルバルク東京のザック・バランスキーはそう口にした。

この試合は序盤から互いにディフェンスの強度が高く、ペイントエリアですら容易に得点できないディフェンス合戦の試合となった。バランスキーはセカンドユニットの一員として出場したが、相手の激しいマークもあって得意の3Pシュートは1/7と振るわず。それでも、味方にスクリーンをかけてチャンスメイクしたり、スペースを広く取ってカットインしたりと、潤滑油としてチームのリズムを生み出した。後半は徐々にスコアが伸びだしたA東京がリードを広げ、最終的には67-51と、ロースコアゲームを勝ち切った。

【写真】アルバルク東京vs秋田ノーザンハピネッツの写真20点をチェック

冒頭の言葉のように、バランスキーは今季チーム最古参となった。長年A東京を支えてきた田中大貴がサンロッカーズ渋谷に移籍し、その田中の相棒だったアレックス・カークも退団。Bリーグでの連覇や2016年の開幕戦、さらにはNBL時代のA東京を知るのもバランスキー1人となった。



今季は初のキャプテンも任された30歳は、「特別何かが変わったわけではない」としつつも「今までのアルバルクの良さを伝えていく、それを行動で示していくのか他の方法なのかは分かりませんが、アルバルクの良さを伝えていくのが自分の役割だと思います。僕は英語も日本語も喋れて、みんなのつなぎ役になってチームの雰囲気を良くする、みんなが良いコミュニケーション取れるようにしていくタイプのキャプテン」とコミュニケーションの面でこれまで以上に大きな役割を担っている。

デイニアス・アドマイティスHCも「彼は冷静な判断とコミュニケーションが非常に良いです。選手同士、それにコーチと選手間も含めてコミュニケーションは必要です。キャプテンとして、コーチがいないところでのコミュニケーションもどんどんやってくれる選手なので、そこをシーズンを通してやっていってほしいです。コート上でも選手たちに思い切ってキャプテンとしていろいろなことを指示して、良い方向にチームを導いていってほしい」とバランスキーのコミュニケーション能力に期待を寄せている。



A東京は連覇を達成した2018-19シーズン以降、チャンピオンシップセミファイナルの壁を越えられていない。その間に当時の主力のほとんどが入れ替わり、現在は絶対的なエース不在ながら、テーブス海に吉井裕鷹、小酒部泰暉といったフレッシュな選手に、安藤周人やライアン・ロシター、橋本竜馬ら経験豊富な選手をそろえる魅力的な布陣を形成している。ホームアリーナも昨季から代々木第一体育館となり、チーム編成も、そして戦う環境も大きく変わるまさに変革期の最中にある。

バランスキーの役割も少しずつ変化しているが、「ディフェンスは変わらず自分の役割ですし、同じポジションにレオ(レオナルド・メインデル)が入ってきて、彼はすごいオフェンス能力があってどの試合でもしっかり点を取ってくれる選手なので、僕は流れを崩さない役割や逆に流れが悪くなったら自分が立て直す。コートでもつなぎ役というか、チームを崩させないのが自分の役割」と自身の役割は明確だ。



エゴを捨て去り、チームがまとまることを最優先に考える──それは過去の成功体験から来るものでもある。「タレントがそろっている中で誰かがロールプレーヤーにならなきゃいけないと思うので、そこは自分の役割。もちろん行けるときは自分で行かなきゃいけないですし、逆にみんながエゴを捨てなきゃいけないときもあります。でも、まずは僕がそれをやらないと誰もやらないのかなと思います。フォア・ザ・チームの精神を自分が伝えていかなきゃいけない」



どの時代もタレント集団と言われるA東京にとって、優勝するための最大の課題は、そのタレントがどう融合するかである。バランスキー自身も大学まではどのカテゴリーでもエース級の活躍をしてきたが、A東京では常にロールプレーヤーとして立ち回り、成功を収める上で重要な役割を担ってきた。だからこそ、彼は言う。

「1人1人が自分のエゴは持ちつつ、同時にそのエゴを捨てる覚悟も持って本当にチームのために必要なプレーをしたり、仮に自分が試合に出られなくてもコートの選手を応援するとか…自分の活躍だけじゃなくて仲間の活躍を喜ぶような選手がそろったときのアルバルクが一番強いです。僕はアルバルクで10シーズン目ですけど、今まで見てきた優勝チームはそれができていたのかなと思います」

取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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