月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.10.23

松脇圭志、琉球を支える精神面のバランサー「自分勝手にやるのは違う。うまくいっているのならそのまま」

Bリーグ2023-24シーズンの第3節。横浜ビー・コルセアーズのホーム、横浜国際プールに乗り込んだ琉球ゴールデンキングスは、第1戦で66-89の大敗を喫したが、第2戦では88-70と見事なアジャストを見せてリベンジ。シリーズを1勝1敗として、次節・ホーム開幕戦へとつなげた。

この試合はヴィック・ローと田代直希が欠場し、これまでとは異なるラインナップで試合に臨んだ。外からは今季初スタメンの今村佳太が多彩な攻めを見せてチームを引っ張り、インサイドではアレン・ダーラムがパワフルなプレーで横浜BCのビッグマンを圧倒した。

【写真】琉球ゴールデンキングスvs横浜ビー・コルセアーズの写真16点をチェック

2人を軸に全選手が効率良く得点して勝利した“キングスらしい”試合展開だったが、本稿では、その中で松脇圭志にフィーチャーしてみたい。

185cm、90kg、26歳のシューターは昨季のBリーグファイナルでは要所の3Pシュートに当時千葉ジェッツのクリストファー・スミス(現NBLブリスベン・ブレッツ)への見事なディフェンスで優勝に大きく貢献。経験と自信を持って琉球での2シーズン目を送っている。

この試合はセカンドユニットとして登場し、22分30秒のプレーで3本の3Pを含む11得点をマーク。ショットアテンプトは7本と決して多くないが、それらを効率良く沈めていった。




松脇の得点のほとんどは横浜BCにとってやられたくないタイミングでの得点で、昨季ファイナルや学生時代と変わらぬ冷静なものばかり。特に、9点差で迎えた2Q残り7分30秒には相手ディフェンスをポンプフェイクで巧みに跳ばせてミッドレンジジャンパーを射抜いてみせた。常にポーカーフェイスでシュートを決めてもファウルを取られても表情一つ変えない松脇。「あんまり感情の起伏をしないようにしていて、それによって自分のプレーに影響が出るのが一番嫌」と、若くして効率を追い求めた選択をしている。

桶谷大HCは松脇について「彼は精神的にぶれないですし、いつでも自分のシュートを打ち続けられるのが彼の良さです。常に冷静にプレーしてくれるので、彼が味方で良かったなと思います。あれだけ冷静に決めたり、今日の試合ではポンプフェイクをしてシュートを決めたり、あの年齢でよくあの域までにたどり着いているなと思います」と絶賛している。

「いつからそんなに冷静なのか?」。そう松脇に尋ねると「前からこんな感じで自分が冷静だとかはあまり思っていませんが、変わらず…中学生くらいのときからこんな感じ」と答えた。別の機会にチームメイトで同い年の牧隼利に松脇について聞くタイミングがあったのだが、ジュニアオールスターで対戦した中学時代から松脇を知る牧はこう語っていた。「彼は良い意味で今と同じような印象で、中学生なのに落ち着きがあってそのときからシュートもすごく上手でディフェンスでも読みが冴えていました」「対戦していていつも良いところで3P を決められるような感じだったんですよね。マツがボールを持つと嫌な感じがするというか」

学生時代はバリバリのスコアラーとして鳴らしていたが、それでも決してエゴを出しすぎることもなく、仕事人のような活躍を続ける──松脇のスタイルはプロになった今でも変わっていない。

「常に冷静でいるのは大切。チームとしても冷静さは大事で、みんなが冷静じゃなくなったときにチームは崩れると思うので、僕に限らずそういうときに冷静な人がいるのはチームにとっても大事です。そこまで深くは考えていませんが、自分の中では常に冷静でいようと心がけています」




では、選手としてのエゴはゼロなのか?そうではない。

「(シュートが入っているときは)そういうマインドになったりしますが、それでそうなり過ぎちゃうのは良くないですし、自分勝手にやるのは違います。うまくいっているのであれば、そのままいきたいですし、僕がボールを欲しがることでチームが崩れるのであれば、それはキングスのバスケではない。みんなすごく良いところがあるので、それを出し合ってやっていくのが自分たちが勝つのに必要なことです」

必要なエゴを必要なだけ出す。それが松脇の考えであり、琉球のカラーだ。ゴートゥガイとして優勝に貢献した今村でさえも「中心としてやっていく責任は感じているので、そこは責任を持ってやっていきたいですが、でも、その時々でホットな選手がいるので、そこを生かすのが僕らのスタイル」と言い切り、松脇については「昨季の終わりくらいからシュートに迷いがなくなったのかなと思います。それに、マツはビッグショットを決められる選手だと僕は思っています。とはいっても、彼にもリズムは必要で、彼の打ちたいタイミングでどれだけチームでパスを供給できるか。ビッグショットもそうですが、マツはオープンショットを確実に決め切れる選手なので、僕らもそこをすごく信頼しています。彼にはこのまま、ゴートゥガイではないですが、そういう役も担ってほしい」と、より輝くことを求めている。

このマインドセットが琉球が昨季優勝した大きな要因だったことは間違いない。松脇のプレーぶりや言葉、そして桶谷HCやチームメイトの証言からも、琉球の強さの源を垣間見ることができる。

写真/©︎B.LEAGUE、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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