月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.10.18

好スタートを切ったB2青森ワッツで急成長中の常田耕平にインタビュー

10月15日の越谷アルファーズ戦勝利直後の常田耕平(写真/©B.LEAGUE)

31敗と好調なスタートを切った青森ワッツで、若手ポイントガード、常田耕平が輝きを放っている。1015日に越谷市立総合体育館で行われた越谷アルファーズとのシーズン4戦目では、どちらもシーズンハイとなる15得点に4アシストで81-77の勝利に貢献。この試合を終えた時点での3P成功率53.8%(13本中7本成功)がB2全体3位という高確率だ。3試合目を終えた時点では55.6%[9本中5本成功]でトップタイだったので、試合後そのことを伝えながら本人に聞かせてもらった。「ほんとですか!?」とびっくりした様子で笑顔を返した常田の好調の要因は何か。


「自分もいるよ! みたいな感覚でやれました」

——ここの体育館は相性がいいそうですね。

出身高校が正智深谷で、ここの体育館でよく試合をしていました。埼玉県の決勝をここで戦ったことがありましたし、同じチームメイトのホール百音アレックスと東海林 奨の昌平と対戦したことがよくあって…。そうですね、この体育館は調子がいいです! やりやすいというか、埼玉県ということで気持ちも入りますし、高校時代の同級生とかも見にきてくれたりしていたので、気合いは入っていましたね。

——大活躍を披露できて良かったですね! 何か調子が良くなる要因はあったんですか?

今日の試合に関しては、昨日ちょっとトラブルがあって池田祐一選手が出られない*1となって、「池田選手がいないと勝てない」と言われたくなかったです。前節も昨日の試合も池田選手がすごくアグレッシブにやってくれていたので、池田選手のチームという見られ方もすると思います。ジェイ*2も昨日すごくシュートが入っていたこともあったし、「自分もいるよ!」みたいな感覚でやれました。


今シーズンという意味では、昨シーズン外国籍選手に依存しすぎてしまった部分があったので、やっぱり自分が点数を獲りにいかなきゃいけないなというのは、すごく意識してやっていて、シューティングにも自信を持てていると思います。シーズンを通して波はあると思いますが、それは人間ですから。日本代表でも外すときは外すので、今はただ思い切りよく打つことを意識して打てているのが、いい方向につながっていると思います。

*1=池田は今シーズン青森の日本人プレーヤーでは最高の平均13.3得点を記録しているポイントガードだが、前日の試合でテクニカルファウルを2つ宣告され、この試合では出場停止処分となっていた
*2=ジョーダン・ハミルトンのニックネーム。ハミルトンは前日の試合で3Pショット12本中5本を沈めて32得点を記録していた


越谷との2試合で常田はフィールドゴール15本中8本成功、3Pショットも5本中3本成功と好調さを強く印象づけた(写真は14日の試合から/©B.LEAGUE)

――何かを変えたわけではないんですね。

フォームを変えたりはしてはいません。一番大きいのはメンタルですね。ただただ点数を獲りにいくことだけを考えてプレーすればいいというようなことを、周りの方々や外国籍の選手たちもずっと言ってくれるので。昨シーズン、いっぱい試合に出られたことが大きいと思います。いっぱい出してもらいましたし、アルティーリ千葉に移籍したアレックス・デイビス選手にもいろいろとマインド的なところを教わりました。いい経験を積んだことで、青森での2シーズン目は最初よりは余裕があるかもしれません。

――場慣れとか水になれたみたいな?

そうですね! まだ“ペーペー”ですけど、昨シーズンの経験はすごく大きいです。プレーオフに出たという自信もつきましたし、チームとしてもそこを当たり前にしようという流れができているので。

——今シーズンの目標はどんなことですか?

B1昇格がチームの目標です。昨シーズンはプレーオフ出場という目標を達成できたので、チームとしてもフロントとしても新しい目標に向かっています。そこは絶対にブレちゃいけないところですね。個人的には、チームを勝たせられるプレーヤーになるというのが今の目標です。それを達成できれば、プレーオフもその上の目標も達成できるかなと思っています。


「お前が全部打ってこい!」――さらなる成長に期待を寄せる高原純平HC

青森の高原純平HCは今シーズン、常田や東海林、そして佐藤大介ら若手のステップアップに非常に大きな期待を寄せている。「彼らがいい刺激にならないとチーム力が上がらないという話を全員に伝えてあります」と話し、常田個人に関しては以下のようなコメントを残していた。

「まだまだルーキーで、これからできることはもっと増えてくるので、現状に満足せずやっていってもらいたいです。彼も池田がいないことによってバックアップのガードが自分になることを理解しているので、池田がいなくても自分がいれば勝てるんだというぐらいのモティベーションでやっていたと思います。ゲームに出す前には『お前が全部打ってこい!』と話もしていました」


10月15日の試合後会見での高原純平HC(写真/©B.LEAGUE)

越谷とのGAME2で青森は、序盤に先行され第1Q15-25の劣勢で終えた後、第2Qは常田が最初の得点で流れを作り、21-5のランで一気に36-30と逆転に成功した。常田はその間に11得点と非常にアグレッシブなプレーぶり。高原HCは越谷市立総合体育館にゆかりのある常田や東海林、ホールらにラッキーボーイ的な要素もあることを感じ取りながら起用したことも明かしていたが、常田はもちろん、結果的に決勝点となるフリースローをきっちり2本沈めるなど終盤に活躍した東海林、4本中3本のショットを成功させて効率よく7得点を記録したホールらの貢献は、指揮官の勝負勘の冴えを感じさせるものでもあった。

高原HCも言及している通りまだまだ若手の常田を、特段に持ち上げるのは必ずしも良くないかもしれないが、常田の好調ぶりはチームの好スタートを象徴する出来事の一つとしてとらえられるのではないだろうか。その背景には、若手の背中を押すチームとしての期待と信頼があるのだ。「今は思い切り打てているということをとにかく継続していきたいです」。すがすがしい笑顔でそう話した常田の活躍とともに、青森躍進の予感も膨らんだ第2節だった。


勝利の喜びを分かち合う常田とハミルトン。今シーズンはこんな光景を見る回数が昨シーズンよりも増えそうだ(写真/©B.LEAGUE)



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 青森ワッツ 常田耕平正智深谷

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