月刊バスケットボール6月号

相楽伊織のバスケ大好記②「“やっぱりバスケはおもしろい”と感じたW杯。日本バスケの歴史が変わる瞬間を見られたのもよかった」

本当にすごかったです!!!


こんにちは。相楽伊織です。
皆さん、もちろんワールドカップ(W杯)見ていましたよね! 大会前、私は『ドイツ、フィンランド、オーストラリアと同じ組に入ったグループ戦で勝つのは難しいだろうな。勝利を挙げるとしたらその後の順位決定戦だろうな』と思っていたのですが、なんとグループ戦でフィンランドに勝利。この時点で私の予想は外れましたが、すごくうれしかったです。

そして順位決定戦では、ベネズエラとカーボベルデに勝利し、アジア1位となって自力でパリ2024オリンピックの出場権を獲得しました。本当にすごかったです!!! 今回は、私も大興奮で見守っていたWCの観戦記を書きたいと思います。

完敗したものの次につながるプレーもあったドイツ戦


まず、グループ戦1戦目のドイツ戦。スタートに原修太選手が入っていたのがうれしかったです。相手のフィジカルの強さに対抗できる原選手は大事なんだな、と改めて思いました。この試合、1Q目は渡邊雄太選手が3Pを2本決めるなど日本もいい感じでしたが、ドイツはデニス・シュルーダー選手、モリツ・バグナー選手がめちゃめちゃ強かった! わたしが気になったのは、日本のフィニッシュが渡邊選手ばかりになっていたこと。渡邊選手に頼る感じのパスが多く、『大丈夫かな?』と思っていました。

結果的に63-81で敗れましたが、4Qに馬場雄大選手のアシストから渡邊選手がアリウープを決めたこと、馬場選手のキックアウトから河村勇輝選手が3Pを沈めたこと、富永啓生選手が残り57秒で3Pを決めたことは唯一の救いというか、次につながるプレーになったかなと思います。

写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)
日本のフィニッシュが渡邊選手ばかり、気になっていました

フィンランドから歴史的な勝利


グループ戦2戦目のフィンランド戦は、2Qの途中から出てきた富永選手の3Pの調子がよかったですね(試合を通じて4/7の57.1%)。
ドイツ戦で最後に3Pを決め切ったことが、この日につながっている感じがしました。その富永選手に限らず、日本は相手に3Pをすごく警戒されていましたね。でもそれを逆手にとってペイントアタックして得点を取れていたので22-15とリードできたとのだと思います。

それでも2Qになると、フィンランドのディフェンスの強度がグンッと上がりました。日本の得点が停滞している間に追いつかれると、その後は36-46と10点差をつけられました。それでも、ジョシュ・ホーキンソン選手がリバウンドを取っていたり、富永選手がディープスリーを決めていたりと、そんなに悪い流れではなかったのかなと思います。

後半で逆転勝ちしたのは、河村選手と富永選手が3Pをどんどん決めたこと、ホーキンソン選手がリバウンドを取ってくれたのでみんなが自信を持ってシュートを打てたことが大きいと思います。
特に最後は『河村劇場』というくらい河村選手がすごかったですね。


活躍してくれた河村選手と比江島選手


そんな中、私が注目したのは比江島選手と富樫勇樹選手です。
比江島選手は相手ディフェンスのリズムを崩すのがうまく、富樫選手は的確な指示を出してオフェンスのリズムを整えていました。
『やっぱりこの2人はコート上での存在感があるな』と思いました。

また、トム・ホーバスHCの指揮官としてのすごさも感じました。采配はもちろん、選手へのメンタルケアもすごいなと。正確にはどんなことを言っているのか分からないのですが、ホーバスHCの言葉を聞いた選手たちが、その後に自信を持ってプレーしているのは分かりました。戦術だけではない部分、選手との絆など繋がっている部分があるからできることなんだろうな、と思いました。

負け試合でも最後まで戦い抜いたホーキンソン選手がカッコいい


オーストラリアとのグループ戦第3戦は、日本も3Pを入れるなど悪くはないと思ったのですが、2Qぐらいからオーストラリアのスピードを止められず飲み込まれましたね。
オーストラリアは特別なことをしていないのですが、どんどん点差が開いていってしまいました。

そんな中でも『すごい!』と思ったのがホーキンソン選手です。
ゴール下で頑張って戦っていたかと思えば、先頭を走ってダンクを決めたりしていました。フィンランド戦では37分32秒の出場で、このオーストラリア戦も36分28秒の出場と2試合ともフル出場に近く、体はボロボロだったと思います。それでも最後まで走って戦う。本当にカッコよかったです。


体はボロボロのはずなのに最後まで走っていたホーキンソン選手、本当にカッコよかったです

比江島選手のプレーに感動したベネズエラ戦


ベネズエラ戦は、試合を通じて河村選手の活躍がすごかったと思います。ディフェンスでは相手に圧をかけ、アシスト11本、そして19得点。そのうち2回が中に切れ込んでのアンドワンで、それまでアシストに徹していた感じだったので『またパスかな』と思っていたところでのリングへのアタック。このアンドワン2本の効果は大きかったと思います。

試合は3Q終了時点で53-62と点差を付けられましたが、4Qはもう比江島選手の爆発力がすごくて止まらなかったですね。
完全にゾーンに入っていて、残り5分48秒で10点ビハインドだったのが、比江島選手が3P、2Pジャンパー、3Pと連続得点したことで一気に68-70まで迫り、その後、73-74から比江島選手のレイアップでとうとう逆転(残り1分55秒)。
その後、点差を9点まで広げて勝利しましたが、比江島選手のプレーには本当に感動しました。


比江島選手のプレー、本当に感動しました

勝負どころでホーキンソン選手が頼もしい活躍を見せたカーボベルデ戦


WC最後の試合となったカーボベルデ戦は、渡邊選手のダンク、ホーキンソン選手や富永選手の3P、河村選手のバスカン、吉井裕鷹選手のナイスディフェンスなどがあり、3Qを終えて73-55とリード。
特に富永選手は3Q後半までに6本の3Pを打って全て成功させるなど本当にすごかったです(試合を通じては6/8の75%)。

でも4Qになると試合が一変。
7分以上も得点できず73-68と5点差まで迫られました。これまでの4戦はずっと追いかける展開でしたが、初めて追われる立場になったのも原因でしょうか? 2006年に日本で開催された世界選手権(今のW杯)で、ニュージーランド相手に前半で18点リードしていたのに最後は3点差で逆転負けしたことを聞いていたので、『もしかして…』と不安でドキドキでした。
でも、そんなときに活躍を見せてくれたのがホーキンソン選手。日本はこの4Qで7点しか取れていないのですが、ホーキンソン選手がアンドワンと3Pで6得点、比江島選手がフリースローで1得点。本当にホーキンソン選手がいてくれてよかったです。


本当にホーキンソン選手がいてくれてよかったです

やっぱり日本には3Pが必要だったそして気持ちも勝利の大きな要因に


WCの日本戦を振り返って思うのは、『ホーバスHCが3Pを40%以上の勝率で決めれば勝てると言っていたのは、間違いじゃなかったんだな』ということ。それを象徴するのが、フィンランド戦で213cmのラウリ・マルカネン選手にマークされながらもディープスリーを決めた河村選手のプレーだと思います。

またWC前は、世界のバスケ強豪国から1勝を挙げるのは簡単ではないとみんな分かっていましたが、それでもホーバスHCや選手、スタッフの皆さん、そしてブースターも『アジア1位になってパリ2024オリンピックの出場権を勝ち取る』という目標が達成できることを信じていました。
実際、自力でパリ2024オリンピックの出場権を得ることができた今、『技術や戦術・戦略が大事なのはもちろん、気持ちもすごく影響するんだな』と思っています。

また改めて思うのが『バスケって本当にチームスポーツだな』ということ。どういうことかというと、シュートが入らないときは本当にペイントエリアから打っても入らない。でも、誰かがダンクを決めたり、ディープスリーを決めたりと流れを変えるプレーをすると、その後はみんなのシュート確率が上がっていく。
『やっぱりバスケはおもしろい』と感じたW杯でしたし、日本のバスケの歴史が変わった瞬間を見ることができて本当によかったです。







Profile
相楽伊織 Iori Sagara
1997年11月26日、血液型0型 出身地:埼玉県出身、身長:164cm
2013年乃木坂46の2期生として加入。 愛称は「いおり」「いおちん」。特技はバスケ、ジャグリング。学校の都合で1年遅れて同期生に合流。2018年7月に卒業し、現在はファッショ ンモデルや女優として活動。 2020年にBリーグ「サンロッカーズ渋谷」チームナビゲーターに就任。バスケットボールの魅力をSNSでも発信している。
[Instagram] https://www.instagram.com/_iorisagara264_/
[X] https://twitter.com/1126iorisagara


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文/相楽伊織、日本代表写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)

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