引退宣言からパリへ──渡邊雄太「この12人が最強のメンバー、すごく誇らしい」
「いろんな選手がステップアップしてやっていくのが、本来の強いチームのあり方」
男子日本代表は目標の「FIBAワールドカップ2023」でのアジア1位、つまりはパリ・オリンピックの出場権を獲得した。自力でのオリンピック出場権獲得は実に48年ぶり。昨夜は日本中が歓喜に湧いた。
五輪への切符をつかめなければ代表引退──日本中を動揺させた渡邊雄太の発言は、無事になきものとなり、今度は「死ぬまで代表でい続けたい」という力強い言葉へと変わった。
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渡邊自身、アンゴラとの強化試合での足首の捻挫に加え、ドイツ戦でアリウープダンクを決めたあと左のハムストリングを痛めたような仕草を見せたが、「あとで映像を見たら走り方もすごく変だった」と立っているのもやっとの状態だったという。「歩くのが激痛で、フィンランド戦の前日練習の後すぐに病院に行きました。夜中の11時とか12時だったんですけど、MRIを撮りに行ったんです。幸い大きな損傷は見られなかったので、あとは痛み次第で明日(フィンランド戦)をどうするか決めようということで、朝も正直、ベッドから起き上がるのも痛かったんです。ただ、ちゃんとMRIを撮ってドクターたちとも話して、痛みが酷かったんですけど信頼できるとトレーナー陣やドクターがいてくれたおかげで、痛みがある中でも、プレーすることができました。痛みの質的に肉離れだと思ったんですよ。正直、離脱の覚悟もしていた」と明かすほど、ハムストリングの負傷は深刻なものになっていたかもしれないものだった。
その中で、フィンランドとの大一番ではNBAオールスターのラウリ・マルカネンを常にマークし、思うようなリズムで得点させなかった。オフェンスでは仲間を信じ、彼らが最高の形で躍動してくれた。渡邊は言う。「いろんな選手がステップアップしてやっていくのが、本来の強いチームのあり方だと思うので、本当このチームがすごい誇らしいです」
バスケットボールは5人で戦うスポーツだ。そして、コートの5人だけでなく、ベンチに控える選手たちもそれぞれの役割を果たしながら戦っている。その意味では今大会の日本代表は、史上最も“チームらしいチーム”だったのかもしれない。
勝利した3試合は、フィンランド戦が河村勇輝とジョシュ・ホーキンソン、ベネズエラ戦が比江島慎、そしてカーボベルデ戦が富永啓生とホーキンソンと、日替わりでヒーローが誕生し、逆に苦しい場面ではエースの渡邊がチームをけん引した。
「その日に当たっている選手に打たすべきで、そういう選手に攻めさせることが大事だと思っていたので、僕は僕のできることに徹しようと思っていました。フィンランド戦では足が動かない中でマルカネンのマークという大役を任されたので、途中からはそれに全力を尽くすことに集中して、ベネズエラ戦はマコ(比江島)が当たり出したので、僕はサポートできるディフェンスやリバウンドを頑張ろうと思っていました。今日もすごく疲れていたんですけど、啓生や河村が当たって、ジョシュも向こうのビッグマンが付いている中で、ズレができていました。今日は最初からある程度はジョシュにやってもらいたいと思っていましたし、本当にみんながやってくれました」
渡邊は今大会の自身の戦い、そしてチームメイトの活躍ぶりをそう振り返った。最強の12人で戦い抜いたアカツキジャパン、そして渡邊は最高の笑顔で大会を終えた。
■FIBAワールドカップ2023日本代表試合結果予定
ファーストラウンド・グループE
・8月25日(金)日本☓63-81◯ドイツ[11位](21:10ティップオフ)
・8月27日(日)日本◯98-88☓フィンランド[24位](21:10ティップオフ)
・8月29日(火)日本☓89-109◯オーストラリア[3位](20:10ティップオフ)
※日本1勝2敗:グループE3位
[17‐32 位順位決定リーグ]
・8月31日(木)日本◯86-77☓ベネズエラ[17位](20:10ティップオフ)
・9月2日 (土)日本◯80-71☓カーボベルデ[64位](20:10ティップオフ)
※日本3勝2敗:グループO1位
※順位はFIBAランク
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写真/石塚康隆 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)