月刊バスケットボール6月号

大逆転勝利の立て役者・河村勇輝を突き動かした魔法の力

日本代表での自身の役割が
真の意味で明確に


「FIBAワールドカップ2023」でアジア1位になり、パリオリンピックへの出場権を獲得する。その目標に向けて大きな一歩となる勝利だった。


男子日本代表はワールドカップ2戦目でFIBAランキング24位のフィンランドと対戦。3Qには一時18点のビハインドを背負う中、最終4Qに35-15の猛攻を見せ98-88の大逆転勝利を果たした。

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チームとしては渡邊雄太が振るわず僅か4得点にとどまる中、前半は比江島慎がアグレッシブなペイントアタックや3Pで14得点(計17得点)、さらにはジョシュ・ホーキンソンが試合を通してインサイドで力強いプレーを見せて28得点、19リバウンドでゲームMVPを受賞。さらには劣勢の後半に富永啓生が立て続けに3Pを沈めて反撃の狼煙を上げ、吉井裕鷹もディフェンスで大きな貢献を見せるなど出場した全員が役割を全うした。


3Q終了時点でその差を10点(63-73)に縮めると、4Qは河村勇輝のショータイムが幕を開ける。河村はドイツ戦で7得点、3アシストを挙げているが、3Pは2/9であり、打たされたショットも多かった。本人も「ドイツとの試合を振り返ってみて、簡単な1対1での3P、打たされる3Pが多かったと思った」と言い、「(今日の試合は)1対1のところでとにかくペイントアタックすること。そこを意識して1Qから入っていけたと思うので、そこはドイツ戦がなければやれなかったことかなと思います」と、ドイツ戦からの学びを見事に修正した。

チームとしても比江島や馬場雄大、富樫勇樹もドイツ戦よりも積極的にドライブを仕掛け、そこにスリップして入ってきたホーキンソンが合わせるなど、相手のディフェンスを撹乱する「先に仕掛けるバスケ」が見られていた。


写真:石塚康隆(月刊バスケットボール)

チームとしても日本らしいバスケが全面に表現された


そして、フィンランドをさらに悩ませたのが日本の3Pだ。チーム全体として見ると前半は3/11と試投数、成功数ともに伸び悩んだ。しかし、3Qは富永の2本と比江島の1本で3/3、4Qは河村がオンボールから4本を集中砲火し最終的には11/28で39.3%と、高確率で長距離砲を沈めることができた。

河村は逆転のアンドワンレイアップを含めて4Qだけで15得点をマーク(合計25得点、9アシスト)。その要因について以下のように言及している。「積極性だと思います。ここ最近ずっとシュートが入らなくてチームメイトにもトムさんにも迷惑をかけました。ファンの皆さんの期待にも応えられないすごく悔しい気持ちがあったんですけど、チームメイトやトムさん、ファンの皆さんが僕のプレーを信じてくれて、その信じてくれた思いだけのシュートかなと思うので、たくさんの方に感謝したいです」

終盤には完全にゾーンに入り、フィンランドのエースであるラウリ・マルカネンを鮮やかに抜き去ってホーキンソンへのアシストを供給したり、さらにはマルカネンとの1対1からハイアーチの3Pを決めるなど、中でも外でも支配的な活躍を見せた。


このパフォーマンスは彼にとって、日本代表での自分の役割が真の意味で明確になった瞬間でもあった。「ペイントアタックをしてアシスト供給することだったり、ペイントアタックしてそこでズレが作れなくても、ボールをリングの方に押し込むだけでオフェンスの流れが変わってくると思います。今後の自分のキャリアにおいてもペイントアタックは強みになると思います」。この言葉には確たる自信が感じられた。

トム・ホーバスHCはドイツ戦後の会見で、河村についてこう口にしていた。「もっとできるかなと思います。悪くないけど、僕は彼の特別なプレーを見ていますからまだまだです。でも、彼については自信がありますし、大丈夫です。彼は本当にステップバイステップで、この試合の経験は大きいです。3Pも決めましたしディフェンスも良かった。相手(ドイツ)も彼のディフェンスは本当に嫌だったと思いますよ。ターンオーバーは少しありましたが、これから河村の特別なプレーが見られると思います」

ホーバスHCの言葉は最高の形で予言という結果となった。周囲からの信頼と河村自身が自分の武器を明確化したこと。それが河村の名を全世界にとどろかせる魔法の力となったのだ。

写真:石塚康隆(月刊バスケットボール)



■FIBAワールドカップ2023
ファーストラウンド・グループE日本代表試合予定
・8月25日(金)日本vs.ドイツ[11位] ⚫️63-81
・8月27日(日)日本vs.フィンランド[24位] ○98-88
・8月29日(火)日本vs.オーストラリア[3位](20:10ティップオフ)
※順位はFIBAランク


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写真/石塚康隆 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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