月刊バスケットボール6月号

日本代表、フィンランド戦のカギはいかに「質の良い」ショットを作れるか

本来のプランを崩されたドイツ戦からの学び

FIBAワールドカップ2023」がいよいよ開幕し、日本は初戦でドイツと対戦。FIBAランキング11位、今大会のパワーランキングではアメリカに次ぐ2位の強豪相手に前半で22点のビハインド(31-53)を背負い、その点差が最後まで尾を引く形で63-81の敗戦を喫した。


【動画】日本代表vs.ドイツ代表ゲームハイライトを見る

【写真12点】日本代表×ドイツ代表フォトギャラリーをチェック

後半だけを見れば32-284点リードしており、かつ前半で53を記録したドイツの得点を約半分の28にとどめた点では、兆しの見える終わり方だったと言える。トム・ホーバスHCも後半のスコアについては「ハーフタイム時点で後半戦に勝つことが目標でした。1点でも2点でもいいからとにかく後半戦に勝つ。そうすれば(今後の)大会に向けても良いものを作り上げることができますから」と、振り返っている。

問題は自分たちのオフェンスにあった。日本代表が勝つための一つの指標として3Pシュート試投数3540本かつ成功率3540%というものがあるが、ドイツ戦では試投数はまずまずの35本に対して成功数はわずか6本の17.3%と沈黙。さらにはフリースローも11/1764.7%と低調に終わってしまい、全体的なシュートタッチは大きな課題として突きつけられた。

特にアンゴラ、フランス、スロベニア相手にハイボリュームで3Pを打てていた富永啓生(3試合で合計12/3633.3%)が試投数わずか2本に封じ込められてしまった点は日本にとって最も大きな打撃だった。富永は試合後、自身が封じ込められてしまった点について、ドイツのスカウティングによるところが大きかったと認めている。「ドイツは一つ一つのスカウティングがしっかりしていて、シューター陣にはすごくチェックが激しかったです。シューターとノンシューターのところのスカウティングをすごくやられた印象でした」


富永自身も日本がビハインドの場面で試合に入ったことで「その場面で自分がタフショットを打っても余計流れが悪くなるので、それを考えながらプレーするのは難しかったです」と、普段よりも慎重になってしまっていた。富樫勇樹も似た内容のコメントを残している。「もちろん自分が打てれば良いですが、無理して打つわけではないです。相手が3Pを警戒してきた中で、ドライブから(渡邊)雄太やジョシュ(ホーキンソン)にいくつかのオープンショットを作れましたし、それは自分のやりたいところ。開けば打つチャンスは狙っていますが、正直、今日に関しては自分のリズムの中でのシュートは打てなかったです」

ホーバスHCも「ドイツは富樫をよく守っていました。彼にペネトレイトさせず、ステップバックの3Pも打たせなかった。富樫はクリーンルックでのチャンスを得られなかったです」とドイツのディフェンスを称賛している。


渡邊にオープンの3Pをいくつか打たせることができたのは好材料

渡邊は2/10と成功率こそ低かったが、ある程度オープンな3Pは打てており、富樫も「打つべき選手、特に雄太の3Pは多く作れました。チームとしてそれが一番したいことだったので、そこは作れたと思います」と語っており、オープンにできているショットについてはフィンランド戦も継続し、決めることだけだ。問題は渡邊と並ぶ富永と富樫の3Pをほぼ完璧に守られ、逆にここまであまり試投数が多くなかった河村勇輝はショットクロックぎりぎりのやむを得ないショットも含めて9本(成功2本)の3Pを打つように仕向けられた。こうした本来のプランとは違った形で攻めざるを得なかったことが、最後まで今ひとつリズムを作れなかった大きな要因だった。

富樫は言う。「全く歯が立たないかと言ったらそうではないです。『ここで1本決まっていれば流れがくるのに』という場面が有明アリーナでの強化試合も含めていくつかあったので、そういう1本を決められるチームになっていかなければいけない」

ある意味ではドイツが日本を守る一つの答えを導き出したともいえ、フィンランドも富永や富樫、渡邊の3Pに似たようなケアをしてくるかもしれない。だからこそ、1本でも多く質の高い3Pを作れるかがカギとなる。

そのためにはガード陣のペネトレイトもしかり、スクリーナーとなるビッグマンの役割も重要。川真田紘也はこれまでできてきたピックプレーやハンドオフでズレをなかなか作れなかったことについて「強化試合のチームももちろん(ディフェンスの圧は)強かったんですけど、それよりもドイツはランク的にも高いので、強度の部分ではよりキツかったです」と認めた一方、「今日できなかった部分を繰り返さないように、次に向けて何ができていなかったのかを追求してやっていきたい」と気持ちを新たにしていた。これは収穫だ。

 

フィンランドのラウリ・マルカネン 


ドイツにはモリッツ・バグナー、ダニエル・タイス、ヨハネス・ボイトマンというフィジカルとサイズのある3人のビッグマンがいたが、フィンランドに関してはラウリ・マルカネンを除くとドイツほど強力なインサイドプレーヤーは多くない。その面ではハンドラーやウィングの選手がよりアグレッシブにドライブを仕掛けることができるはずだ。そこに川真田やホーキンソンがドイツ戦を踏まえてアジャストすることができれば、より期待値の高いシュートを演出できるだろう。


シュートは水ものだが、日本のオフェンスでの生命線はどう転んでも3Pシュートだ。ドイツ戦でディフェンスの手応えを得られただけにオフェンスを改善できれば兆しはある。富樫、富永、渡邊ら打つ側も、川真田や河村ら打たせる側もここまで貫いてきた日本のバスケットを、今夜のフィンランド戦では最高の形で表現したい。

[関連]🌺W杯バスケ公式オンラインショップ🏀

[関連]W杯バスケ 公式ガイドブック発売中❣❣



■FIBAワールドカップ2023
ファーストラウンド・グループE日本代表試合予定
・8月25日(金)日本vs.ドイツ[11位] ⚫️63-81
・8月27日(日)日本vs.フィンランド[24位](21:10ティップオフ)
・8月29日(火)日本vs.オーストラリア[3位](20:10ティップオフ)
※順位はFIBAランク


写真/石塚康隆 取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

PICK UP