月刊バスケットボール6月号

初のワールドカップに挑む吉井裕鷹、鷹のごとく羽ばたけ!

「ドンチッチのバスケは全てが“後出し”だった」


8月19日、有明アリーナ(東京都江東区)に13,216人のファンを集めて行われた『SoftBank CUP 2023(東京大会)』でのスロベニア戦は、7月8日から続いていた男子日本代表の国際強化試合最後の一戦となった。詰めかけた多くのファンは日本代表がどこまでルカ・ドンチッチを擁するスロベニア(東京2020オリンピック4位)に食らいついていけるのか。また、ドンチッチを生で見られるチャンスを逃すまいとするファンも多く来場した注目の対戦だった。

【写真39点】日本×スロベニアフォトギャラリーをチェック


日本の代表活動は6月に始まっていたが、渡邊雄太の合流が7月末だったことやジョシュ・ホーキンソンが韓国遠征前に股関節を痛めるなど、なかなか万全とはいえないチーム状況が続いていた。その中での強化試合で、スターターに定着していたのが吉井裕鷹だ。体を張ったディフェンスだけでなく、短い出場時間でも確実に得点を挙げるなど、地歩を固める安定したプレーが光っていた。スロベニア戦では、パワーフォワードで起用されて3Qには馬場とのゴール下の合わせのプレーで、ドンチッチにアンスポーツマンライクファウルを誘発させた。その直後には、左45度からの3Pシュートをきっちり決め、さらにスイッチディフェンスではドンチッチに食らい付くしつこさも見せてくれた。

そこで、スロベニア戦後に吉井に話を聞いてみた。


──まずスロベニア戦を振り返っての感想をお願いします。

簡単にゴール下を決められないようにディフェンスをしながら、オフェンスでは自分たちのシュートを信じてというのをモットーにプレーしたんですけど、3Pシュートは20%ちょいに落ち込んでしまいました。ディフェンスはできている部分もあったにしろ、僕たちのターンオーバーが多かった(15本)ですし、それ以外のところでも簡単に(スロベニアに)速攻を許したり、簡単にレイアップに持っていかれる場面などもあったので、本番ではそれがないようにしていきたいです。

──ドンチッチとのマッチアップはいかがでしたか?

ドンチッチのバスケットは全部“後出し”でやってくるというか、最後の最後まで気が抜けないディフェンスを強いられるんです。腕が伸びきった状態でもめちゃくちゃ速いパスをコーナーに出すのは脅威でした。これからはそういったプレーにも対応しなければいけないのだと思いました。



ドンチッチについて「最後の最後まで気が抜けないディフェンスを強いられるんです」と語った吉井


──世界レベルを強化試合で感じることができたのは収穫ですね。

短い期間ではありましたが、僕たちのバスケットのどういった部分が通用しないのか、どういった部分が通用するのかが、よりはっきり分かったのは収穫だと思います。でも、これを良い収穫にしていくのは今後の僕たち次第ですから頑張ります。

──吉井選手自身は、オフェンスでも積極的にリングへアタックしていきましたね。

外からのシュートが多くなったイメージがあったので、ドライブを狙いました。でも、ターンオーバーになることもあったので、そこでのターンオーバーを減らして、周りを生かせるプレーができなければ…と思います。それにターンオーバーが多かったということは、まだ僕たちのバスケットを遂行できていなかったということですから、自分たちのバスケットをもっと確実に遂行していかなければいけないと思います。

──ディフェンスのローテーションについては?

狙いではあったんですけど、うまくローテーションできなかったのもありました。ドンチッチはスイッチした瞬間にパスを出すので、ローテーションのタイミングがなかなか難しかったです。

──合宿、強化試合と続いていますが、スタミナはいかがですか?

キツいですけど、そこは“誰が出ても同じようにバスケットができる”という日本代表の強みがあるので、それをプラスにしていくしかないです。

──次はいよいよワールドカップです。今のお気持ちは?

とにかく今回の3戦を収穫にできるように、しっかり準備していきたいと思います。

コート上ではいつでもクール。しかし、コートを離れると“ヲタ芸”を全力でやり切るお茶目な一面もある吉井。初めて挑戦する『FIBAワールドカップ2023』では、どんなプレーでファンを楽しませてくれるのか。沖縄の地で吉井の晴れやかな笑顔をたくさん見たい。




「今回の3戦を収穫にできるように、しっかり準備していきたい」



Profile
吉井裕鷹
よしい・ひろたか/SF/196cm・94kg/1998年6月4日生まれ/血液型・B型/アルバルク東京/東大阪市立金岡中学校→大阪学院大学高校→大阪学院大学出身/大阪府出身/ファンの皆さんへのお願い「歓声は大きく!」

取材・文/飯塚友子、写真/山岡邦彦、堀内涼(月刊バスケットボール)

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