月刊バスケットボール6月号

大学

2023.08.25

WUBS2023が大学バスケにもたらした5つの革新的意義

©月刊バスケットボール

810日から13日までの4日間、国立代々木競技場第二体育館を舞台に開催されたWUBSSun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)は、日本を代表して出場した白鷗大と東海大を含め、世界の7つの国と地域から8チームがそれぞれの誇りを胸に情熱をぶつけ合う白熱した試合の連続となった。優勝したのはチャイニーズ・タイペイのチャンピオンとして来日した国立政治大(以下NCCU)。王座獲得に至る3試合は日本のインカレ王者東海大、本場アメリカのNCAAディビジョン12023-24シーズンに躍進が期待されるラドフォード大、そして一昨年日本一となった白鷗大といずれも強敵相手だったが、堅固なチームディフェンスと爆発的なパワーを持つビッグマン、モハメド・ラミン・バイェらの活躍で勝ち続けた。


各チームが披露してくれたバスケットボールはコンテンツとして非常に面白かったのはいうまでもない。しかし今年2回目を迎えたWUBSの開催期間中には、それとは別に、様々な場面で革新的な開催意義を感じることがあった。ここではあらためて、その点にフォーカスを向けて大会を振り返る。

大会の意義を体現した国立政治大の優勝

ある意味、NCCUの優勝自体も、今大会の革新的意義を体現するような側面がある。NCCUは昨年、4チームの参加で初めて開催されたWUBSで、アテネオ・デ・マニラ大と東海大に敗れ3位という成績だった。その位置から、規模を拡大して競争も激化した今大会で頂点を極めるに至ったわけだが、チームの完成度は他チームと比べると段違いに高かった。


チャイニーズ・タイペイからやってきた応援団の前でWUBS初優勝を喜ぶNCCU(写真/©月刊バスケットボール)

チャイニーズ・タイペイの大学リーグUBAはオフの期間にあたっている。しかし彼らはNCAAディビジョン2のチームを含む海外チームとの対戦を重ね、昨年の悔しさを晴らすため照準をWUBSに合わせて日本に乗り込み、みごと結果を出したのだ。チャイニーズ・タイペイから飛んできた応援団が日本在住の応援団と一体となって「加油!加油!(頑張れ!頑張れ!)」と大声援を送る中、みごとな快進撃でその期待に応えてみせた姿はあっぱれというべきものだった。

彼らにとってWUBSが一つの大きな目標となったのは間違いない。そしてWUBSは、彼らが必要とする世界標準の競技レベルを提供していた。NCCUの王座獲得とともに、この事実も高く評価されるべきだろう。

大きな刺激を受けた日本勢の健闘が意味するもの

日本勢は、白鷗大がペルバナス・インスティテュートに大勝した後、前回王者のアテネオ・デ・マニラ大とのフィジカルな戦いに勝利して決勝に進出。最後は激闘一歩及ばず準優勝という結果となったが、NCCUに最後まで食らいついた戦いぶりに会場は大いに沸いた。また東海大は、初戦でこちらもNCCUとの緊迫した戦いに敗れたが、順位決定戦ではペルバナス・インスティテュートと、日本にとって東アジアのライバルである韓国の強豪として知られる高麗大に対し、持ち前のディフェンス力をいかんなく発揮して勝利。最終的に5位に食い込んだ。


決勝戦でゴールを狙う白鷗大の佐藤涼成。NCCUの鉄壁のディフェンスを攻略して後半の追い上げた白鷗大の戦いぶりは大いに会場を盛り上げた(写真/©月刊バスケットボール)

両チームとも21敗で、喫した黒星は優勝チームに対する接戦。戦いぶり自体も熱量十分で、日本を代表している気概を感じさせた。彼らの奮闘は、日本の大学バスケファンが誇りに思えるものだったに違いない。

両チームの監督や選手は、今大会で海外のチーム相手にどれだけ通用するのか、旺盛な意欲を持って臨んでいた。結果として貴重な国際経験を得ただけでなく、準優勝と5位で大会を終えたことで、世界を視野に入れた意欲を膨らませたのではないだろうか。


こちらは5位決定戦で、ペルバナス・インスティテュートのグレーンズ・タンクランに対し厳しいディフェンスで対抗する東海大のハーパージャン ローレンスジュニア(写真/©月刊バスケットボール)

しかし、次回大会に出たいと思っても、この舞台に戻ってくるためにはまず、今年のインカレで2位以内に勝ち上がって出場権を得なければならない。他大学もWUBSを見て、「次は俺たちが」という意欲を燃やしてくる中、この競争は非常に熾烈なものとなる。インカレはこれまでも毎年、熱戦の歴史を重ねてきたが、WUBSへの出場権をかけた戦いがさらにその緊迫感を高め、競技力向上を強力に後押しする起爆剤になることも期待できそうだ。

柴田 健/月刊バスケットボールWEB

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