月刊バスケットボール6月号

日本代表・川真田紘也、秘密兵器から屋台骨へ「気持ちで負けないのが信念」

唯一無二のハッスルを見せる“マイキー”


「FIBAワールドカップ2023」を控え、日本代表はフランスとの強化試合に挑んだ。FIBAランキング5位の強豪は、216cmのルディ・ゴベアを大黒柱に、ヴィンセント・ポイエー(213cm)、ムスタファ・ファル(218cm)と3人の7フッターをそろえ、ガードやウィングも軒並み2m前後。エリー・オコボ(191cm)、シルヴァン・フランシスコ(179cm)、ヤクバ・ワタラ (192cm)の3人を除くと全員が196cm以上のサイズを誇っていた。

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当然、リバウンドやインサイドの攻防で日本は不利に立たされ、最終的には70-88で敗れたが、川真田紘也の奮闘はビッグサイズのチームと戦う上で一つ光が見えた部分でもあった。

204cm、110kgと日本代表の中では大柄な川真田は、運動量とフィジカルを武器にリバウンドやディフェンス、ルーズボールなどの泥臭い部分で真価を発揮するビッグマン。

3Pなどのオフェンスの武器は少ないが、これまでの強化試合でも彼のハッスルプレーがチームに与えた影響は大きかった。その活躍はエース渡邊雄太も認めるところで、ニュージーランドとの第1戦後には「間違いなく今日のMVP」と川真田の写真を自身のSNSに投稿。

韓国との対戦でもワンマン速攻から豪快なワンハンドダンクをねじ込むなど、彼のプレーにはチームの士気を高める要素が詰め込まれている。

フランス戦ではゴベアに頭上からダンクをたたき込まれるなど、世界の洗練も浴びたが「フランスのような相手との対戦はなかなかできない経験。自分のプレースタイル的にもこういう経験をすることでどんどんレベルアップできると思います。次はこういう強い相手とどれだけやり合えるかが大事」と、川真田。本戦に向けてさらなるレベルアップを図る。


ゴベア(左)を体を張ってガードした

渡邊が足首の捻挫、ジョシュ・ホーキンソンもまだ万全ではない日本のインサイドにおいて、川真田に託されるロールはこれまでになく大きい。アンゴラ戦後のコートインタビューでトム・ホーバスHCは川真田について以下のように言及していた。

「もし半年前に川真田が25分出場して良い仕事をやったらびっくりしていたと思います。でも、彼は一生懸命頑張って本当にうまくなった。今は彼が出るときには僕は全然自信があります。Bリーグでももっとプレータイムを与えてほしい」

この試合では現役NBA選手のブルーノ・フェルナンド(208cm)を持ち前のフィジカルで抑え込み、トラベリングを誘発させるハイライトプレーを残している。これまでの日本人ビッグマンにはなかなかいなかったそうしたハッスルができる点は、川真田が日本代表の練習生という立場から本戦の12人に選ばれるまでに至った最大の理由であり、彼の最大の長所でもある。

川真田は相手ビッグマンとのマッチアップについてこう振り返る。「相手は技術的にも身体的にも全てが自分より上でした。僕の身長が急に伸びるわけでも、技術が上がるわけでもないので、気持ちの部分で負けないというのが一つの信念です。そこで負けたら本当に全て負けなので、気持ちを全面に出してプレーできたことは良かったです」



この試合のスタッツは0得点、4リバウンド、1ブロック、アンゴラ戦も7リバウンド、1ブロックを残したが、得点はわずか4。決して目に留まるようなスタッツではない。ただ、数字に残らない部分のインパクトという面で、彼の右に出る選手はいないのだ。

ドイツとのワールドカップ初戦ではモリッツ・バグナーやヨハネス・ボイトマン(共に211cm)、ダニエル・タイス(204cm)といったビッグマンの相手をすることになるだろう。いずれもストレッチビッグであり、インサイドだけでなく、ある程度はアウトサイドまでカバーしなければならない相手だ。

彼らに対して川真田がどれだけフィジカルに、かつ足を使ってガードできるかは一つのポイントとなりそうだ。渡邊は川真田のことを「秘密兵器」と表現していたが、その存在は今や秘密兵器という枠にはとどまらないほど大きくなっている。

秘密兵器から屋台骨へ──彼の成長が日本代表を後押しする。


★男子日本代表今後の予定

「男子日本代表国際強化試合2023東京大会」
会場 : 有明アリーナ(〒135-0063 東京都江東区有明1丁目11-1)
(1)8月15日(火)vs.アンゴラ代表(41位) 75-65
(2)8月17日(木)vs.フランス代表(5位) 70-88
(3)8月19日(土)vs.スロベニア代表(7位)15:00ティップオフ
※カッコ内はFIBAランキング(2023年2月27日現在)

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取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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