月刊バスケットボール12月号

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2023.08.14

【第2回WUBS】Day 3レポート - 国立政治大が初優勝、白鷗大も決勝戦で終盤まで粘りの大健闘

WUBSSun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)は、813日に最終日となるDay34試合が行われた。白鷗大(日本)と国立政治大(チャイニーズ・タイペイ)の対戦となった決勝戦は、白鷗大が前半の21点差のビハインドから第4Qに一時5点差まで詰めよるエキサイティングな展開の末、国立政治大が勝利。昨年の第1回大会で3位にとどまった悔しさを晴らし堂々王座に就いた。


Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト

Day 31試合(GAME9)]
高麗大 8426 18 26 14
シドニー大 6920 15 12 22
☆トップパフォーマー
高麗大: キム ドエン(20得点、フィールドゴール成功率72.7%[11本中7本成功、うち3Pショットは4本中2本成功]、8リバウンド、4アシスト、1スティール、1ブロック)
シドニー大: ロバート・ムーア(16得点、4リバウンド、1アシスト、1スティール)


最終日の高麗大は自分たちらしさをコートで表現して初勝利を挙げた(写真/©WUBS)

ここまで白星なしのチーム同士の7位決定戦は、特に前半はどちらも1勝を持ち帰りたいという思いのぶつかり合う激戦。同時に両チームはスタイルとしてもハイスコアリングな展開を指向する点が共通しており、エキサイティングな点の取り合いが展開された。結果としては、序盤に高確率の3Pショットと執拗なリバウンドで先行した高麗大が勝利。7位の座を確保している。

高麗大はガードのキム テフンが前半だけで3Pショット3本を含む10得点(最終的に12得点)を挙げチームをけん引。シドニー大も2桁点差に引き離された前半終了間際にマシュー・ウェイチャーのプットバックで9点差に踏みとどまるなど粘り強く対抗した。しかし後半のシドニー大は、高麗大の体を張ったリバウンドとセカンドチャンス・ポイントに押されて苦戦。逆に勢いに乗り始めた高麗大のオフェンスはインサイドもアウトサイドも機能し、点差を徐々に開いていった。

最終的に15点差をつけて勝利した高麗大のジョー ヒジョンHCは、「昨日までの2試合で出せなかったことをやろうと話して臨みましたが、それができました。ディフェンスは70点以上の出来。リバウンドも下級生たちも含め頑張ってくれました」と笑顔で話した。

シドニー大は1勝が遠かったが、トム・ガーレップHCは「こうしたプロフェッショナルな国際大会に出られたことは大きな経験」と話し、来日して強敵にチャレンジした遠征体験の価値をかみしめていた。

Day 32試合(GAME10)]
東海大 10023 25 28 24
ペルバナス・インスティテュート 4811 18 06 13
☆トップパフォーマー
東海大: 鈴木暉將(24得点、フィールドゴール成功率83.3%[12本中10本成功]、4リバウンド、3アシスト、4スティール)
ペルバナス: サラメナ・ダニエル(17得点、フィールドゴール成功率66.7%[9本中6本成功、うち3Pショットは5本中3本成功]、2リバウンド、1アシスト)


豪快なダンクを2発叩き込んだ東海大の中川知定真(写真/©WUBS)

西田公陽のフィールドゴールで東海大が先制して始まったこの一戦は、序盤から東海大ディフェンスの出足の鋭さが際立つ展開となった。ペルバナス・インスティテュートは当たりの強い東海大ガード陣が待ち構えるフロントコートまでボールを運ぶのが遅れ気味。ベンチから厳しい表情のコーチ陣が大声で指示を出し続けるが、状況を打開することができず時間が過ぎていく。

ただ、ペルバナス・インスティテュートもディフェンス面では、第1Q半ばまでは東海大オフェンスの勢いを削いでいた。オフェンスでも、ボールを運びきってフロントラインに渡したときにはチャンスを見出し、苦しみながらも点差を縮める流れがあった。また、ペイントまで持ち込み攻め切った場面の多くでファウルを得、フリースローで粘るとことができた。

それでも、ディフェンス面でのプレッシャーを落とさず戦い続ける東海大の統制の取れたプレーが、ペルバナス・インスティテュートの良さであるスピーディーな展開を許さない。第2Q残り5分過ぎに速攻で中川知定真がダンクを決めた時点で32-18と東海大のリードは14点に拡大。第3Q半ばに再び中川のダンクが飛び出したところで68-33となり、以降も形勢が変わることなく、第4Q終盤に鈴木暉將のダンクで100得点に乗せた東海大が今大会2勝目をつかんだ。

東海大は初戦で国立政治大に黒星を喫したが、その国立政治大は最終的に今大会の優勝チーム。大会期間を通じての戦いぶりとしては、決して悪い内容ではなかった。陸川 章監督は試合後、結果として持ち味のディフェンスを武器に2勝を手に出することができたWUBSの総評として「初戦で負けたことで自分たちのやるべきことが確認できました」と語り、秋のリーグ戦、さらにはインカレに向けてのチーム作りにも非常によい手応えを感じている様子だった。

一方、ペルバナス・インスティテュートのズルファリザルAコーチは、「この試合はさまざまな教訓を得る機会でした」と試合を振り返る。「東海大は試合前の準備から緊迫感があり、ディフェンスの厳しさも非常に強力でよい学びになりました。それに、今大会では、インドネシア勢としてWUBSでの初勝利も手にすることができたし、収穫の多い遠征です」。そう話すズルファリザルAコーチの表情は、敗戦後にも決して暗くはなかった。

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Day 33試合(GAME11)]
ラドフォード大 7726 19 19 13
アテネオ・デ・マニラ大 6816 15 20 17
☆トップパフォーマー
ラドフォード大: ケニオン・ジャイルズ(14得点、フィールドゴール成功率50.0%[12本中6本成功]、7リバウンド、4アシスト、1スティール)
アテネオ・デ・マニラ大: メイソン・アモス(22得点、フィールドゴール成功率66.7%[12本中8本成功、うち3Pショットは7本中4本成功]、3リバウンド、1アシスト、1スティール、1ブロック)


ラドフォード大のガード、ケニオン・ジャイルズはアクロバティックな動きからの得点でたびたび会場を沸かせた(写真/©WUBS)

優勝候補と目されたラドフォード大とディフェンディング・チャンピオンのアテネオ・デ・マニラ大の対戦は、決勝戦だったとしてもおかしくない組み合わせ。試合の内容としても、両チームのアグレッシブさやスピード、国内の大会ではなかなか見られない異質の高さやフィジカリティーを感じさせる見応え満点の一戦となった。

試合の流れとしては、先を走るラドフォード大をアテネオ・デ・マニラ大が諦めず追いかけ続けるような展開。第1Qはラドフォード大が、ガードのチャンドラー・ターナーの3Pショットやビッグマンのジョシュア・ハリスの2連続ダンクなどで26-162桁リードを積み上げる。ただしこの間、アテネオ・デ・マニラ大も得点源のカイ・バルンガイが3Pショットを2本決めるなど、ラドフォード大の強度に引かずに真っ向勝負を挑んだ。

しかし、この試合ではラドフォード大が攻守に一段上のアグレッシブさを発揮して、主導権をなかなか譲らなかった。ラドフォード大は前日の国立政治大戦で、相手の変幻自在なマッチアップゾーンに攻めあぐんだが、この日は第2Qにアテネオ・デ・マニラ大がゾーンを敷いてきても、ギャップを突くドライブやオフボールで動くカッターとの連係が冴え、落ち着いて攻略していった。その結果前半を終えてラドフォード大のリードは45-3114点差に拡大していた。

しかし53-33と突き放された第3Q残り455秒、アテネオ・デ・マニラ大のタブ・ボールドウィンHCはタイムアウトを取り、「こんな姿を見たくはないぞ。これが最後の試合、最後のポゼッションと思ってプレーしようじゃないか!」とチームを鼓舞した。その後、ストレッチ・ビッグのメイソン・アモスの得点を軸に第4Q終盤に6点差まで詰めた時間帯はアテネオ・デ・マニラ大の流れ。前回王者の誇りも十分感じさせる戦いぶりだった。

勝利したラドフォード大のダリル・ニコルズHCは、2勝を挙げて3位に食い込んだWUBS参戦について、「非常に意義深いです。様々なスタイルのバスケットボールに対峙することもでき、多くを学ぶ機会となりました」と総括。将来また日本に来たいかと尋ねると「住みたいぐらいです。日本は素晴らしいですね!」と明るい笑顔を見せていた。

この試合では、故障離脱で今大会出場を逃した山﨑一渉がユニフォーム姿で登場したこともファンを喜ばせた(写真/©WUBS)

Day 3
4試合(GAME12
国立政治大 9030 24 13 23
白鷗大 8413 20 26 25
☆トップパフォーマー
国立政治大: モハメド・ラミン・バイェ(30得点、フィールドゴール成功率76.5%17本中13本成功]、13リバウンド、1アシスト、2ブロック)
白鷗大: 佐藤涼成(24得点、フィールドゴール成功率53.3%15本中8本成功]、10リバウンド、4アシスト、3スティール)


大会MVPに選出されたモハメド・ラミン・バイェはこの試合で30得点を挙げた(写真/©WUBS)

今大会で東海大、ラドフォード大を非常に効果的なゾーンディフェンスで打ち破ってきた国立政治大は、白鷗大との決勝戦でも同様の戦い方で序盤から主導権を奪った。国立政治大はディフェンスだけではなく、ユー アイチェ、モハメド・ラミン・バイェら前夜のヒーローたちがオフェンスでも躍動。特にビッグマンのバイェは、3Pショットあり強烈なダンクあり、往年のアキーム・オラジュワンの“ドリームシェイク”をほうふつとさせるターンアラウンド・ジャンパーありとスキルの高さを見せつけ、前半だけで得点を21まで伸ばす。

ゾーンディフェンスを攻めあぐむ白鷗大は、ギャップに攻め込もうとしてトラベリングを犯したり、パスをインターセプトされカウンター・ブレイクでイージーバスケットを許す厳しい展開。前半だけで10得点を挙げた脇 真大を中心に懸命に追い上げるも、最初の20分間で国立政治大に54-3321点差の先行を許してしまった。

しかし後半、ファウルもかさんできたバイェを中央に配する国立政治大のゾーンに対し、そのバイェの目の前にボールを入れて攻めるパターンから放つミドルジャンパーが決まりだす。この流れでチームの雰囲気も良くなりディフェンス面の奮闘も相手のターンオーバーやミスショットなどの形で結果として出てくるようになった。勢いづいた白鷗大は怒涛の反撃を開始。第3Q終了時点で59-67と点差を一桁に戻す。


佐藤涼成は白鷗大の粘りの反撃を演出した一人。決勝戦は24得点の大活躍だった(写真/©WUBS)

4Qには、大活躍していたバイェが5つ目のファウルを犯して残り時間8分以上の時点で退場に。流れは白鷗大に傾きかけていた。しかし、ユー アイチェとソン シンホウが、残りの時間帯に前夜に続いてタフショットを次々沈める殊勲の活躍でチームをけん引。白鷗大に逆転を許すことなく試合終了を迎えた。

国立政治大のチェン ツーウェイHCは、「苦しい時に主力がファウルアウトしても、我慢強く戦えました」と忍耐の末に手にしたWUBS優勝という結果に胸を張る。「日ごろからこのようなときに助け合って乗りきることを目指して練習しているので、そうできてよかったです」

一方、白鷗大の網野友雄監督は、「相手のディフェンスにも準備はしてきたのですが、慌ててしまったメンタル面の未熟さもあったかもしれません。前半バイェに気持ちよく3Pショットを決められ、乗せてしまったのも痛かったです」と敗因を分析。しかし、「インカレの決勝でもなければこれだけの熱気に中でプレーすることはできないと思います。その状況をこの段階で経験できたこともありがたかったです」とも話し、WUBS参戦でチームが一歩前進できたことを感じていたようだ。

WUBS 2023最終順位
優 勝 国立政治大(チャイニーズ・タイペイ) 3
準優勝 白鷗大(日本) 21
3位 ラドフォード大(アメリカ) 21
4位 アテネオ・デ・マニラ大(フィリピン) 12
5位 東海大(日本) 21
6位 ペルバナス・インスティテュート(インドネシア) 12
7位 高麗大(韓国) 12
8位 シドニー大(オーストラリア) 3
※アテネオ・デ・マニラ大の成績には2023年度日本学生選抜に対する勝利を含まない

MVPコメント
モハメド・ラミン・バイェ(国立政治大)



「昨年達成できなかった優勝を成し遂げられ、しかもMVPに選ばれてとてもうれしいです。将来はアメリカでNBAにも挑戦したいですし、良い条件が見つかればBリーグをはじめとした海外のリーグでプロになりたいと思っています」

Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト



取材・文=柴田 健/月刊バスケットボールWEB

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