月刊バスケットボール8月号

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2023.08.09

【第2回WUBS】山﨑一渉、出場かなわずも「ここで折れてはいられない」 - ラドフォード大WUBS直前練習レポート

810日(木)から国立競技場代々木第2体育館を舞台に開催されるWUBSSun Chlorella presents World University Basketball Series=ワールド・ユニバーシティー・バスケットボール・シリーズ)に、アメリカから出場するラドフォード大が大会前の調整に励んでいる。8日には都内で来日2度目の練習。チームのスタイルであるトランジションの速い展開と3Pシューティング、ディフェンスの連係など、感触を確かめながら約1時間汗を流した。



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Sun Chlorella presents World University Basketball Series大会公式サイト
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見せてもらった練習内容はオフェンス、ディフェンスとも非常に緊迫感が高く、またよく声を出しコミュニケーションをとりながらの活気に満ちたドリルだった。ハーフコートでドリブルドライブからのキックアウトを受けての3Pシューティング、同じくハーフコートでポストアップしたビッグマンとペリメーターの連係からゴール下のフィニッシュと3Pショットを繰り返す継続的なドリルもあった。NCAAとは異なる24秒ショットクロックへの対応も考えてか、リバウンドから速攻に転じるトランジションの練習にも熱がこもる。44のディフェンス・ドリルではボールハンドラーをトラップに追い込む連係や、3Pショットを阻止するローテーションの確認を、コーチが何度もプレーを止めながら丁寧に行っていた。

ダリス・ニコルズHCによれば、来日後の時差への適応は順調とのこと。「我々コーチ陣も居心地がよくなってきていますけど、それ以上にプレーヤーのほうがうまく適応できているみたいです。朝食にも早く起きてくるし、日本時間に慣れてきていると思います。最初の試合をプレーする金曜日までにはもっと適応できているでしょう」と話している。

しかし、前述の24秒ショットクロックを含め、3Pラインの距離やクォーター制(NCAA男子はハーフ制)など、ラドフォード大にとってはなじみのないルールがWUBSでは多くなる。また、ゲームの違い以外にもラドフォード大には難しい課題がある。対戦相手のスカウティングだ。ニコルズHCは「現時点ではまだ、自分たちのチーム構築に時間がかかっている上、フィルムを手に入れるのも簡単ではありません」と明かす。高麗大(韓国)との初戦(11日[金]Game2=13:30ティップオフ)は、コンディショニングも含め決して簡単な試合にはならないだろう。

ただ、来日自体を含め今大会はさまざまな経験を積む機会。ニコルズHCは「ウチの連中は24秒ショットクロックがやりやすいと感じるかもしれません。よくないショットの言い訳もできてしまうかもしれないですしね、時間がどんどん過ぎていくので(笑) しっかり適応しないと。アメリカ代表が毎度やっているのと同じですが、(こうした挑戦も)我々には楽しみでもあります」と明るい声でコメントしていた。

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山﨑を全面的に支援するラドフォード大

今大会での凱旋が期待された山﨑一渉の姿もコートサイドにある。725日の練習で前十字靭帯断裂、内側側副靭帯損傷、半月板損傷という大ケガを負い出場がかなわなくなったが、表情は決して暗くはない。「リングにアタックして踏み込んだときに膝が内側に入ってしまいました」という振り返りは聞くだけでも痛々しかったが、「(その瞬間にも)痛みはまったくなくて、ほんの一瞬。今もまったく痛くはありません。リハビリも順調にできています」と笑顔で語った。


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山﨑にとって、これだけの重度のケガは初めて。しかし、同じケガから復帰した友人の存在を励みに、またそういった人々からの励ましを受け、今は気持ちを整理しているようだ。中でも同年代で以前から仲が良いという岩下准平(筑波大2年)の姿勢に感化されているという。岩下は山﨑が仙台大明成をウインターカップで王座に導いた年に前十字靭帯断裂を経験しながら、翌年の大会で優勝した福岡大附大濠のキャプテンを務めていたプレーヤーだ。二人はFIBA U19ワールドカップ2021でも、そろってアカツキジャパンのジャージを着た仲でもある。現在、岩下は不運にも2度目の前十字靭帯断裂と闘っている。

山﨑も負けてはいられない。今年6月には仙台大明成時代の恩師、佐藤久夫監督の訃報もあった。「ここで折れていたら先生に恩返しできないと思うし、前向きに諦めないでやっていこうという気持ちです」と話す言葉には力がこもっていた。

そんな山﨑に対し、ラドフォード大もチームメイトも全面的な支援体制を見せている。「チームメイトもコーチも、検査結果がでるまですごく声をかけて励ましてくれました。ここにくるにもたくさんの支えがあります。一番仲が良いKG(ケニオン・ジャイルズ、同級生のガード)は、自分がケガしてしまったときに涙を流してくれていたとコーチから聞きました」

山﨑はひざを痛めた後、手術を遅らせてWUBSにやってきている。ニコルズHCによれば、チームと同行して東京で食事や市街見学に繰り出すときにはやはり山﨑が頼もしい存在感を見せているそうだ。山﨑自身も、「海外のチームと自分の故郷でやれるというのはありがたい貴重な経験です。コートに出られなくても、得られるものがあると思うので、大事にしたいです」と高い意欲を維持して今大会に臨む。

ニコルズHCは、自身も2度ヒザを痛めた経験があり、山﨑の気持ちや状況がよくわかるのだという。「一番大事なのは、彼がチームの一員だと感じられるようにすること。彼は治療、チームは練習となりますが、我々が練習で行うプレーコールを彼にも勉強するよう促したり、彼も一緒なんだとわかってもらうようにしています。今年はこれまでより自分を意識して、チームを心配せず個として強いプレーヤーに成長する好機だと思っています」と山﨑の意欲を後押しするコメントを聞かせてくれた。

ケガする前の山﨑のプレーに関しては「30分越えのプレータイムで活躍するほどの期待感を持っていた」と話す。それだけにチームとして山﨑の離脱は大きな痛手に違いない。ただし、アメリカに戻ってから手術し、そこから数ヵ月は休養と治療に専念となるものの、今シーズンをレッドシャツとして過ごした後は大学での競技参加資格が来シーズン以降3年間ある。ニコルズHCも山﨑自身も焦らず現実を冷静に捉えて復帰プランを描いているようだ。

この日の練習では、数名の記者以外にも見学に来ていた若者たちがいたが、ラドフォード大のコーチ陣とプレーヤーたちはその全員に対して握手しながら挨拶を交わしてくれた。山﨑の悲運に涙したというKGは、オンライン会見でも明るく接してくれていたが、初めて直接あいさつできる機会だったこの日は輝くような笑顔をはじけさせて力強く手を握り返し、喜びを表現してくれた。率直に、彼らがこの日本ツアーとWUBSのコートに立つことを喜び、栄誉と感じていることが伝わってくる。そんなラドフォード大の面々だけに、山﨑の思いも心にとめて熱いプレーを見せてくれそうだ。

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取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

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