月刊バスケットボール7月号

NBA

2023.08.01

【独占インタビュー】NBAの名シューティングコーチ“lethal shooter”に聞く、偉大な選手になるためのメソッド「昨日何をしたのかではなく、今日何をするか」

数多くのNBA選手をクライアントに持ち、特にシューティングの面で彼らをコーチングする“lethal shooter”ことクリス・マシューズコーチ。同氏のインスタグラムは約252万人ものフォロワーを有し、世界で最も有名なシューティングコーチの一人と言っても過言ではない。今年6月、そんなマシューズコーチがBリーグ・アルバルク東京のAIバスケロボット「CUE6」とのシューティング対決のため来日。そのイベントの間に偉大な選手、シューターになるためのメソッドを独占インタビューで語ってくれた。

「選手とトレーニングするときは、彼らがきついと感じることを要求するよう心掛けています」


──マシューズコーチはワシントン州大でプレーした経験があります。まずは現在に至るまでの経緯を簡単に説明していただけますか?


そうですね。ワシントン州大時代にトニー・ベネットHCの下でプレーしたことで、私のプレーはできあがりました。私たちは(NCAAトーナメントで)スウィート16まで進んで、(その後)私はアトランティック10カンファレンスのセントボナベンチャー大に転校したんです。それで精神的にも強くなりました。プロには入ったもののケガが続いてしまって、それでトレーナーになるべきだなと思うようになったんですよ。


トレーナーになってみると、周りからジャンプシュートをほめられることに気づきました。それでシューティングのコンテンツをいろいろとやり始めて、今では“lethal shooter”というわけです。


世界中の人々が私のことをシュート力と指導力で知ってくれているというのは、いつもこういうインタビューで話すことですが、夢のようなことです。私にできたんですから、ほかの人もできるかもしれませんよ。私はNBAには入れなかったけど、今でもNBAのアンバサダーです。NBAには入れなかったけど、ジョーダンブランドのシューズを履けていて、レッドブルとも契約しているんですから、すごいことですよね。

これはとてもうまくいった例だと思うんですけど、人生というものは必ずしも自分の目指す一番高い目標に到達できるとは限らないですが、一貫してやり続けていれば同じ世界で存在感を示すことができるんです。

──ナゲッツで優勝したケンテイビアス・コールドウェル=ポープ(KCP)や、女子バスケ界のスター、キャメロン・ブリンク(スタンフォード大)など、これまで多くのトッププレーヤーを指導されてきましたが、指導する上で最も大切にしているのはどんなことですか?


トップの選手とトレーニングするときに意識しているのは、彼らに自分がトップレベルであることを理解してもらうことです。もし、その選手がすばらしい人生を望んでいるのであれば、日々自身のゲームをもっと高いレベルに引き上げたいと思えることが必要です。満足などしていられません。だから選手とトレーニングするときは、彼らがきついと感じることを要求するよう心掛けて、結果的に偉大な存在になれるように頑張っています。


昨日何をしたのかではなく、今日何をするか。彼らにそのことを浸透させようと心がけています。彼らはすでにすばらしい選手たちなのですからね。誤解してはいけないのは、シューティングコーチといえども選手たちにはしっかりとした精神を植え付る必要があるということです。ご存じのとおり、人は大金を得たら大きな家を手に入れ、高級車を乗り回して心地よく暮らそうとするものですから。それはだめだよというのが私の仕事。毎日、そういう“マンバメンタリティ”を持たないといけません。




──トップ選手を指導する中で、彼らがそうある理由は何だと感じていますか?


トッププレーヤーたるゆえんは彼らのマインドセットだと思います。コービー(ブライアント)がコービーたるゆえんは彼のマンバメンタリティです。(マイケル)ジョーダンがジョーダンたるゆえんは彼のメンタリティです。もし、あなたが偉大な存在になりたいのであれば、それに伴うメンタリティが必要なんです。最も重要なことは、獲得したリングの数や試合に勝った数、どれだけすばらしいことをしたのかなど関係ないということです。


よりすごい存在を目指し続けるということで、すごい存在になりたいと思えば、そういうプレッシャーを自分にかけられるはずです。1試合だけでは、それは必ずしも証明されません。数えきれないほどの戦いを通じて証明するものです。


あまり知られていないことですが、KCPは「コーチと一緒にトレーニングをしてきた5年間で2回優勝した。残りの3年間は優勝できなかったけど、偉大になるために学んでいたよ」と言っています。彼には向上心がありました。(この例を見ても)偉大になりたいのなら、それはしっかりしたメンタリティを持つことから始まるものなんです。

──逆に言うとメンタル面がしっかりとしている選手は、偉大な選手になれると感じますか?


そうですね。それがすごく重要です。神がなさるたった一つのことは我々全員に才能を与えてくれること。自らのその才能を育て、水をやらなければ偉大になることはありません。才能は与えてはもらえますが、自分の才能に一貫性を持つことを学ぶ人は一握りで、それはその人のメンタリティからくるもの。


世界中にはすばらしいシューターがたくさんいますが、ステフィン・カリーやクレイ・トンプソン(共にウォリアーズ)、レイ・アレン(元セルティックスほか)のようなシューターは多くありません。なぜなら彼らはそれだけの努力をしたし、ほかとは異なるメンタリティを持っているから。


私は大学時代にカンファレンスで最も多くの3Pシュートを決めましたし、その数は全米でも5位にランクしました。でも、人々は私がシュートを打っているのは見ていても、私のカレッジ時代を知りません。彼らは私がそれを達成するために費やした練習を見ていないですから。偉大になりたいのであれば日々シューティングをするだけでなく、毎回正確にシューティングをするメンタリティが重要になってきます。

──技術的な面ではシューティングで最も重視するのはどんなところですか?


シューティングで最も大事なのはフットワークだと考えています。フットボールでも、ボクシングでも、バスケットボールでも、ゴルフでもフットワークが崩れると姿勢が悪くなってしまいます。だから私が選手とトレーニングを始めるときはフットワークがしっかりとできていなければシューティングはできません。フットワークをマスターしたらシューティングに移り、手の位置、考え方という順です。


そこまできたら毎日シュートフォームを作っていきます。フォームシューティングはボールを理解させ、脳がマッスルメモリーを理解するのを助け、毎日同じことをすることを脳に理解させることができます。フットワークとフォームシューティングをマスターしたら、ジャンプショットです。

──まずはフットワークが大事というお話ですが、シューターにとってフォームはどれくらい重要だと考えていますか?


シューティングリリースはとても重要です。間違ったリリースでは多くのシュートをミスしてしまいますから。でも、それら全てをマスターするには何年も繰り返し努力する必要があります。自分の体に自分のリズムを身につけさせるのはあなた自身。シュートフォームが正しくないとミスをする。だからこそ、正しいフォームをマスターするためにフォームシューティングがあります。そして、フットワークをマスターするためにはそれをゆっくりとこなすことが大切になってきます。優れたシューターになりたいのであれば、急がずにゆっくりとそれらのスキルをマスターしていってください。そして、だんだんとできるようになってきたらそのスピードを速く、速く、速くしていってください。


それが良いフットワーク、良いシュートフォームを持つということです。そして、それを毎回できるような強固なフォームを持つことができれば、優れたシューターになることができるんです。そうすればシュートも決まってきますよ。



取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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